『青春とは嘘であり悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。
彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。
例えば万引きなどによる犯罪行為、警戒区域などへの進入。これらを若気の至りと言って済ませてしまおうとする。それがどれだけの人に迷惑をかけるか想像せずにだ。
彼らにかかれば嘘や失敗や罪科や危険行為さえも青春を楽しむためだけのスパイスに過ぎないのだ。
結論を言おう。青春を楽しむ愚か者ども砕け散れ!』
「砕けちるのは貴様だ、馬鹿者!!なんだこの作文は?」
「高校生活を振り返って思った事を書いただけです」
高校生活も2年目を迎え、最初に国語の授業で課された課題、『高校生活を振り返って』のテーマにしての作文を提出した八幡は放課後に国語の担当教師の平塚に呼び出されたのだ。
「ほう?貴様の周りには犯罪者しかいなかったのか?ボーダーという環境でもここまでは思わんだろ」
ため息をつきながらやれやれといった感じでいう。
「いや、結構……いやだいぶ迷惑してますから警戒区域への進入とか」
「だからといってそんな奴らばかりではないだろう。穿った考えばかりしているから目が腐っていくんだぞ」
「目が腐ってるって……DHA豊富で体に良さそうですね」
八幡は適当に返事をすると
「はぁ……君は友達はいるのかね?恋人は?」
「友達?まぁボーダーの仲間とはそれなりに。恋人はいませんけど」
「うん、そうだろうそうだろう」
平塚は八幡の言葉に何故か満足そうに頷く。主に恋人いない宣言に
「先生は恋人いるんですか?」
少しムカッときた八幡が言うと八幡に向かって拳が飛んで来た。高速の剣技やら銃弾の嵐やらを経験している八幡……当たらないのはすぐにわかったため避けなかったが
「全く、女性に余計な事を言うなと教わらなかったか?それに次はあてるぞ」
「はぁ、なら避けるだけですね。痛いのは嫌いなので」
「ほう?」
好戦的な笑みを浮かべる平塚だが八幡はまだ中2病患ってるのかぁと別な方に思考がいっていた。
「まぁ、問題があったなら書き直しますよ」
「それは当たり前だが、君の発言に私は傷ついた。ちょっとしたペナルティを受けてもらう。ついてきたまえ」
そして平塚は職員室を出て行く
「俺結構忙しいんですけど」
「つべこべ言うな。君のシフトを見る限りボーダーの仕事は月に数回程度じゃないか」
「それには理由が……」
「早く来たまえ」
八幡は諦めてくれそうにない平塚を見てため息をつき今日の予定を確認する。幸か不幸か今日はあまり急がなくても大丈夫そうなので、一仕事すれば諦めるだろうと踏み平塚についていく八幡であった。