退屈しない異世界   作:醤油おいしい
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青年期
第十話


あれから数年が経ち、クリスタ国は大きな被害を被っていた。襲撃により村は壊滅、魔物により殺されたもの、連れ去られたものと国は疲弊していた。城の廊下を神妙な面持ちで歩く女性が一人、ため息を吐く。

「この数年で魔物の進行が多い。被害は拡大するばかり。どうにかしないと」

 頭を押さえながら目の前の扉をくぐる。中には数人が大きな机を挟み座っている。

「おぉ王女。待っていましたぞ」

中でも年老いた老人が席を立ち王女と呼ばれた女性を席へ招く。従者らしき者が椅子を引き、そこに腰かける。一息吐くと話し始める。

「此度は集まってくれたことを感謝する」

 周りを見回す。それぞれが神妙な面持ちで言葉を待つ。

「集まってもらったのはほかでもない。この国の現状とこれからの対策を話し合う」

「魔物の襲撃が多くなり、隣国との会談で協力を仰いだ。がどうやらこちらには力を貸さないようだ」

 周りは表情を緩めるが姫の一言でまた表情が硬くなる。被害はこの国だけでもなく他国でも魔物の進行が増えてきているようだった。

「とにかく。隣国の手助けは無いと思って。この国の兵力を強化しなければ」

「しかし戦えるものは少ない!どうやって兵力を強化するんだ!」

 会議は難航し、解決の糸口も見つからない。他の国に頼ろうとも現状を見れば手を貸すところもないだろう。我が国を守るのが手一杯だからだ。

「……異形のモノ。彼らに手を借りるしか」

「あんな得体のしれないモノに手を貸してもらうなどたまったものじゃない。後に何を要求されるかたまったものじゃない」

「話も通じるかどうか……」

 余計なことを言ってしまったと頭を抱える王女。混乱している時にふと一言、女性が大声を出す。

「隣国の王女は貴方の姉でしょ!?なんとかならなかったの?!」

「カレン!」

「あっ……」

 カレンと呼ばれた女性はしまったという表情で王女を見るが彼女は気にしていないといったようにつぶやく。

「あの人は姉であるけど血は繋がってないし助ける義理もないでしょう。本当の姉さんは」

 いえ、なんでもないわと言い、重い空気を振り切るように今後の計画を話す。

「とにかくこの国で戦えるものを集めましょう」

 これで会議は終わりと各自部屋から退出する。最後に出てきた王女は疲れたような表情で通路を歩き部屋に入る。

「これじゃあ子供の時の夢なんて叶えられないわね」

 自虐のように笑う。昔夢見た幸せに暮らせる国を作るという思いも今は儚い夢となってしまった。

「……とにかくこの国を建てなおさなきゃ」


・・・・・・・

 壊滅しかけている村に一人、フードを被った男が佇んでいる。男の足元には無数の魔物の死体。

「あと何匹だ……!」

 危険を感じ、すぐにその場を跳び離れる。先ほどまでいた場所には巨大な魔物、ハイオークが斧を振り下ろしていた。

「親玉か。……殺す」

 フードの男は右腕を鋭利な巨大な剣に変化させる。腰を低く落とし、一気に地面を駆ける。一瞬でハイオークとの距離を詰め、下から上へと切り上げる。

「浅かったか」

 ハイオークは斬られる寸前に体を捻るが深く体を抉られる。すぐに持っていた斧を男に振り下ろすが男は体を空中で捻りながら攻撃を回避。右腕のブレードで体を切り裂いた。

「はぁ、はぁ」

 男は息を切らしながら死んだと思われるハイオークを体から伸びた触手で吸収した。

「生存者は、いない、か」

 近くの木に腰を掛け、息を整える。取り込んだハイオークがウイルスによって体に廻られる感じがわかる。それと同時にハイオークの記憶が脳内に流れてきた。

「ここから先の洞窟、か。待ってろ」

 魔物の居場所を突き止め、重たい体を引きずりながら向かう。進んでいると喧騒が聞こえる。魔物の声と人の声だ。以上を察した男は一目散に駆けだす。

「っ!何者?!」

「助太刀する」

 男は落ちていた剣を拾い上げ向かってきた魔物を次々と葬る。型は滅茶苦茶ではあるが確実に相手を葬れるように剣を振り回す。

「これでっ!」

 下から振り上げた剣を一気に降ろすが、剣が折れる。

「くっ!」

 折れた剣を直ぐに捨て、目の前の魔物をすかさず膝蹴りを放つ。うまく鳩尾にめり込み、気絶させればよかったものの、威力が強すぎたのか、破裂したように上半身が吹き飛ぶ。

「あ」

 自分が進化種だったことをすっかり忘れていた。が、他の人が周りに居なかったのが幸いし、ばれずに済んだ。粗方片付き、一息つくと前から女性兵士がやってきた。

「加勢ありがとうございます」

「あ、いえ」

 目の前にやってきた女性兵士、水色の長い髪の毛を靡かせる。それに目を奪われた。見た目は男より少し上の年齢のように感じるが話してみるとどうやら同い年のようだ。

「助かりました。私はこの兵団の隊長をしているシオンと申します」

「あ、あぁ。俺はカイト。しがない旅人だ」

「私と同じ年で一人旅ですか。すごいですね」

「いや、隊長の君にはかなわないよ」

 他愛もない話をしているうちに二人は打ち解けてきた。シオンは急にまじめな表情になりカイトに尋ねる。

「今この国が魔物に襲われて衰退しているのは知っていますか?」

「ああ。それが?」

「我が国は兵力不足。よければあなたに私の隊に入ってほしいんですがどうでしょうか」

 是非ともその戦闘技術を私の隊で生かしてくれないかとのことだった。カイトは少し考えたがすぐに頭を振り、断る。

「すまない。俺はまだやることがあるんだ」

「やること、とは?あ、いえ。詮索するのは野暮ですね」

「だから今回は諦めてくれ」

「えぇ。今回は、ね」

 諦めていない様子に苦笑するカイト。

「まぁ手助けくらいはできると思うからその時は加勢するよ」

 そういい残しカイトは去っていった。



・・・・・・・・

「よって各地の国では魔物の対応に追われてるらしいです」

「はぁ。で、なんで僕にそれ報告するの?」

「いや、言った方が良いかなーなんて」

「いつにも増して適当だね腹パンさん」

「腹パンさんってなんですか!シーナって名前があるんですよ!」

 釣りをしながら適当に聞く亮二。シーナと名乗った女性は自分怒ってますよという風に言うが亮二はどこ吹く風と聞き流す。

「釣れてます?」

「いやぜんぜん。あ、そうだ。君たちって今どういう風に行動してるの?」

「……ほんと貴方って仲間の事把握してないですね。シスターは今でも学び舎を営みつつ魔物の迎撃。カイナさん率いる部隊は魔物の洞窟の殲滅」

「これだけ動いてても魔物の数が減らないってある意味凄いね」

 他にも各地に散らばった進化種が姿を隠しながら行動しているようだ。ただ進んで魔物を殲滅しているのはカイナ部隊だけだ。

「いいんじゃないの?それで。僕がとやかく言うことでもないでしょ」

「それとよく分からない人が一人。あんな男いましたっけ?魔物の洞窟を攻めてるみたいですど」

「あぁそれはカイトだ。数年前に進化種にしたやつだよ」

 たまにちょっかい出してるので他の仲間よりは行動を把握している。と言っても偶に見つけるてはちょっかいを出す。それだけなので何を思って行動しているのかは知らない。

「それと反逆者一人捕えています。後でついて来てもらってもいいですか?」

「あー、やっぱり出たか。うん。それは大変だ。行こうか」

 釣竿として使っていたウイルスの塊を体の中に仕舞い込み、シーナと共に飛び立つ。

「場所は?」

「ブリュースタークの地下に幽閉しています」

「そ。んじゃとっとと行きますか」

 亮二は姿を一般の兵士の姿に変える。

「あれ?姿変えるんですか?」

「顔見知りにエンカウントしたらめんどくさい」

「えんかうんと?」

「見つかったらめんどくさいってこと」

 あきれる表情を浮かべるシーナを無視し、町を目指す。数分間走りブリュースタークのある町に着き中へと入る。相変わらず賑わっているのを横目に奥に進むと地下につながる階段があり、そこを降りていく。

「この人です」

 腕を鎖でつながれている男が一人いた。亮二は姿を元に戻し近づく。

「さて、どうしたものかね」




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