最初は、ただ孤独だった、それだけだった。
それを紛らわすための相手として、彼を選んだ。
けど、私の周囲との繋がりは、気付いた時にはもう切れていた。
誰も私を見てくれない。どうして皆、私を避けるの?
それが理解できなかった。そして気付いた時には、取り返しのつかない所まで、事態は動いていた。
「お願い、1人にしないで……」
願いはただ、それだけだったのに…
***
気付けば、朝になっていた。
「あれ?一体あの後何があったんだ……?」
俺は状況がさっぱり理解できなかった。周りを見回すと、確かにここは俺の家だ。
そして、俺は自分の身体を見る。どこにも傷はないし、どこも痛まない。
俺は自分の胸に手を当て、思わずこう呟いた。
「生きてる…?」
あれから記憶がない。あの時、彼女が俺の眼前に刃物を突き出して迫り、俺を押し倒した時から。
どうやら俺は無傷のようだ。色んな意味で。
どうして彼女があんな行動に走ったかは分からない。
おそらく、彼女は追い詰められて気が動転してしまったのだろう。
さて、肝心の彼女はというと、俺の足元でぐっすりと眠っていた。
幸せそうに寝息を立てて、すやすやと。
さて、どうしたものか、と俺は考える。
非常に幸運な事に、俺の両親は仕事が忙しく、当分は帰ってこないだろう。
俺は風邪を引かないよう彼女に毛布をかける。
…このままぐっすりと眠ってもらおう、という事だ。
そして俺は今後のことを考える。
どうやら、俺は大変な彼女を持ってしまったらしい、
目の前ですやすやと眠っている彼女を見て、俺はそう思う。
じゃあ別れるか?そんな答えは、今の俺は持ち合わせていない。
彼女を見捨てることなど出来なかったし、そんな事をしたら彼女は一体どうなってしまうのか…
考えるだけでも恐ろしい。
それに、俺はようやく気付いた。なんだかんだ言って、俺も彼女が好きなのだ。
そして数分後。
彼女が起き上がる。
「ふぁ…、あれ、もう朝?え…」
彼女は、目の前にいる俺の顔を見て、まるで死人が蘇って出てきたかのように驚く。
そして、その目に涙が浮かぶ。
「…良かった、無事で…、ぐすっ…」
そのまま泣き出してしまう彼女。
「まあまあ落ち着いて。」
俺は彼女を宥めるが、彼女はなかなか泣き止まない。
「ごめんね…、本当に。」
泣きながら彼女は謝る。
彼女の話を聞く所によると、俺はあの後気絶してしまったらしい。
そして目を覚まさなかった俺のことが心配だったが、気付いたら寝てしまったらしい。
「…もし死んじゃったらどうしようかと…」
そして彼女はひとしきり泣いた後、顔を上げて、俺を見つめながらこう言った。
「ごめんね。約束する、もう二度貴方を傷付けたりしないって。
だから、お願い…、1人にしないで。」
「…勿論だよ。俺はずっと君のそばにいるよ。」
俺はそう言って微笑む。あまりかっこよくは無いが、俺が出来るのはこれくらいだ。
すると、
「本当?ありがとう…。私達、ずっと一緒にいようね。これからも。」
そう言って、彼女はとびっきりの笑顔を見せ、俺に抱きついた。
俺はそっと彼女の頭を撫でながら思う。
…根本的に、彼女の心の闇を解決出来たわけでは無い。
けれど、少なくとも、今は俺が彼女の心の支えとなってあげられる。
多分、彼女は一生俺から離れないし、俺は彼女から一生逃れられない。
でも、それすらも、今の俺は受け入れられるような気がした。
人は言う。女とは麻薬のようなものだと。
一時の愛だけのつもりでも、気付けば虜になってしまう。
俺にとっても、彼女は無くてはならない存在になってしまった。
本当に…、
俺の彼女は依存度が高い。
完
ヤンデレって、書いてる方がゾクゾクするんですよね。快感を得られる。
初めは怖いと思っても、気付けば虜になっている。
これを読んでいるのだから、きっと貴方もその気持ち、共感できるはず。