特別S級隊員比企谷八幡   作:ケンシシ

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東京ワンニャンショー②

「姉さん……」

 

雪ノ下が小さく呟く。

 

「あっ、驚かせちゃったかな?雪乃ちゃんの姉で雪ノ下陽乃です」

 

雪ノ下陽乃がにこやかに言う。

 

「はぁ、比企谷八幡です」

 

八幡に続き他の面々も一応自己紹介するが

 

「それじゃ、私たち忙しいので」

 

小南が俯いている三浦を連れて行こうとするが

 

「え、ちょっとお茶していかない?お姉さんが奢っちゃうぞ」

 

陽乃が引き止める。

 

「あぁ、こいつらはこの後防衛任務もあるんで急いでるのは本当ですから」

 

「えー、そうなんだー」

 

八幡が言うと残念そうにする陽乃だが

 

「今の口ぶりだと君は大丈夫なのかな?」

 

「はぁ、俺は大丈夫ですよ」

 

「ちょ、お兄ちゃん!?」

 

一緒に来るもんだと思ってた小町から驚きの声が上がる。

 

「ほら、さっさとカマクラのエサと雷神丸へのお土産買ってこい」

 

「うぅ……後で話し聞かせてもらうからね」

 

そう言って小町達はその場を離れて行った。

 

「じゃ、オススメの喫茶店近くにあるから行こうか!!」

 

八幡と雪ノ下は陽乃についていくのであった。

 

「それで一体どんな用ですか?」

 

喫茶店に入り注文が来た段階で八幡が切り出す。ちなみに雪ノ下はずっと不機嫌そうにしている。

 

「雪乃ちゃんとかから色々話は聞いててね。あっ、ちなみに雪乃ちゃんはお母さん達からも怒られてね、私が監視って感じ。そうだ、私からも職場見学では雪乃ちゃん達が迷惑をかけてごめんね?」

 

陽乃が申し訳なさそうに言うが

 

「はぁ、どうも」

 

八幡がてきとうに返事をする。

 

「あ、あれ?何かお姉さん気にくわないことしちゃったかな?」

 

八幡はため息をつくと

 

「そんな露ほども申し訳ないなんて思ってない顔で言われてもって感じですね」

 

楽しいはずの東京ワンニャンショーを邪魔されたからか八幡はいつもより棘のある態度をする。

 

「あはは、そんなつもりはないんだけどなぁ。ごめんね、比企谷くん」

 

「だからやめてくれません?その薄っぺらい仮面みたいな顔」

 

その言葉に雪ノ下姉妹が驚いた顔をする。

 

「虫唾がはしるんで」

 

さらに追撃する八幡。

 

「へー……」

 

さっきまでとは一転、冷たい表情になる陽乃。八幡はチラ見するが興味なさげに

 

「もう良いですか?今からならまだ妹達と合流できるんで」

 

「私達もちょうど迎えが来たから良いよ、今日はありがとうね。比企谷くん」

 

そう陽乃が言うと黒塗りの高級車が近くに止まる。

 

「あれは……」

 

「あぁ、去年事故した車だよ。あれ?雪乃ちゃんとかから何も聞いてなかった?」

 

陽乃が言うと

 

「何も……まぁ事故は犬を助けに飛び込んだ俺が悪いですから。それに色々して貰いましたからね」

 

「そう言って貰えるとありがたいね」

 

「じゃあ俺は本当にこれで」

 

「またね〜」

 

そう言って店を八幡が出ようとした時

 

「あっ、私もボーダーに入隊する予定だから、その時はよろしくね。S級隊員さん」

 

「そうですか、まぁ頑張ってください」

 

そして八幡は小町達に連絡を取り合流した。

 

「お兄ちゃん!!大丈夫だった!?」

 

最初に小町が慌てて近寄ってくる。

 

「何がだ?」

 

「あの雪乃って人なんでしょ!?お兄ちゃんに迷惑かけたのは!!優美子さんから聞いたよ!!」

 

小町が怒りながら言うが

 

「もう過ぎた事だ。気にするな」

 

「うぅ……お兄ちゃんがそう言うなら……」

 

八幡が頭を撫でながら言うと小町は落ち着き

 

「姉の方はどうだったの?」

 

小南が聞いてくる。

 

「別に何とも、 どうかしたのか?」

 

「なーんかあの顔、胡散臭くて」

 

手厳しい小南に苦笑いする八幡。

 

「小南に見破られるようじゃ、あの人の仮面もまだまだだな。」

 

「どういう意味よ、それ」

 

「何でもない」

 

まぁそれも仕方ないかと思う八幡。八幡や小南は城戸司令や唐沢、根付や鬼怒田など、本当の意味で底知れない人達と付き合いがあるのだから。

 

「じゃあもう少し観てまわるか」

 

そうして八幡達は再び東京ワンニャンショー巡りに戻るのだった。

 

「そろそろ帰るか」

 

再びまわり始めてからしばらくたち、時間も良い頃合いになったので八幡が提案すると

 

「ヒキオ、ちょっと良い?」

 

「何だ?」

 

「ヒキオにも話しとこうかなって思って。何で抜けたか」

 

三浦が言うと

 

「私達は先に玉狛に帰ってるわね」

 

「また後でね〜」

 

気をきかせたのか小南と小町は先に帰り、八幡と三浦は近くのカフェに入っていった。


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