ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか   作:syun zan

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報酬分割《わけまえ》

「「ご、59000ヴァリス……やあぁーーーーーーーーーーーーーっ!!」」

「うおっ、なンなンですかァ?いきなり叫びやがって」

既に日は半分以上地平線に沈み、多くの冒険者たちは帰路に──まぁ食事処か娼館に行く人もいるのでしょうが──ついている夕方。

ギルドの換金所から出てきた私たちは、そこで手に入れた数え切れない程の金貨に、私は歓喜する。

59000ヴァリスもあれば1割でも仕事でき(ぬすめ)なかった日の稼ぎとしては上々、むしろショボイ冒険者相手から仕事した(ぬすんだ)時よりも多いぐらいかもしれない。

本業(ぬすみ)をしばらく休んで、副業(こっち)に専念することも考えてしまうような金額、これだけ稼げるのだったらしばらくこの二人についていくことも考えるべきかも知れない。

とはいえ、それらは全て()()()()()()()()という話。皮算用に過ぎない。

『サポーターには分け前は無い』なんて言う冒険者は決して少なくはないのだから。

だから、思い切って私は彼らに訪ねる。

「それで、ベル様、一方通行様。今日の報酬のことなのですが……」

「うん。こんなに手伝ってもらったんだし、普通に山分けでいいよね。一方通行さんもそれでいいですよね」

「あ?別にイインじゃねェの?」

「ということで、リリには19700ヴァリスね。はい」

その返答ともに、どばっっ、と金貨全体の3割を超える量がこちらに渡された。

「…………え?」

「あぁ、これなら今晩、ううん幾晩かは神様に美味しいご飯を食べさせてあげられるかも……!」

「いや、オマエは武器や防具も整えるべきだろォが。いつまでも《短刀》じゃァ火力不足だろ」

……はっ!

あまりのことに、少しの間意識が飛んでいた。

お前の分の分け前なんてあるわけねーだろなんて言われる心の準備はしていたけれど、こんなことは想定してもいなかった。

当たり前だ。

どうして戦闘に貢献することのないサポーターに、自分達と同じだけの報酬を与えるというのだろうか。

そういうものだ、と思っているのだったら世間知らずにも程がある。

「ま、待ってください!ベル様!一方通行様!」

「え?なにかな?リリ。もしかしてそれだけだと不満だった?じゃあこっちは同じファミリアなんだし半々に……」

「違いますよ!むしろ、多過ぎるくらいです!リリはサポーターなんですから、お二人の三割分、7500ヴァリスもあれば十二分。というか、5000ヴァリス程が相場です。こんなに頂くわけにはいきません!」

「そうは言っても、こんなに稼げたのはリリがいてくれたお陰だし……」

「別に、オレにはそんなに金の使い道があるわけでもねェからな。大金なンて興味ねェ」

そう言って、明らかに金銭欲なんか持っていないという顔をしている二人に、私は内から湧き出る疑問を抑えられなかった。

「……ひ、独り占めにしようとか……お二人は、思わないんですか?」

「え、どうして?」

私の疑問に、心底不思議そうな声色で、ベル・クラネルは問い返してくる。

私は言葉を詰まらせることしかできなかった。

おかしい、と。

冒険者なんてお金のためになるものなのに、と。

そういった疑問がいくつも渦巻いて、

「……変なの」

 

耐え切れずに私の口から溢れでた小さな呟きは、誰の耳にも拾われることなく、空に消えていった。


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