[完結]師匠はヤムチャ!突然来たドラゴンボールの世界 作:ゆーこー
俺はとんだ大ウソつきものだ。生き残った人類にはセルは俺が倒したと宣言し、まるで国王かなにかのようになって人類復興を先導した。
産めよ増やせよと掲げ、俺もミネラとも子供を三人産んだ。
長男のコウ、次男のリョク、長女のムギ。三人とも小さいころから俺たちで修業をつけ、戦闘力五百相当には育ってくれた。みんな十歳にも満たないのによくやってくれている。
俺とトランクスは修業を交えつつ復興のためにその実を捧げた。一日二十二時間、残った時間で飯と睡眠を済ませた。
大して寝てもいないのに毎日うなされていた。もし、セルが明日突然地上に降りてきて世界を壊しに来たら。不安でたまらなかった。しかし俺の心配をよそに、セルは魔導士バビディが現れるその日まで大人しくしていた。
「ついにこの日が来たか……」
俺はトランクスを連れて神殿に向かった。
「ほぉ、トランクスにライアか。と、いうことは……魔人ブウが現れたということか」
「正確には魔人ブウを復活させようとする魔導士バビディがな」
「それを聞いて安心したぞ。さっき地球に降りてきたかすみたいな戦闘力ばかりの宇宙船に魔人ブウがいるのだとしたら、拍子抜けだからなぁ。
すっかり神様気取りか。なら俺たちがこの数年でかなり復興させたのも知っているはずだ。良くも悪くもおまえを倒すために何か目論んでいたりしなかったのも、本人が見ていただろう。
「貴様の家族や格闘教室のやつらは呼ばんのか?」
「やっぱりそれも見てたか。見てたならわかるだろう、みんなこの戦いにはついてこれない」
俺が次世代育成のために作った格闘教室、息子たちと一緒に希望者を育てていたが、一般上りは優秀な子でも戦闘力十程度だった。
「まぁいい、場所は私が確認済みだ。ついてこい、二人とも」
セルにつれられるという妙な形で奴らの宇宙船に向かった。
「な、なんだお前たちは‼」
「私の名はセル。魔人ブウとやらと戦うために来た」
「な、なぜ魔人ブウのことを」
「セル、魔人ブウは封印されたままなんだ。俺たちからエネルギーを集めてその力で復活させるってのがあいつらの魂胆さ」
「な、なんでそれまで…な、ならもう、お前たち‼ こいつらをぶちのめしちゃえ!」
現れたのはプイプイ、ヤコン、ダーブラを含めた兵士達。
「ふん、くだらん。トランクス、おまえがやれ」
セルはこんな雑魚とは相手したくないという様子でトランクスに丸投げした。
トランクスはスーパーサイヤ人になりダーブラ以外を一掃した。
ダーブラとトランクスの実力派拮抗していた。
「ちっ。ライア、貴様ら修業が足らんのではないか?」
「見てたんだろう、俺たちなりにやったのであれだ」
だがこれは、ブウと戦いたいセルにとっては都合がいいだろうな。拮抗した二人のエネルギーはブウに与えられていく。足りるのかは不安だったが足りてしまったようだ。
ぎりぎりトランクスが勝利すると、魔人ブウが姿を現した。
「おい、あのデブが魔人ブウか?」
セルは嘲ながら俺に尋ねる。俺はそうだと答えた。
「そうか、まあこうすれば本当にあいつがつよいかすぐにわかるがなぁ!」
セルはそういうといきなりかめはめ波を放った。突拍子もないことで宇宙船は消し飛び、バビディも巻き添え。ブウは粉々になった。
「おいっ! 粉々ではないか! ライア、貴様俺をだましたのか‼」
「あいつは再生する! お前以上にな‼」
「なに!?」
粉々になったブウはすでに元通りになっていた。そしてセルを敵とみなしたのか、襲い掛かってきた。
「ぶぅぉらぁ!?」
はやい、セルに体当たりして直撃を食らわせやがった。
「おもしろい、念のため修業しておいたが…ちょうどいいレベルだ」
そういうとセルもブウと同等まで気を上げてきた。あわよくば相打ちで終わってくれれば、この世界に平和が訪れるのだが。さすがにそう都合よくはいかないだろうか。
俺はしれっとトランクスを町まで送って戦闘に戻ってきたのだが、だんだんと町のほうに戦う場所がずれていっていた。
「おいセル‼ こっちは町だ! 反対に行ってくれ!」
「そんなことできるか! 五分五分の戦い、俺の中のサイヤ人の遺伝子が燃え上がる相手だ‼」
まずい、こうなったら町のみんなを遠くに逃がすしかない‼
「みんな、訳は聞かないでくれよ! 今すぐこの町から避難してくれ!」
みんな訳がわからないようだが、俺のことを信じて非難の準備を始めてくれた。
しかし、最悪なタイミングでセルが吹っ飛ばされてきた。みんながみているところにやってきたのだ。
「セルだぁぁ‼」「なぜセルが!?」「ライアさんがやっつけたんじゃないのかよ!」
町中大混乱だ。俺はやむを得ないと思いでっかい岩盤を切り抜きその上に町の人々を全員乗せて遠い町に連れて行った。
「ライアさん、どういうことだ。なぜセルがいるんだい」
「我々はこのことをしる権利があるはずだ。」
「そうだ、そしてお前には説明する義務があるはずだ」
話はdン戦する。整備しなおしたSNSにもこの話が拡散されていく。この間にもあいつらの戦いは続いていて、危険な状態なのに。
すべての嘘を、責任を、罪を受ける時が来たのだろうと思った。
俺は全国同時生配信でこのことにたいする説明を行った。
「皆様、現在セルが現れたと話題にになりかつての記憶が鮮明によみがえって苦しんでいる方もいると思います。この放送、どうか最後まで聞いてください。
まず初めに、セルはあのとき倒していません。今、一部の方が見たセルは本物です」
世界中が騒然とした。俺の家にいる家族の元にはこのことに怒りを表す人々が押し寄せていた。
「当時のわたしも、今の私もセルには勝てません。だがそのセルとほぼ互角の脅威が今この地球にやってきているのです。セルはそれと戦っています。我々のためではありません。楽しめる相手が現れたからです。今まで皆様に嘘をついていたことは許されることではないとわかっています。わたしはできる限りの責任を果たします。もう嘘はつきません。これから、セルを倒しに行きます」
放送はここで終えた。俺はセルの元に飛び立った。
畜生でもいい、秘境でもいい、人類のために魔人ブウもセルも今日、ここで終わらせる。
俺が戻ると、せっるの頭に血が上っているようだった。徐々に押され始め、プライドに傷がつき始めていた。
「ちくしょぉぉ‼ もうこんなものどうでもいい‼ この銀河事、消えてなくなっちまえぇぇ‼」
「待てセル‼」
「なんだライア‼ 貴様ごときが邪魔をするな」
自分が優位じゃないと結局満足できないセルというやつは厄介極まりない。
「一緒に戦う、ブウを消すぞ」
セルは考えたが、自分が最強でありたいという欲求に負けた。
「俺がチャンスを作る。ライア、貴様はその瞬間に飛び切りのかめはめ波を私と放て」
「OK」
セルは懸命にブウと戦った。腕が伸びたり身体に穴をあけて避けたりと規格外なことをするブウに翻弄されながらも、ついにチャンスをつかんだ。ブウの腹を蹴り飛ばし、空中に飛ばされる。
「いまだ‼」
「おぅ!セル‼」
セルが渾身のかめはめ波を放つ。ブウもあわてて対抗してかめはめ波をまねて放つ。そしてほぼ拮抗してた二人のパワーバランスを崩すのが、ブーストモード改の俺が放つ
「かめはめ波だぁぁぁぁ!」
俺のかめはめ波は、セルの背中に直撃した。
「なに!? ライア、貴様ぁ! ふざけるなぁぁ!」
「わりぃなセル。お前が思ったよりブウといい勝負するもんでな。こうでもしねぇとお前を殺せなかった」
「謀ったな‼ ライアぁぁぁ!」
「変わっちまったのさ、お前を殺すために。大嘘つきもののライアーにな」
「ち、ちくしょぉぉ‼」
セルは消滅した。自分を助けてくれたと思ったブウと仲良くなるのは難しくなかった。俺がここまで文明レベルを戻させたのもブウが満足するお菓子を作れるようにするためってのもある。
俺はブウが一緒にセルを倒したと説明し、基本的にこちらからなにかしない限りブウは悪さをしないと説明した。
こうして、この世界に一応の平和を手に入れたのだ。汚れるのは俺一人で済んだ。精一杯の一手だった。
「なぁ、これでよかったかい? ヤムチャ師匠」
俺は天に向かってそう呟いた。
「あの人もきっと認めてくれるよ、あなたは誰よりも優しい人。ライア、あなたは悪人を演じてでも人類を救ったのよ」
我が妻ミネラは優しくそう答えた。あの日以来、俺は人里離れた山で密かに家族と暮らしている。もう俺がいなくても人類の復興は安泰だ。邪魔するやつはいないし人と人とのつながりも強い。もし、人類同士で争うようなことがあったら、そのときは俺が悪魔にでもなってそれを終わらせにいくことがあるかもしれないがな。
まあ、その心配はいらないだろう。こんな俺の子供も学校で友達を作ってるんだからな。
数年後、ウィスと名乗る人が俺を訪ねてきた。なんともう一つの未来の俺が、俺をもとの世界に戻るために力を貸すようお願いしたらしい。最初疑ったが、そういえば昔、この世界に来る前のドラゴンボール神と神っていう映画が出る直前で、その中に目の前の人物が出ていたことをおぼろげながら思い出し信じてみることにした。
結果は本当だった。もう一つの未来でもブウには苦戦したんだなと驚いたぜ。
最初はちっぽけな存在だったはずなのに、気が付いたらこの世界の、ドラゴンボールの正史を大きく変えちまう存在になるなんて正直思わなかった。
つらいことも多かったが、いい思い出だぜ。これから俺はまたひとりのちっぽけな一般人に戻るんだな。だがこわかねぇ。こんな地獄を経験した俺が今更怖気づくもんか。ありがとよ、ドラゴンボール。ありがとう、ヤムチャ師匠。