暁色の誓い   作:ゆめかわ煮込みうどん

5 / 16
「飢餓は戦いよりも兵を損なう。空腹は剣より猛し」

ドワイト・アイゼンハワー


5話 着任パーティー

 食堂へやってきた。

 腹が減ってはなんとやら、これからの掃討戦に備えて力を蓄えておく必要がある。それは、艦娘も人間も変わらない。

 階段を降りるた先にある食堂は、だだっ広い広間に楕円状の机がいくつか並んでいるだけだ。少し寂しいような気もするが、現状食事をするのに景観は関係ない。それに、これから艦娘が増えていくにつれてここも賑やかになっていくことだろう。

 

「司令官! 司令官もご飯?」

 

 左の方から呼びかけられる。隅の円卓に、暁と雷が座っていた。

 

「よお、お前ら。補給に行ったんじゃなかったのか?」

「補給は妖精さんに任せればいいわ。私達はそのままこっちへ来たの」

「そうなんだ(妖精さん?)せっかくだし、一緒に頂いてもいいかな?」

「もちろんよ」

 

 円卓を囲うように置かれた六つの椅子の一つを引き出す

 

「ところで、妖精さんって言うのはなんだい?」

 

“補給は妖精さんに任せればいい”とはどういう事か聞いてみる。すると、二人の顔が“信じられない”という表情で固まる。

 

「え!? 司令官、艦娘達の提督になるって言うのにそんな事も知らないでいたの?」

「司令官、士官学校出てるんでしょ?習わなかったの?」

 

 一気にまくし立てられる。どうやら海軍の軍人である以上、知っていて当然のことらしい。あまりの剣幕に、思わず目を逸らし、頭をかく。

 

「いやぁ、戦術論と白兵戦技の授業以外はずっと寝てたからなぁ……」

「いやいや、そうでなくても一般常識よ」

 

 二人に呆れられる。

 説明してもらったところ、“妖精さん”とは、鎮守府に住み着いている不思議な小人の事を言うらしい。

 艦娘の建造、艤装の開発、整備、艦載機の搭乗員及び艤装の操作要員や、応急修理要員、食事の世話やドックの整備など、その他艦娘に関わる雑務をこなしてくれる、まさに妖精のような存在だ。今、厨房で食事を作ってくれているのも妖精さんなのだという。……ちなみに二人曰く、ちゃんと“さん”付けで呼ばないと気分を害するらしい。

 ありとあらゆる仕事をさせ、酷使しているが、政府からちゃんと給料(一体何に使うというのだろうか)が降りているし、また、妖精さん達も結構やりがいを感じて働いているようなので、決してブラック鎮守府という訳では無い。

 艦娘と同時期に発見された時、かなり世間に騒がれたらしいが、その後艦娘と同様に人々の生活に溶け込んで言ったのだという。今では妖精さんをモデルとした子供向けの人形まで販売されているというのだから驚きだ。

 だが、世間が大騒ぎした、と言っても当時俺はまだ年端も行かない子供だった。知らなくても仕方が無いのではないだろうか。

 

「いやいや、それでもこの歳まで知らないってありえないわ。司令官、ニュースとか新聞とか見ないの?」

「士官学校に入ってからは全く見なくなったな。結構忙しかったし」

「全く……司令官はこの鎮守府を預かっているんだからね。それくらい知っておいてよね」

 

“ぷんすか”という擬音付きでふくれる暁と腰に手を当て、“そんなんじゃダメよ”と全身で言う雷。思わず苦笑してふと振り返ると、地面を料理が走ってきた。ひとりでに、である。

 どうやらオムレツのようだ。しかも2人前。ぴょん、と飛び跳ねてテーブルに乗る。皿を持ち上げているのは二頭身の、本当に手乗りサイズの小人だった。

 

「へぇー、君が妖精さんかい?」

 

 妖精さんは少し首をかしげて見つめ返したが、すぐに納得したように頷き、こう答えた。

 

“はじめまして、ですね! しれいかん! そう、わたしはしょくどうようせい。このちんじゅふであなたたちのしょくのおせわをたんとうさせていただいています!”

 

 一息に言い切る。

 

 駆逐艦娘たちよりさらに幼い口調。まさに言葉の覚えたてのような話し方だ。聞いてるこちらとすれば、文字を全て平仮名に変換したい気分である。しかし、単語や文法は完璧なので、すごく違和感を感じる。食堂妖精、と名乗ったという事は、妖精にも役割分担があるのだろう。

 

「よろしく頼むよ。君達に支えてもらう事は多いだろうからね」

“こちらこそよろしくおねがいします!”

 

 ぺこっとお辞儀する。可愛いな、今度人形買おう。

 

“しれいかんもなにかたべていきますか?”

「そうだね。料理はおまかせするから、美味しいのを作っておくれ」

“わかりました!”

 

 ぴょんと円卓から飛び降りるとまた厨房の方へとかけていった。

 

「小さくて可愛いね」

「でしょう?人気者なのよ」

「これから何かとお世話になるな。あ、気にせず温かいうちに食べろよ。2時間後には再出撃だからな」

「はーい」

 

 

 

* * *

 

 

 

 ――十分ほど遡って入渠ドック

 

 鎮守府には、入渠ドックという施設がある。艦娘が艤装を外せば人間とほぼ違いがない、という事は周知の事実だ。だが、“ほぼ”とあるように、僅かな違いはある。艦娘がもつ不思議な特性を利用したのがこの入渠ドックなる施設だ。

 

 艦娘は、39℃に保たれた濃い塩水に浸かることで、自然治癒力が爆発的に高まるのだ。この特殊な湯に浸かると、例え体の一部…例えば腕が無くなっていたとしても、数時間で完全に回復する。

 これだけならただの急速回復装置なのだが、入渠ドックの機能はそれだけに留まらない。なんと、艦娘の身体だけでなく、艤装まで完璧に修復してしまうのだ。

 これには有力な仮説がある。艦娘の艤装は、常に艦娘の身体と艤装の状態をデータ化して保存し続けており、艦娘本体が入渠ドックの特殊な湯に浸かることでそれらの情報が引き出され、艦娘の肉体及び艤装は、艤装に保存されたそれぞれが“健在だった状態”のデータを元にして再構築される……というもの。

 

 明確な根拠がある訳では無いが、解体処分……つまり、艤装との同期(シンク)を断ち切った艦娘は同じ入渠ドックの湯に浸かっても肉体の治癒がなされなかったこと、艦娘本体の回復速度は艤装の回復速度と一致していることから、艤装に鍵が隠されている事は確実視されている。

 一部では人間に応用することが出来ないかと躍起になって研究する者もいるらしいが、そもそも艦娘の特性を用いた回復方法なので、汎用性はないと考える医者、学者が多い。

 

 ちなみに、何故塩水なのかは未だ解明できていない。“艦娘達の前世である艦艇の魂、記憶が、海と同じ成分と反応し、作用している”という説が、オカルトじみている上に証拠もないが一番論理整合するという事で一般に認知されている。というより、これの他に仮説の立てようがなかったという方が正しいだろう。

 

 施設内には、大浴槽が一つ、中浴槽が一つ、小浴槽が二つ設置されており。この内の小浴槽二つに、例の濃塩水が満たされている。この浴槽は維持するのも大変なので、今は二つが限界なようだ。

 もっと大規模な鎮守府ともなると、増設工事を繰り返し、沢山の浴槽があったりする。例えば現在日本一の規模を誇る横須賀鎮守府では、ドックを維持限界まで拡張し、最大で6人同時入渠が可能だという。これは、建造直後、初期艦研修として少しの間崎矢少将の元にいた電から聞いたことだが、横須賀に次ぐ規模の呉鎮守府にも同じ6つの浴槽があったらしい。

 

……さて、この2つの小浴槽は艦娘達の回復施設である。では、残りの二つの浴槽は何なのか、というと、ずばりお風呂である。被弾しなかった艦娘、遠征帰りや、演習、トレーニング帰りの艦娘達など、怪我をしていない者はこちらに入って疲れを取る。もちろん、洗い場も付いているので、汗を流すだけの者もいるが。

 

 そして現在、治癒能力向上効果のある浴槽は、私こと響と、妹の電で埋まっている。私の背後にある電子パネルには00;11:52の数字が表示されているいる。電の背後のパネルにも、同じように00:12:34の数字。これは修復完了時間を算出して、リアルタイムで表示しているのだ。執務室や作戦司令室にも壁掛けの電光掲示板のようなものがあり、修復完了は鎮守府のどこにいても察知できるようになっているんだとか。

 

「初めて入ったけど、なかなか心地いいものだね」

「なのです」

 

 さっきまで元気のなかった電も、傷が癒えてきたのか、二言三言交わすうちに笑顔を見せるようになった。でも、やっぱり姉として彼女の不安は取り払ってあげたい。

 

「電、出撃中に何があったんだい?」

 

 そう問うと、電は怪訝そうにこちらを見返した。

 

「何が……?」

「皆心配していたんだよ。出撃以降電の元気がないって」

「……」

「雷なんて特に、“私が被弾させちゃったから”、なんて言ってたよ」

「……」

 

 電は何も答えない。

 答えが用意出来ていないという訳ではないようだ。だが、言い出せないことを無理に聞き出すメリットも見いだせないので、この話はやめることした。

 

「艤装のメンテも妖精さんに任せてあるし、修復が終わったらご飯だね。昼から何も食べてないから、流石にお腹が空いたよ」

「そうですね。暁ちゃんと雷ちゃんは、もう食べ始めているのでしょうか」

「多分ね。あの二人はせっかちだから」

「本当、見ていて心配になるのです」

 

 我先にとかきこむように食べる姉妹艦達が容易に想像出来て、二人で声を上げて笑った。

 

「ところで響ちゃん。ご飯の後の掃討戦の事なのですが……」

「電は気が早いね。私たちに休む暇も与えないのかい?」

「まさか。戦術について話したいことがあるのですよ」

 

 くすくすと可愛らしく笑う。彼女の頭上のタイマーは00:05:00を過ぎた所だ。私達もこれを終えたら食堂に行こう。電の悩みの種は分からずじまいだが、いずれ自分から話してくれる事だろう。それまでは……

 

 

 

* * *

 

 

 

 最初の出撃から約3時間後。時刻はおよそフタマルマルマル…午後8時。正確に言うと午後8時4分に、私達は再出撃を命じられた。

 旗艦は引き続き響が務める。暁が一瞬不服そうな顔をしたが、妹の顔を立てるのも姉の勤めだと納得したようだ。

 

 今度の出撃はあっさり終わった。敵は二隻で、こちらの半分。おまけに手負いだ。能力で劣っていた上に、人数不利だった無茶な昼戦とは大違い。視界は悪かったが、今回は索敵が得意な暁がいる。出撃後10分ほどで敵艦隊を発見することが出来た。

 敵艦隊は航行能力を奪われた中破駆逐艦を砲塔をやられた小破駆逐艦が引きずってなんとか戦線を離脱しようとしていたものらしかった。これでは実質一隻のようなものね。

 司令官は今回の指揮を響に任せている。通信回路を開いてはいるが、何も言わない。響の指示が飛ぶ。

 

「敵はこっちに向かってきている。雷と電は敵の右舷を最大戦速で前進、背後に回って! 私と暁は敵の進行に合わせて後退しながら迎撃。いいね?」

 

 なるほど。と、思わず1人で頷いた。

 前から砲撃されれば敵はそれに応戦せざるを得なくなる。私達が背後に回ろうとしても、それを阻む事は出来ない。それを無理に阻止しようと右に旋回すれば、今度は正面の響達からの砲撃に無防備な側面を晒す事になる。

 

 暁と響が、威嚇射撃をしながらゆっくり後退していく。敵駆逐艦は、それに釣られて少し前進する。まんまと響の罠にかかったようだ。ここで響の意図が読めていたならば、最大速力で後退し、逃げるべきだった。しかし、そうしなかった。ならば、私達の見せ場よね。

 

「電! 私達の戦闘。思い知らせてあげましょう!」

「了解なのです!」

 

 速力を上げる。電もそれにならう。敵は旋回しなかった。姉二人が砲撃を強め、振り返る暇を与えない。あっという間に敵は前後から挟撃される形となった。

 

「てーっ!」

 

 ドンッ、と重い音を立てて放たれる弾。一発外したが、もう一発は中破艦に当たり、轟沈させる。その間に、響が小破艦を中破させ、電がそれにトドメをさした。

 

 

 

* * *

 

 

 

 ――数十分後、柱島泊地母港

 

 艦隊帰投。戦果は駆逐艦二隻撃沈。被弾なし。判定:完全勝利S。書類に書き留めながら司令官が言う。

 

「皆お疲れ様。文句無しの戦果だ、それにしても……」

 

 そしてため息をつくとこう続けた。

 

「敵の航行速度に合わせて2人が後退、後のふたりが逆進して前後挟撃……響、あの戦術は見事だった」

「ふふふ。実は電の受け売りなんだけれどね」

 

 響がクスクス笑う。そう、この作戦の立案者は電だったのだ。司令官が大きく目を見開く。

 

「へぇ、電が……すごいなぁ、あの動きには思い至らなかったよ。後でじっくり話を聞かせてくれ」

「もちろんなのです」

 

 そういって電を撫でる。次に私に向き直った。

 

「今回のMVPは雷だ。作戦も見事だったが、それを完璧に実践するのは容易じゃない。よくやったぞ」

 

 やはり彼は私の頭を撫でた。

 

「そうよ! もっともーっと私に頼っていいんだから!」

 

 司令官に限らず、人に頼りにされるのが頼りにされるのが、私はたまらなく嬉しい。自分の存在意義をはっきりと感じることができるから。

 

「暁、響もお疲れ様。柔軟な動きで敵を誘えたのは非常によろしい。あえてケチをつけるなら暁、お前は誘い出す時点で魚雷を撃っておくべきだったな」

「たっ、倒せたからいいじゃない!」

「ああ、もちろんだよ。でも、今回は倒しきれたけど、もし主砲で仕留めきれなきゃ被弾してたかもしれないだろ? 使える武器は出し惜しみしちゃダメだ」

 

 司令官は一人一人にコメントをつける。私や電のようにいい評価もあるし、暁のように、少し手厳しい事を言うこともある。だが、それは彼の指揮官としての誇りと、私達を出来る限り成長させるための配慮がそうさせているのだと思う。

 

「……よし、もう暗くなったことだし、早く風呂と補給済ませてこい」

「「「「はーい」」」」

 

 元気よく答えた3人が駆け出す。今回は被弾していないから、補給と言っても艤装を補給担当の妖精さんに渡しに行くだけだ。駆け出す3人の後を追おうと思って、ふと立ち止まる。昼戦の時点から気になっていたことを思い出したのだ。

 

「ねえ、司令官」

「うん? 何だ」

 

 司令官が、執務室に向けた足を止める

 

「そんな大事な事でもないんだけどね。司令官は私達が被弾する事を凄く嫌がってるみたいでちょっと気になったの」

「んー……」

 

 彼は面白そうな表情をたたえてこちらを眺める。少し考えた後、こういう返答が返ってきた。

 

「そりゃあ嫌だよ。可愛い女の子たちを自分の不甲斐ない指揮のせいで怪我をさせちゃうなんてね」

 

 ケタケタ笑いながら言う。私は結構真剣に言ったつもりなのに。

 

「あ、待って待って。拗ねるなよ……言葉はふざけたけど、内容は俺の本心なんだぞ」

 

 彼の顔からは、さっきまでの笑いが消えていた。この人は私達の事をしっかり考えてくれる。部下としても、人間としても、女の子としても……

 

「被弾はないに越したことはないさ。あーあ……俺も艤装が装備出来ればなぁ……用件はそれだけかい?」

「ええ。つまらない質問に答えてくれてありがとう」

「いやいや。ちゃんと伝えれてよかったよ。さぁ、皆待ってるぞ、行ってやれ」

 

 振り返り、3人を追いかける。司令官は、私達のことを守ってくれる。それを確認できたのは充分過ぎる戦果よね。

 

 

 

* * *

 

 

 

 ――柱島泊地鎮守府中央棟3階執務室

 

 補給を済ませた彼女達を迎えた俺は、昼に約束した通り、着任祝い兼初戦果祝いの小パーティーを開くことにした。食べ物、飲み物は俺が近くのスーパーで買ってきただけのものだが、勝利の喜びが実際より味を良くさせているらしい。皆嬉しそうに食べてくれた。そんな駆逐艦娘達を少し離れて眺めながら、一本目の缶を開けていると、それを見た響がこちらへやってきた。

 

「司令官、昼戦の時の約束、覚えてるかい?」

 

 覚えている。昼戦の通信でした約束、一応ウォッカのボトルは買ってきたが……

 

「本気か? お前、まだ未成年だろ?」

 

 クスクス響が笑う。

 

「やっぱり知らなかったんだね。私達艦娘は人権を獲得してるっていうのは知ってるかい?」

「ああ、聞いたことがある。戸籍も請求すれば作れるんだっけ」

「そう。でもね、艦娘は建造時点での年齢は正確にわからないよね。だから法の下では皆成人扱いなんだ……約束通り、お一つ頂くよ」

 

 ひょいとボトル掴んで持っていく。

 

「あぁー、俺の楽しみがぁ……」

「頑張って戦ったんだしいいじゃないか。それに、司令官はこれよりそっちの方が好みなんじゃないかい?」

 

 響は隅に置いてあるブランデーボトルを指さした。そう、響の言う通り、他にも酒は沢山あるし、俺はどちらかと言うとブランデーやワインと言った果実酒や、気軽に飲めるビールの方が好きだ。確かにウォッカも悪くないけど、どうもさっぱりし過ぎている。酒はやっぱり香りと味を楽しむべきだと思うのだ。

 

……ちなみに、俺は日本人の中ではかなり酒に強い方だ。だから、今晩は飲みまくるつもりだし、来週の分もと思って響から注文のあったウォッカと、個人的に飲みたかったブランデーの他に缶ビール2ダース分のストックを買ってきたのだ。

 

……そのせいで1回では持ち帰ることが出来ず、鎮守府とスーパーを二往復するハメになったが。

 

「やっぱり出撃後は冷えたコレに限るね」

「ジジイみたいな事言ってんじゃねぇよ。それかなり度数高いぞ」

 

 そう言った時、雷が興味を持ったようで、こちらへやってきた。

 

「司令官! 雷も飲んでみたい!」

 

 俺達に気付いた三人も寄ってくる。

 

「あ、暁も一口頂くわ。だって大人のレディーですもの!」

「えー……これかなりキツイよ? レディーは飲まない方がいいと思うな」

「とっ、とにかく! 暁にも飲ませなさいよ!」

 

 好奇心が抑えられない模様。もうなんというか……子供っぽいな、やっぱり。

 

「んじゃどうぞ。後悔しても知らねえぞ」

 

 暁が持っていた(さっきまでオレンジジュースが入ってたやつだな)コップに半分程注いでやる。響が「やめといた方が……」と止めた時には暁は豪快にそれを飲み干していた。

 

「……暁ちゃん?」

 

 電がおずおずと暁を呼ぶ。暁が上げた顔は既に真っ赤。いやいや、幾ら何でも酔いが回るの速すぎやしないか?

 

「どうかんがえても、あかつきがぁ……」

 

 言いかけて倒れ、慌てて駆け寄る。酔うのは一向に構わないが、アル中で倒れられたら一大事だ。

 

「……司令官。暁は大丈夫?」

「うん。眠っただけみたいだ」

「良かった。それにしても弱いね暁は」

「ああ……っておい!お前それ2本目かよ!」

「ああごめん。つい開けちゃった」

 

 姉妹なのに耐性が全然違うようだ。

 

「司令官、これなかなか美味しいわね」

 

 暁をソファーに寝かせている間に雷、電も少し飲んでみたらしい。この二人は至って標準か、少し弱い位なのか。雷は少し酔い気味だ。

 

「程々にしとけよ。暁みたいになっても困るから」

「「はーい」」

 

 

 

* * *

 

 

 

 ――数時間後

 

 時計はマルヒトマルマル……午前1時を指していた

 

「お前、強いよ」

「いやいや、司令官もなかなかだよ……お水いるかい?」

「ありがとう」

 

 俺は響との飲み比べを引き分けで終わっていた所だった。響もすぐ酔いつぶれると思っていたのだが、かなり強いようだ。俺に張り合って飲み続けて、まだそれ程酔っていない。せいぜい少し頬が赤くなった位だ。

 2人ともそれぞれウォッカとブランデー1本に加え、ビール9缶ずつ飲み干した。流石に俺も酔いが回ってくる。

 

「全部飲みきっちまったな。また買ってくるから今度一緒に飲もう」

да(ダー)(うん)。絶対誘ってよね」

 

 最初は雷も張り合って一緒に飲んでいたが、三本目でダウンしたので暁と一緒に寝かせてある。電は普通に眠くなったのだろう、2人の姉の上に突っ伏して眠っている。響と2人で眠ってしまった3人を運ぶ、というのは少し大変だし、起こすのも悪い。

 

「今日はここで寝かせるか」

「それがいいね」

「響、隣の部屋からから布団二枚出してきてくれ。暁と雷はソファーで寝かせるから、響と電は申し訳ないけど床に布団敷いて寝てくれ」

「私は構わないけど……司令官は何処で寝るんだい?」

「流石に女の子達と同じ部屋はマズいからな。隣に応接室があるからそこで寝るよ」

 

 本当は提督には寝室が用意されているのだが、荷物を散らかしたままなので眠る場所がない。明日の夜には片付けよう。

 

「まぁ、今日は皆遅くまで頑張ってくれたんだ。明日の執務は午前10時からにするから、朝はゆっくり起きてこい」

спасибо(スパシーバ)(ありがとう)。伝えておくよ」

「んじゃおやすみ」

「うん、おやすみ」

 

 響と別れ、執務室を後にした。

 アルコールが入ったせいか、心地よい眠気が脳を覆う。俺も明日は少し寝坊して、8時くらいまでは寝ることにしよう……

 

 




腹が減っては戦はできぬ。補給と兵站は戦争においても、日常生活においても最も大切と言えるのではないでしょうか?
春イベが始まりましたが、提督の皆さんも、しっかりとご飯は食べるようにしましょうね(*´꒳`*)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。