ダンジョンでLv.6を目指すのは間違っているだろォか 作:syun zan
こンな実験で
いくつもの細い路地裏の奥。この都市の闇の住処。
絶対的な力を求め
人形が実験の始まりを告げ、間髪入れずオレから距離を取る。
轟く銃声、奔る雷撃、その全てがオレまで届かず跳ね返る。
人形が倒れ伏し、残るのは足掻くこともできねェ肉塊と、嘲笑う自分。
赤黒く染まる壁、肉塊を片付ける人形、素早く清掃する暗部の構成員。
時には狙撃してきた弾を反射して
時には体内の電気信号の向きをぐしゃぐしゃにしてみたり。
時には血流を逆向きにして心臓から爆発させてみたり。
時には大質量の物体で押しつぶしてみたり。
時には時には時には時には…。
『
10031人の虐殺。ひたすら殺すだけの実験。
余りにも酷くていかにも自己中心的なこンな実験でも、『ヒト』を殺し続けるよりはいいじゃねェか。
こンな実験でレベル6を、訂正、誰も傷つける必要のない『絶対』を目指すのは間違っているだろォか。
結論。
オレが間違っていた。
「歯ぁ食いしばれよ
「ぐがっ」
生きる者の尊厳を踏み躙るよォな実験で『
具体的にはツンツン頭のレベル0の男にぶン殴られた。
能力に頼りきりで生きてきたオレには強すぎる一撃で、ぽっくり逝った。
死ンだ。間違いなく、死ンだ。
卑劣で悪逆な実験を行った者にはもったいねェ死因。
こンな実験に参加したオレは馬鹿だった。
『
2万体の死体を積み上げるこンな実験にそれを求めていた時点で、オレは終わっていたンだ。
あァ戻りてェ。
この実験に…いや、この
物理的にもオレの命運的にも、そしてもう一つわけの分からねェ理由でも、それはもう不可能なンだが。
『グルオァッッ!!』
「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!?何なンですかァ!この犬頭どもは!」
武器を持った犬頭のイキモノ。
突如壁から生まれ出てきての最初の一撃
蹴躓いて、ゴロゴロと床を転がる。
『グルルゥッッ!!』
「チッ!」
即座に体勢を整えて後ろに下がった。
普段ならばする必要の全くねェ行為。『
ドンっと背中が壁にぶつかる。行き止まりだ。
目が覚めたこの広いフロア。正方形の空間の隅にオレは追い込まれた。
(レベル6を目指したオレがレベル0程度の能力も出せずに死ンじまうなんてなァ…まァ、あンだけやった天罰みてェなものか)
─結局、レベル6にはなれなかった。
一万人も殺してきた理由を性懲りもなく思い浮かべながら、死にゆく自分を自嘲する。
次の瞬間、イキモノの体に一線が走った。
「ハァ?」
『グルゥ?』
オレと犬頭のマヌケな声。
どうやら犬頭は背後から心臓を貫かれたよォだ。
そいつの後を付いて外から入ってきた6匹の犬頭も次々と屠られていく。
大量の血を浴びて、オレは呆然とする。
「…あ、えっと、大丈夫ですか!?」
犬頭に変わって現れたのは、ごくごく普通の少年だった。
白髪で赤目なンていう目立ちまくる特徴を除けばだがな。
(オイオイ…マジかよ)
奇しくもその特徴はオレと、一方通行と全く同じで、
奇しくもその行為はオレに、一方通行に実験を思い出させた。
(二万体の人形との戦いでレベルを上げる実験が失敗したンだから、次は二万種のバケモンでってか?)
あァ。
こンな実験で
再結論。
もちろん間違ってる。
が、