ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
クラネルは何故か耳まで真っ赤にしてテーブルに突っ伏しちまったが、コイツも目はしっかりと【ロキ・ファミリア】の方を見てやがる。
なンで顔を赤くしてンのかは……まァ軽く予想はつくが、とにかくコイツも都市最強の冒険者共とやらに興味津々なンだろう。
「おい、店員。アイツ等は……」
「ああ、【ロキ・ファミリア】さんはうちのお得意さんなんです。彼等の主神であるロキ様に、私達のお店がいたく気に入られてしまって」
なんだ、コイツも気づいてやがったのか。
わざわざクラネルに聞こえるように耳元に口を持ってきている。
「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「あの話……?」
あの、狼と人の混ぜものみたいなやつの言葉に反応し、
クラネルがぴくりと動いた。
そして、その次に放たれた狼人の言葉の後───
「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」
───クラネルの顔色が変わった。
耳まで赤くなっていた顔は、打って変わって白を通り過ぎて青くなる。
「ミノタウロスって、17層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出していった?」
「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」
つまり、迷宮の下の方に行ってた【ロキ・ファミリア】がその帰りに
そして、その場に───
「いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ
───コイツが、クラネルがいた。
っつゥことかァ?
あくまでも推測に過ぎねェが、その冒険者がクラネルなら、
さっきからの顔色の急変にも理由がつく。
まァ、どうであれ、コイツの色恋沙汰なんてオレには関係ねェな。
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」
ガタン!!
と、目の前の椅子が蹴飛ばされる。
そこではクラネルが立ち上がり、駆け出そうとしていやがった。
「ベルさん!?」
そしてクラネルは、外へ飛び出していこうとした。
だが───
「ちょっと待て、クラネル。まだ話は終わってねェ。」
いくらコイツが速さに特化しているつっても、
コイツもテーブルとテーブルの間の狭い空間を通らねェと外には出れねェ。
一方、オレはコイツの進路を塞ぐのに横から手を伸ばすだけでイイ。
そして体の一部でも掴んじまえば、もうクラネルがどう力を込めよォがそのエネルギーは逸れ、発散する。
さっきは関係ねェつったが、ここで逃げられると食事代が払えねェからな。
「……一方通行さん。行かせてください。僕はっ、強くならないとっ!」
「イイぜ。だが、まずここの代金を払ってけ。食い逃げになンぞ」
「え、いいんですか?こういうのって止めるものなんじゃ……」
「どういう基準でテメェがそう言ってンのかは知らねェが……オレにとって、止める必要がねェからな。それに、オレだって恩恵の効果を試してみてェし」
「ということは……一方通行さんも来るんですか?」
「行くに決まってンだろ。さァ、雑魚をツブして経験値稼ぎと行こォじゃねェか」