ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか   作:syun zan

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幻想《ファンタジー》

コイツは一体どうしちまったンだ?

声をかけてやってからというもの、ずっと放心しっぱなしじゃねェか。

ハァ、仕方ねェ。

”能力が使えねェ”今、安全地帯に行くにはそこまで行けるだけの力とそこまでの道のりの知識が必要だ。

この場所の先住者と思しきコイツは適任。

さっさと目を覚まさせるか。

「オイ、起きろ…あー、そこの…オマエ」

「あっ!ごめんなさい。えーっと」

一方通行(アクセラレータ)だ」

「あ、一方通行?さん。僕はベル・クラネルです。えっと、なんで、しょうか」

なンだコイツ。随分と腰の低い奴だなァ。まァイイ。まずはここから出ることだ。

「あァー。外に出てェンだが、そこまで案内してくれねェか?まァ、出来ればでイイけどよォ」

「ならいいですよ。僕もそろそろ帰ったほうがいいかなと思っていたんですよ。ちょっと待っててくださいね」

こりゃァ運がイイもンだ。犬頭7匹を屠ったコイツは少なくとも今のオレよりは強いからなァ。

それにしても不思議なもンだ。

コイツがどンな能力を持っているかはわからねェが…

少なくともレベル1の《身体強化》に相当する身体能力を持ち、

そのうえ”ナイフを突き立てただけで犬頭の死体を量子レベルまで分解”して、一部だけ取り出していやがる。

多重能力者(デュアルスキル)ってやつかァ?

存在しねェはずだが、統括理事会が秘匿してたンだったらありえる話かもしれねェ。

ベクトル操作ができればともかく、出来ねェ今の状態では勝ち目はねェな。

「それじゃァよろしく頼むぜ。ベル・クラネル」

「はい。任せてください。一方通行さん」

手を差し出してきた少年…ベル・クラネルに向け、なるべく友好的にと心がけて、笑顔で握手をする。

こンなことする柄じゃねェが、今は仕方がねェからな。

『ウオオオオオオオンッ!』

『ガアアッ!!』

「……連戦?」

うおっ。犬頭が3体に、緑のガキが2体襲いかかってきやがった。

まァ、さっきより数も少ないし、なンとかなるだろう。

「えっと、一方通行さん!手伝ってくれませんか!」

「ハァ?オレは今はレベル0だぜ?」

「え!?一方通行さん、もしかして『恩恵(ファルナ)』を受けてないんですか!?」

「『恩恵』?なンだそりゃ。」

「えーっと。地上に出たら説明します!受けてないんだったら早く下がって!」

『恩恵』とやらが何かは知らねェが、どちらにしろ、今オレにまともな戦闘力はねェから、素直に下がっておく。

…『恩恵』ねェ。それが多重能力者を生み出す鍵になるンだったら。そいつがレベル6になる手助けになるンだったら、少なくとも元のレベルまで戻せるンだったら。

受けてみるってのもイイかもしれねェな。

「これで、終わり!」

『グガァ!?』

戦闘も終わったか、これでようやく外に出れそォだな。

 

──────

 

ベルについて来て、分かったことが一つある。

『ギシャアアッ!』

「危ないっ!って、ぐえっ!?」

─コイツ、致命的にツいてねェ。

これで3階層登った訳だが、その間にコボルトと呼ばれる犬頭7体、ゴブリンと呼ばれる緑のガキ5体に襲われやがった。

オレをかばいながら歩いているせいか、攻撃も7回ほど受けてやがる。

ベル曰く、『敏捷が高いから回避型』で『耐久はあまり高くない』とのことだから、

あれだけ攻撃を受けてれば危険だろう。

実際、最初より足取りがおぼつかねェ感じだ。

まァ、オレも荷物を背負って長ェこと歩いていたせいで、疲労困憊だがなァ。

もうすぐ出口だってことだけが救いか。

オレは体力がねェからいつまでも歩いてられねェしなァ。

「取り敢えず……倍返し!」

『ブベエッ!?』

お、粉砕。ついでに、出口が、外が見えたな。

全くとんでもねぇ研究所だぜ、中世の街をまるまる一つ再現しやがって。

学園都市以上のサイズがあるんじゃねェか?この規模だと、学園都市外部の協力機関ってところか。

遺伝子改造によるバイオ生命体か?いろンな姿かたちをした奴らがいやがるな。

エルフにドワーフに…まさしくファンタジーじゃねェか。

名付けるなら”幻想(ファンタジー)都市”ってかァ。

まァ、とにかく外に出たのならコイツといる必要もねェな。

「じゃァ、ベル、オマエとはここでお別れか?」

「はい、僕は『魔石』や『ドロップアイテム』を換金したらまた潜らないといけないので。

 あ、そうだ。今晩、『冒険者通り』にある『豊饒の女主人』っていう酒場に来てください!『恩恵』のこととか 説明します!代金も出来る範囲で奢りますから!」

あァ、それがあったな。『恩恵』とやらが使えるか使えねェかを測れる機会だ。

こっからの時間は、その酒場を探すことに使うとするか。

 


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