「八幡と出かけるなんて久しぶりね」
大志から姉の話を聞いた後ついでに夕飯も済ませその場は解散したが八幡はとっとと大志の姉、川崎沙希の問題をとっとと解決してしまいためその日のうちにバイト先と思われるエンジェルラダーに来ていた。小南も連れて。ちなみに2人ともしっかり正装だ。
「べつに桐絵までついてこなくて良かったんだぞ?」
「よく言うわね、あんなお洒落な場所に八幡1人で行ったら通報されるわよ」
やれやれといった感じに言う小南。
「まぁ良い、行くか」
「しっかりエスコートするのよ」
そう言い腕を組んでくる小南。八幡はため息をつき小南はルンルンとした感じでBARに向かった。
「いらっしゃいませ、比企谷様ですね?こちらへどうぞ」
予約を入れていた八幡達はすんなりと通される。
「ごゆっくりどうぞ」
そしてカウンター席に座る2人。八幡はとりあえず飲み物を頼もうと顔をあげると
「川崎?」
「……誰?」
以前一緒に遅刻していた川崎沙希がいた。
「八幡、この人?」
「あぁ、そうだ」
川崎はバイトがばれたのだと分かり、バツが悪そうにするがすぐ立て直し
「ご注文ですか?お客様」
「じゃあマックスコーヒーを」
「あんたバカじゃない?こんなとこにあるわ……」
川崎がどうぞと例のコーヒーを差し出すのを見て絶句する小南。
「桐絵も注文しろよ」
「え、えーと……ノ、ノンアルの美味しいので」
何が何だか分からなかったのであろう小南はそう注文する。
「かしこまりました」
そんな小南に和んだのか川崎は笑みを浮かべると手慣れた手つきでカクテルを作り小南に差し出した。
「あっ、程よく甘くて美味しい」
普通に楽しんでいる小南を無視して八幡は川崎を見て
「同じクラスの比企谷だ」
そう話しかける八幡。
「そっか、バレちゃったんだ。どうするの?学校に言う?それともここ?でも私はバイトをやめないよ。ここクビになっても他を探すだけ」
八幡を睨みつけるようにし、強い口調で言う川崎に八幡は一切動じずに
「べつにそんなつもりはない」
その言葉を聞いて驚く川崎。
「明日の朝5時くらいに下のマックまで来てくれ」
「何を考えてるの?」
訝しげにこちらを見てくるが
「妹がお前の弟の相談にのってな」
「じゃあ大志には私から話しとくから構わないで」
八幡はため息をつくと
「お前にとっても悪い話しじゃない。朝だぞ」
「美味しかったわ、じゃあ」
八幡と小南は足早にエンジェルラダーを去っていった。ちなみにマックスコーヒーはしっかり飲み干してます。
「で?話しって何?」
翌朝、待ち合わせた店で八幡と川崎が会っていた。
「姉ちゃん!!」
「大志あんた……こんな時間に!!」
「それは姉ちゃんも一緒だろ!」
川崎大志と小町が来ていた。
「小町お前……」
「小町も気になっちゃって」
来たものはしょうがないと八幡は諦め
「まず確認なんだが……川崎のバイトの理由は学費関連だな?」
八幡が本題を話し始めると川崎は観念したかのように目を伏せ
「そうだよ、といっても夏期講習の分だけだけどね」
そして川崎は理由を話し始めた。といっても内容は複雑なものでは無く川崎大志を塾に通わせると姉の川崎が夏期講習などにいく余裕が家庭には無いと言うものだった。
「姉ちゃん…….」
「だから大志には言いたくなかった。で?あんたはどうしてくれるの?親が用意できなかったお金用意してくれるの?」
川崎は八幡にその気がなかったとはいえ、大切な弟である大志の前で理由の話をさせられイラだっていた。
「女連れてあんなとこに来る余裕がある人間に私の気持ちが分かる?分かるわけないよね!?」
その言い方に小町は怒鳴りそうになるが八幡に静止され
「お前の気持ちはわからないな。俺は塾とかに通うほど勉学に執着してないし」
ただ……と続け
「川崎が間違ったことをしているのはわかる」
「なに?未成年は夜働いたらいけませんとか言うつもり?お生憎様、そんなことは百も承知。でもそんなことを言ってられるほど世間は甘くないの」
そう言い返す川崎を八幡は冷めた目で見返すと
「とりあえず要件はこれを教えたかっただけだ」
八幡は1枚のチラシを渡す
「スカラ……シップ?」
「じゃあな、1度帰るぞ小町」
そう言い八幡は店を後にする。
「あの、大志くんのお姉さん。お兄ちゃんが1番言いたかったのは誰かに相談しろってことと家族に心配かけるなってことだと思います」
いつになく真面目に話す小町
「そのチラシ、塾で見たことありますし、総武は進学校だから誰かに相談すれば多分無理なバイトまではしなくて良かったんじゃないかなぁって……」
「あとこれからは大志くんとかにもちゃんと向き合ってあげてください。無茶してるのは分かるのに止められないのは下の家族としては辛いので……」
小町は一時期の八幡を思い出し
「それじゃさよならです!!」
そして小町も八幡を追いかけ出て行く。
「大志……ごめんね」
「次は相談してくれよな」
「そうするよ」
そのあと川崎姉弟も仲良く店をあとにした。