ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
高さ、直径共に10m超の大穴に架かる螺旋階段を登ること数分。
クーラーでも効いてンのか涼しげな空気で満ちた部屋に出る。
ダンジョン直上に建設された白亜の巨塔『バベル』の地下一階。
危険な迷宮と安全な世界の中間地点だ。
ここまで来れば、モンスターは極めて稀な階段を登ってきたゴブリン程度に過ぎねェし、
そいつらも、ここに集まっている大勢の冒険者によって袋叩きに遭うだけだ。
……と、聞いていたンだが。
「オイ、クラネル。コイツは一体どォいう事だ」
「えっと、間違ってもダンジョンからモンスターを出しちゃいけないはずなんだけど……」
今、ここに入ってきてンのは巨大なカーゴ……いや、檻だ。
時折、中身が暴れるかのように、ガタゴトッ、と揺れたり、『ウウゥ』と低い唸り声を放つそれは、中にモンスターが入っていることをはっきりと伝えてきやがる。
そしてカーゴは次々と
『今年もやるのか、アレ』
『
『あんな催し飽きずに続けて、意味あんのか?』
『パンと見世物であろう……くだらん』
『【ガネーシャ】のところも損な役回りだな。ギルドに押し付けられて、市民に媚びを売るような真似を、毎年毎年』
『そりゃあオメェ、何てったって【
喧騒とまでは言えないざわめきの中から、そんな話し声を拾った。
……
聞きなれねェ単語だが、話から推測するにモンスター使ってショーでもするンだろう。
象の顔が描かれたエンブレム付きの装備を纏う【ガネーシャ・ファミリア】の構成員達。
彼らが大小様々なカーゴを引っ張ってくる光景を、周囲の奴らと同じように眺めていると……
(うげ、あン時の職員じゃねェか)
視界の端に映ったのは自分の冒険者登録を行った職員───エイナ。
どォやら、仕事中なのだろう。
もう一人いるギルド職員と何やら打合わせを行っているみてェだな。
ギルド職員が関わっているっつゥことは、この見世物はギルド公認ってことだ。
どォいう見世物なのか気にはなるが、わざわざ話しかける気にはなれねェな。
なにせ今朝教習から逃げてきたとこだ。
話しかけるどころか気づかれでもしたらそっから先は数時間に及ぶ詰め込み教育が待っているだろうなァ。
クラネルも同じくそう思ったのだろう。
オレ達は、気づかれねェように注意を払いながら、そっとシャワーを浴びに外へ向かった。