八幡と嵐山隊が生徒の待つホールに戻ると雰囲気はお葬式状態だった。
「実力で勝ったと思わないことね。貴方はその怪物並みの恵まれたトリオンに頼っているだけなのだから!」
雪ノ下がつかつかと八幡に近づいてそう言い放った。
「やっぱりなぁ」
「自分の力じゃないじゃん」
「同じ条件なら雪ノ下さんや葉山くんが負けるわけないしね」
「力にものいわすとかダサくね」
直後に生徒から八幡を批判する声があちこちから上がる。
「素直に負けを認めたら?雪ノ下さん」
生徒は驚いて声が止まる。何故なら雪ノ下の味方の隊員であるはずの三浦から声が発せられたからだ。
「ヒキオが強くてあーしらは弱い。それだけじゃん。何で認めないの?」
「この腐った目をした男に実力で負けてるですって?冗談も大概にしてほしいわ」
「あんさぁっ!!……」
三浦が怒り雪ノ下に詰め寄ろうとした時
「雪ノ下先輩、八幡先輩の努力を知っていますか?」
木虎が間に入るように聞く
「トリオンにものを言わせてるのに努力もなにもあるのかしら?」
「八幡先輩は私がボーダーに入隊した時にはすでにS級隊員でしたからその前の事はあまり知りませんが、私がみてきた限り、その立場に甘んじて驕った姿なんて一度も見たことがないです。」
木虎がさらにどれだけ八幡が尊敬できる人物か話そうとしたが
「木虎、時間だ。嵐山さんお願いします」
八幡が木虎を止めて嵐山に職場見学の続きをうながす。
「あ、あぁ。さっきまで観て貰ったのがチームランク戦という実践式の訓練の1つだ」
珍しい木虎の態度に驚いていた嵐山は八幡の声で再起動した。
「本来は複数のチームで行われるもので戦場も……
それから嵐山の説明が続き、程なくして職場見学は終了した。
鈴鳴支部にて
「葉山、今日の職場見学はどういうつもりだ?」
来馬隊エースの村上鋼が葉山と話していた。
「どういうこととは?」
「俺や来馬先輩は嵐山隊との対戦は許したが比企谷との対戦を許した覚えはないぞ」
葉山は視線を落とすと
「すいませんでした。」
「一歩間違えれば来馬先輩にも迷惑がかかるとこだったんだぞ?今回は嵐山さんが穏便に済ませてくれたから良かったものを!」
「まぁまぁ、何事もなく済んだんだし。次からは気をつけてね?」
来馬が葉山に説教をしている村上を諌める。
「鋼くんの言う通り大変なことになるとこだったんだからね?雪ノ下さんも反省しなさいね」
「はい……」
雪ノ下が小さく返事をするのであった。
ボーダー本部にて
「今日は大変だったみたいだな」
「まぁ、それなりに……」
八幡と鬼怒田が話していた。
「あの事件からもう三年と少し程 か?八幡がS級になってから」
「そうですね、もうそれくらいになりますね」
そして2人は思い出す。遠い日を
八幡がS級となったきっかけ、それは中規模の近界進行。当時まだ防衛任務に出れる隊もまだまだ少なく、その日は八幡1人で防衛に当たっていた。
「このまま何事もなく終わればいいなぁ」
『まだ防衛任務は始まったばかりよ、比企谷くん』
このときは現在忍田本部長の下で働いている沢村が本来はアタッカーだが代わりにオペレーターをしてくれていた。
『ゲート発生……これは!?』
沢村が驚いていると
「あぁ、こちらからも見えてます。できるだけ早い援軍を」
『りょ、了解!』
八幡の目の前には幾つものゲートが発生しており次々にトリオン兵がなだれ込んできていた。
「何だ、これは?」
すぐに頭角を現したとはいえまだまだ入隊したての太刀川慶が見たのは化け物だった。
バイパーをつねに体の周りに浮かせ近くの敵は切り倒し、離れた場所にいるのは見たことのない破壊力をしたバイパーが飛んでいき粉砕する。
「な、何だあいつ……化け物だ」
他の隊員がその姿を見て呟く。
実質このそれなりの規模をした近界の進行を1人で止めた八幡はこの後にS級へと昇格したのである。