ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
「よし……」
昨日装備を新調したらしいクラネルは、姿見の前で新しい鉄色のライトアーマーとエメラルド色のプロテクターを身に付けていた。
時々、装備を撫でてニヤついていて、キメェとは思ったが、指摘はしなかった。勿論、面倒くせェからだ。
「神様、じゃあ行ってきますねー!」
「う~ん、いってらっしゃぁ~い……」
クラネルは昨日最後までバイトを辞めるように説得していたが、もう諦めたらしい。
……そもそも、最初っからジャガ丸くンの屋台でバイトをやってンだから、辞めさせる必要なンざねェとは思うンだがな。
名残惜しそうに、また鏡を見ているクラネルは、まァ確かに冒険者
不要だからとは言え、普通の服しか着ていないオレと比べれば、冒険者らしさなら、クラネルの方が上だろう。
鉄製の《短刀》とミスリル製の《
オレも、武器や防具はないがポーションなどの小道具を揃え、教会の隠し部屋を出発した。
(チッ、やたらと日差しが強いじゃねェか)
廃教会を出れば、頭上には青く澄み渡った空が広がっていた。
能力が発現してからこっちに飛ばされるまで太陽光を浴びてこなかったオレはには、この日差しは厳しいものがある。
だが、太陽の光なんてもん、解析できてねェわけがねェ。
意識をひとつ切り替え、紫外線と必要以上の可視光線と赤外線、後その他諸々の不要な光線を反射する。
すると、反射光が目に刺さってきたのかクラネルは目を細める。
「うわ、なんか急に眩しくなりましたね。一体どうしたんでしょうか……雲が急に晴れたわけでもないのに。一方通行さんもなんかやたらと輝いていません?」
「光の向きを変えてンだよ。眩しかったからな」
「え、……それ、こっちに光が来ないように反射できませんか?」
「……」
「出来るならやってくださいよ!目が痛いんです!」
──────
裏道を経由してメインストリート、そして
冒険者どもの波に乗ってオレ達はバベルまでやってきた。
この中央広場は人が多く集まる場所だけあって、出店なンかも沢山ある。
武器や防具を売る店、回復用のポーションや粉薬を売る店、トラップアイテムなンかを売る店が立ち並んでいる。
クラネルが砥石等のアイテム類を整えている間、歩きながらそンな店々を見て回っていると、その中にやたら目を引く商品があった。
……服だ。
オレが向こうの世界で着ていたものと似たようなデザインのものが何着かそこにあった。
オレは全身をターバンで隠した店員に話しかけることにした。
「オイ、ちょっとイイか?」
「!?はい、なんでしょうかとミ……私はお客さんに答えます」
「この服をちょっと見せてもらってもいいか?」
「別に構いませんよ、とミ……私はお客さんに答えます」
どこかで聞いたことのある変な喋り方をする店員だと思いながら、服に触れる。
……素材も縫製もいつもの服と同じだ。
内側のロゴマークこそ見つからなかったが、何から何まで似ている。
……つゥか、この世界で化学繊維製の服なンてあンのかよ。
「ハァ。まァイイや。これとこいつとこの服をくれ。いくらになンだ?」
そういうと、店員はしばらく黙った。
そして、口を開いたかと思うと、
「……そうですか。売れ残りなのでタダでいいですよ、とミ……私は服を押し付けます」
と言った。
……売れ残りなのかよ。
こっちの世界でもこのセンスが分かるやつは少ねェンだな。