ゾルザルとして過ごしてから数日、キールに押されて忘れていたのだが魔法についてそれとなしにキールに聞いてみた。
だが、キールの説明は解り辛かった。
しかし、分かったが魔法は有用ということだった。
魔法は自身が思い描いていたような便利なものではなく凄く複雑な学問によりなりたっていると知った。
(魔法はなぜこちらで使えるか気になるな。)
等と考えながらも自らの立ち位置について確認していた。
ゾルザルは皇太子であるが、有能すぎても今の皇帝に殺されると判明した。
それが分かったが記憶が薄れたら、自分が持っている皇帝から助かる術が無くなるように思えたのである。
記憶を元に膨大な数の書籍を一心不乱に記憶を頼りに書き出した。
幸い馬鹿な皇太子と評判になっているので、多少の無茶は何とかなると考えた。
それに加えて恐怖対象だがキールは信用出来る部下で有能だと考えた。
キールはゾルザルに言われたことならば何でもするようで硫黄と木炭と硝石について話すと僅か三日で火薬の配合比を見事作ってみせた。
火薬を量産出来ないかと聞いてみると硝石が足りないと言うことで、硝石丘と培養法と古土法やについて話した。
すると一週間ほどでキールが無茶をして古土法で硝石を作ってみせた。
更にはキールは職人を連れてきて硝石丘の小屋を別々の形で作って、ロンデルから錬金について研究している学者などを配置したのだった。
たまにゾルザルがこぼす、数式や公式などや元素表に学者達が食い付きゾルザルはそれを説明してそれに新たな構想を得た学者が研究室を吹き飛ばす毎日を送っていた。
数ヶ月の後に、宮中のゾルザルの評判は馬鹿皇太子から狂った学者の仲間と言う扱いになった。
それは〝ゾルザル〟が信仰していたエルランがよりその評判を広めていた。
集まった学者達はゾルザルから聞いた公式などを元に様々な論文を完成させ様々な数式や物理法則についてゾルザルの発見とそれの証明として学会に提出された。
学会ではゾルザルの招致を依頼したがゾルザルは拒否して、ゾルザルの知識を求めて逆にゾルザルの学者団が増えていった。
学会で論文が発表される度にゾルザルの元に学者が増えていき、どうしようも無いので使われていない帝都の外側にある施設を借り受けることになった。
簡単な話で、妹のピニャ・コ・ラーダの騎士団遊びと同じ扱いを受けたのだ。
しかし、妹よりも嫌がられていた。
硝石丘に使う材料の臭いや学者達が爆発したりする音など迷惑だったからである。
昔はさぞや美しかったであろう薔薇の様な植物の蔦が絡まり残念な光景になっていた。
ゾルザルがイバラと呼んだので、そこはイバラの園と呼ばれることとなった。
学者達は要塞が与えられたのに喜んでいた。
はっきり言って上流階級の市街地や宮殿や城の近くでは本格的な危ない実験が出来ないからである。
場所が移動するという言い訳が出来たことで、学者達は危険と思ってなくともはっきり言って常人からしたら理解が出来ない危険な実験から、実験をする為に雇った人達は危険と言うことで続々と辞めてしまっていた。
その噂は街に広まり、募集はしたが人間では全く集まらなかった。
人材難を解決するために亜人などが積極的に雇われた。
学者達は亜人かどうかは気にしないし、ゾルザルはめずらしがって見ていたいし、キールは旅の経験から彼らをそれほど警戒していなかった。
雇ったは良いが読み書きがあまり出来ないものも多く、学者達とゾルザルで文字を徹底的に教えた。
学者もゾルザルもキールも相場を知らなかった為、宮殿時代の給与で募集した。
その結果、亜人が多く集まってきた。
最初こそは皇太子が、亜人に対しては高額な給与を払うと言うことで、若い女性しか集まらなかったが徐々に雇った女性の仲間等が集まり男女比率は男2:女8と言う形になっていた。
ゾルザルは住居をこのイバラの園に移し学者と研究に走ったのである。
しかし、妹とは違い支援者は少なく、資金繰りは厳しく規模が大きくなるにつれて算盤と複式簿記によるゾルザル一人の会計では厳しくなり、仕方がないので算盤と複式簿記を獣人の中からそこそこ勉強出来る者に任せることにした。
任せられた獣人は驚嘆し喜んだ。
端から見れば皇太子の家臣団に入れたようなものだったからである。
ゾルザルは前世同様に金に苦しむのだった。
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