Japanese in THE ゾルザル   作:連邦士官

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誰かが見た流星

軽装(スケイルアーマーとチェインメイルにグリーブ)に身を包んだ亜人達はその日、イバラの園の外で待機していた。

「まだか……。」

 

ある報告を今か今かと……。

 

 

キールは奴隷商の館の前に居た。

「これは貴族の屋敷並みだな。」

ワーウルフの女性のスプリッツァの呟きにキールは

 

「帝都の中心にある別宅は大体がこれぐらいの大きさだが、貴族の本宅はこれより大きいのが多い。」

と告げてスプリッツァが「貴族て凄いな。」と言った。

 

完全に武装をしていたキールとワーウルフの存在は奴隷商の館がある、中の上が住んでいる街ではかなりういていた。

 

「それにしても居心地が悪いですね。」

スプリッツァの尻尾が丸まっていた。

 

「それは普通だ。よくあることだ。」

キールは貴族であり人目を余り気にしないのだった。

 

それにキールは気にしなかったし、周りの住人もそんな格好をしているので近づかなかった。

 

奴隷商を監視していたワーウルフ達の報告を犬達を介してキール達は手に入れていた。

犬達は首からカーディナル家の紋章が描いてある貫頭衣を着ていた為に誰も止めなかった。

 

奴隷商が奴隷に引かせた人力車に乗り、自身の逞しいケンタウロスの奴隷を見せ財産を誇示する事に彼は満足を得るのだろう、遠回りをしてやっと館に戻ってきた。

 

「犬は便利だな。」

キールがそう言うと

 

「犬達はみんな殿下から名前を貰いました。今、来た子はワラビと言います。」

スプリッツァがワラビを撫でながらそう言った。

 

「なんて羨ましいのだ。」

キールの呟きをスプリッツァは無視した。

館に入る前にキールは挨拶をしたが奴隷商は無視をした。

キールは着ていたものにカーディナル家の紋章をしていなかったので傭兵と勘違いされたのだった。

 

「ここにいるキール・カーディナル卿に挨拶をしないとは!」

スプリッツァは持っていた棍を構えた。

 

「これは失礼致しました!」

奴隷商は人力車から降りて来たがキールは手袋を投げつけた。

 

隣に居た用心棒の傭兵が手袋を拾った。

 

「許しはしない。決闘だ!」

キールは怒鳴り、観客が集まってきた。

 

「決闘は同じ身分じゃないと成立しませんのでは?」

奴隷商はそう言うと自身の屋敷に入ろうとしたが

 

「いえ、この場合は不敬としてカーディナル卿が貴方を切り捨てる権利があります。それをカーディナル卿は決闘にしてくれてるのですよ。私が立会人になりましょう。」

群衆からパナシュが出てきた。

 

「私に武器を構えろと!」

奴隷商は驚いた様だったがキールが

 

「では仕方ないです。団体の代闘士戦で決着をつけましょう。」

この提案に奴隷商は

 

「なんで私が決闘を受けると思ってるんですか?」

奴隷商は粘ったがキールが

 

「カーディナル家と戦争をする気ですか?」

とにこやかに伝えて奴隷商はうなだれた。

 

「ならば、受けましょう。」

奴隷商が答えると集まっていた群衆が騒ぎ立てた。

 

やがて城の外の広場にキールが率いる亜人イバラ軍団と奴隷商が率いる奴隷と傭兵の混合軍団が睨み合っていた。

双方が刃を潰した武器を構えた。

 

「なんだあの鎧は……。」「それよりもあの武器は……。」「何故、亜人が貴族の正規兵に?」「なぜカーディナル卿の私兵はあんなに外見が良いのだ?」「見かけ倒しだ。」

様々な話が飛び交う中、一人のキャットピープルが賭けを始めた。

 

「どちらが勝つか賭ける人は!?」「カーディナル卿の兵士は弱そうな装備だから、勝つのは奴隷商だな。」「俺は奴隷商に賭ける。」

続々と奴隷商に賭ける人々だったが、最初に賭けたのがサクラだとは気付いていなかった。

 

貴族達や帝都の一般住人や帝都の悪所街の住人、旅の商人、旅人など様々な見物人が集まっていた。

 

「では!始め!」

声と同時にイバラ軍団の持つ手管付きのパルチザンによる打撃がはじまった。

 

「セイ!」

一糸乱れぬパルチザンの風を切る音が相手を怖がらせた。

 

「正規兵が相手とは聞いてないぞ。」

傭兵達が本気になった様だったが、亜人の身体能力は敵わなかった。

 

「退くな!退くな!退くな!退くな!退くな!」

奴隷商が食い止めようとするが無駄だった。

 

「私に指揮をお任せください。」

傭兵の一人が奴隷商に指揮を許可された。

 

パルチザンの鋭い連続の突きにより傭兵達は後退した。

 

「退けよ。亜人は血が頭に上りやすい。相手は勢いが強いだけだ。我々は勝てる。退いて一気に叩くぞ。」

傭兵達は奴隷兵を真ん中に左右は自分達傭兵を多くして、いわゆる鶴翼の陣を完成させた。

 

「包囲されるぞ退け。退くんだ。」

キールの号令には亜人達は従わなかった。

亜人を率いるのには、指揮の経験は足りなかった。

 

兵士と武装の質で勝るイバラ軍が優勢かと思いきや直ぐ様半包囲されてしまった。

 

「退路は開けておけ。後は包囲された敵と消耗が少ない我ら。どちらが勝つかな?」

傭兵の巧みな指揮により、徐々にイバラ軍から脱落する者が増えた。

 

「勝てるか?」

キールの呟きにスプリッツァは「我々にお任せください。」とだけ言った。

 

戦いは始まったばかりだった。




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