ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
一閃。
腕を、ただ薙ぐ。
『ゲガァッ!?』
ただ、それだけで既に解析の終了しているカエル型のモンスターはあっさりと事切れる。
「やっぱり二人だと一人の時に比べてサクサク進めますね!『フロッグ・シューター』が3体現れた時には死ぬかと思ったけど、この格好でもなんとか倒せましたし!」
「ほら、防具無しでも問題ねェだろ?」
「それはないです」
いま、オレ達はダンジョンに潜っている。
酒場から直接来たから防具はねェし、武器もクラネルの護身用短剣1本だけ。
ポーション等の回復薬の持ち合わせもねェ。
クラネル曰く、こんな格好で潜るなんて自殺行為とのこと。
だが、オレにとっては武器や防具なんてあってもなくても変わんねェ。
理解できねェもので溢れかえっていやがるこの世界でも、
【一方通行《アクセラレータ》】が不完全とはいえ効力を持つ以上、
それが理解しているものであるならば、一度理解しちまえば、核兵器でもオレは傷ひとつ負わねェし、大概のものは触れるだけで壊せるからなァ。
そんなことを考えていると
───ビキリ、と音がした。
「それにしても……いま何階層でしたっけ?」
「あ?何階層ってそりゃァ……」
───ビキリ、ビキリ。
と、音は大きくなり。そして、
「…6階層だろ」
───バキン!!
と、壁の
モンスターはダンジョンに産み出される。
生み出されたのは160cmほどの『影』。
「っ……!『ウォーシャドウ』!!それも、5体も!?」
「ハッ。5対2かよ、随分と不利な状況かも知れねェな。ただし、オレがいなかったらだがなァ!」
「一方通行さん!?ああもう!半分は僕がやりますからねっ!!」
───────
『ウォーシャドウ』は確か6階層から出現するモンスターで、
戦闘能力は6階層でも随一だったかァ?
速度と威力、そして長い腕によるリーチを活かしてナイフ状の指で攻撃する……雑魚だな。
音速にも満たない黒手の斬撃しか攻撃方法を持たねェんじゃ、向きの防壁は越えらンねェはずだ。
が、
「チッ!全く、その影も
影の黒刃は防壁膜を歪ませて、オレの皮膚を掠めた。
また《未知》だ。
世界の法則から違ンだ。
謎の物質で構成された生物が居てもおかしくねェってかァ?
この迷宮中に存在している生物、モンスターは数瞬あれば解析できる程度であったとはいえ全て、未知だ。
それどころか、床も壁も天井も、全てが未知の塊。
全く巫山戯てやがる。
だが……それでこそだ。
それでこそ、理解のしがいがあるってもんだァ!
「くきき、くか、くかかかッ!!」
ベクトル操作の力をフルで使用し、大地を蹴る。
反射が出来てた時程に加速できるわけじゃねェが、もともとの身体能力がステータスで圧倒的に強化された今の俺なら、それでも十分な速度が出る。
影の一撃が振り下ろされるよりも早く、敵の頭部をぶん殴り、解析する。
この世界の法則に比べりゃァ随分少ねェ情報量だ。
『……』
解析中の一瞬の停止を狙って、3方向から鋭い三指が迫る。
だが、それは、
「一歩遅かったなァ雑魚ども。残念ながら解析完了ってなァ!!」
オレには届かねェ。
オレへと叩きつけられようとしていたエネルギーは逸れ、地面に突き刺さる。
そして、刃の代わりに腕がウォーシャドウの胴体を貫いた。
本来なら、こんな一撃で倒せるほど弱くはねェンだろォが、
物質の抵抗力だってベクトルなンでなァ。
逸らすだけの今でも、魔石をくり抜くのは余裕ってなァ‼︎
魔石を抜かれた二体は、まとめて地に伏せた。
『『───!!』』
「喋れねェと断末魔も出せませンってかァ?つまンねェなァ!!」
『!!』
その間に地面から指を引っこ抜いた最後の一体が、後方へ飛びながら長腕の一撃を放つ。
「オイオイ、また斬りかかってくるなんて学習能力0かァ!?」
当然、攻撃は逸れ、次は天井に刺さった。
こうなっちまえばもう決まりだなァ。
ハイ、御終いっと。どうやら向こうも終わったみてぇだし、帰るとするか。
と、足を浮かせたところで、
───ビキリ
「ハハッ!マジかよ!オイ、クラネル寝てる場合じゃねぇぞ。連戦だ」
「わかってる……やってやる」
クラネルは短剣とドロップアイテム、『ウォーシャドウの指刃』を構える。
オレも自然と前傾に、突撃する構えを取る。
大量の雑魚相手は学園都市じゃァそればかりやってたオレの得意分野みてェなもンだからな。
直ぐに終わらせてやろうじゃねェか。
その直後、オレ達と迫り来るモンスター共は激突した。