ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
ブラブラと散策をしてみたが…ここでひとつ重大な問題が出てきやがった。
「…この街、広すぎねェか?」
まァ、簡単に言やァ迷ったわけだなァ。
もともと目的地はねェンだから、迷ったって言い方は変かもしれねェが、
豊饒のなんたらっていう酒場の見当がつかねェ訳だし、迷ったでイインじゃねェかな。
まァ、適当に人を捕まえて道を聞きゃァいいだろ。
そこの屋台で売り子をやってるガキにでも聞くか。金はねェけど。
「オイ、ガキ。ちょっと聞きてぇことがあるンだが…」
「へぇ~、ガキ?このボクに向かってガキ呼ばわりとは、君は一体何様なんだい?」
「あァ?ガキにガキっつゥのに何か資格が必要なンですかァ?」
「また言ったな?ボクはこれでも神なんだぜ?」
「はァ?神だァ?オマエみてェなクソガキがァ?ハッ、冗談も大概にしな」
オーバーに両手を上げ、やれやれと首を振る。
コイツを選んだのはハズレだったか。
まさか自分のことを神とかいうような奴だったなンてなァ。
まァ、ここ以外の屋台で聞けばイイだろ。
「フフフ…いいだろう。神に喧嘩を売ったことを後悔させてやる!喰らえ、神の拳!」
「がはァっ!」
コイツっ、正面からぶン殴ってきやがった!
能力の使えねェオレの身体能力なンざそこらの活発なガキにも劣る。
反射もできなけりゃ、衝撃を流すことも出来ねェ。
鳩尾にガキのパンチを食らっただけでも、意識が朦朧としてきやがる…
「嘘だろ?まさか、これ一発で沈むっていうのかい!?いくらなんでも貧弱すぎるじゃないか!?」
「ヘスティア?何でお客を殴って、しかも気絶させているんだい?」
「うわわわわっ!すいません店長!」
「うん、いいからその子を早く休める場所へ連れてってやんな。何があったかは打ち上げで聞かせてもらうからな。」
「は、はいぃぃっ!」
──────
目が覚めると、目の前にクソガキがいた。
「やぁ、目が覚めたかい、少年。悪かったね、まさか『恩恵』を授かっていないとは思わなかったんだ。」
また『恩恵』か。
この口ぶりからするに、この実験都市では『恩恵』は当たり前のように持っているもンなンだろうなァ。
そして『恩恵』の内容は通常の個々の能力に加え《身体強化》を強制的に発現させることってとこか。
あの時みてェに反射を無視して攻撃してくる奴がここに居ねェとは限らねェし、
今はまず反射がねェからな。
『恩恵』とやらを得とくべきだな。
まァ、それもベル・クラネルから説明を受けてからだな。
「悪ィと思ってんならちゃんと質問に答えろよ?」
「ああ、もちろん!なんでも聞いてくれよ。これでもここに住んでからは長いんだ。」
「今日の夜にメインストリートの『豊饒の女主人』ってところに行く約束をしたンだが、
どこにあるのかわからなくてなァ。」
「へぇ!奇遇じゃないか。実はボクの【ファミリア】の子も今晩そこへ行くらしいんだ。
そうだね、そろそろ帰ってくると思うから一緒に行ったらどうだい?
ホントはボクも行こうかと思ってたんだけど、高いらしいし、バイト先で打ち上げがあるからね。」
『ファミリア』?
眷属っつゥことだよなァ。
じゃァソイツはこのクソガキの神様ごっこのお相手って訳か。
大変だろうから優しく扱ってやるか。
「神様、帰ってきましたー!ただいまー!」
「おっ!ちょうど帰ってきたね。おかえり!|
なンだかどっかで聞いたことのある声じゃねェか。
しかも、
まさかとは思うが…。
「今日は結構収穫多いですよ!ドロップアイテムもいっぱい…って一方通行さん!?」
「なんだいなんだい、キミたちは知り合いだったのかい?」
「はい、今日ダンジョンで会って…」
やっぱりベル・クラネルだったかァ。まったく、なンて偶然だよ。
まァ、店を探してウロウロする必要がなくなっただけ良しとするかァ。
「アクセラ君、『恩恵』もなしにダンジョンに潜るなんてキミは無茶をするね。」
「ンな事言われても知らなかったんだからなァ。」
「そうか…そうだね。うん、よし。
なあ、アクセラ君。よかったら、
今からベル君の【ステイタス】を更新するんだけど、
入ってくれるなら一緒にキミに『
ハァ?このガキが『恩恵』を刻むのか?
っつゥことはこんなナリしていても、研究者ってことかァ?
まァ、どちらにしろ、ここで受けたって今より弱体化するなんてこたァねェだろ。
懸念すべきは、『ファミリア』っつゥのに、研究者の『派閥』とでも言うべきもンに入れられちまうことだが、
そんなのは能力さえ戻ってくりゃァどォにでもなるからな。
「イイぜ、オマエの【ファミリア】に入ってやるよ。クソガキ」
「ボクはクソガキじゃなくてヘスティアだよ。アクセラ君。
とにかく、ボクたちのファミリアへ、【ヘスティア・ファミリア】へようこそ!!一方通行!」