LOCATION:讃州中学校、勇者部部室
南一局一本場。親は再び樹。ドラ{北}
友奈「{七}」
樹「チー!」{横七八九}
友奈「(チー?となると樹ちゃんの狙いは萬子のホンイツかチンイツ…)」
東郷「(チャンタや三色の可能性もあるわ。でも、ドラ抱えでもしない限りそのままでは安い…連荘目的のようね…)」
夏凜「(どちらにしろ、今の流れは樹にある…流れが去るまで、私はディフェンスに徹する…!)」
樹「(さぁ、ダメ押しっス…!)」
樹のこの鳴きにより、樹は他家から萬子を縛る。
流れに乗りそうな樹に、みな警戒しているのだ。そうして牌を絞らせておいて…
夏凜「{④}」
樹「ポン!」{④④横④}
夏凜「(萬子鳴きからの筒子鳴き?)」
東郷「(これでホンイツ、チャンタも消えた…一体何を考えているの?)」
次巡
樹「カン!」{■北北■} 新ドラ{3}
3人「(ドラ4…!)」
夏凜「(ドラを4つ手中で揃えるなんて…とんだ強運ね…でも、これで樹の狙いはハッキリした…樹はきっと翻牌抱え…つまり、{白・發・中}のどれか3つを暗刻で抱えてのドラ4!
ここまで鳴いているんだから、あがりへの切符はすでに確定していると見るのが自然…さっきのように単騎待ちになっている場合、現物か4枚目以外の牌は切れない…3鳴きの手に振り込むなんて最悪…!)」
次巡
東郷「{8}」
樹「カン!」{8横888} 新ドラ{⑤}
東郷「(またカン…)」
樹は嶺上牌を引き、手中の{④}をカン。
樹「カン!」{④④④横④} 新ドラ{西}
3人「(三槓子…!?)」
このカンによって樹は『三槓子』を確定させる。
樹、三槓子ドラ4裸単騎。
{■} カン{④④④横④}{8横888}{■北北■} チー{横七八九}
夏凜「(なんて麻雀よ…跳満まであるじゃない…ここは、降りね…)」
友奈「(こんな役、計算外だよ…うう…現物…)」
樹「(案の定ベタオリか…現物が無くなったときが見ものだぜ…)」
数巡後
友奈「(現物が切れた…樹ちゃん、何で待っているのかな?樹ちゃんが最後に切った{1}…あれは場に1枚も出ていない牌。ツモあがるには最高の牌だよね…それを切ったということは、私たちからの…ロン狙い…?じゃあ、狙われやすい字牌は切れない…むしろ、こっちの索子か筒子の方が…)」
考えれば考えるほど、術中に嵌まる。
勝負から降りる際に彼女らが考えること。それは手中にある対子(2つ)か暗刻(3つ)落とし。
これなら一度の危険で2~3巡安全が買える。
しかし、それこそが樹の狙い。
{④}がカンされ、{③・⑤}は巡子が構成されにくい。
同じ理由で{8}の側、{7・9}も捨てられる可能性がある。そこを狙い撃つ。
もともと単騎待ちを避ける絶対の保証など、ありはしない。
樹の洞察力が牌を引き寄せるのか?それともまったく別な悪魔の仕業か?
切ってしまう…魅入られたように…
友奈「…{③}」
樹「………」
友奈「(通った…!)」
樹「お姉ちゃん…」
風「ん?ああ、それよ」
樹「ロン、三槓子ドラ4、跳満。一本場で18300点」
{③} カン{④④④横④}{8横888}{■北北■} チー{横七八九} ロン{③} ドラ{北}
友奈「くぅ~っ…」
風「親で逆転トップなんて!さすがアタシの妹ー!」
東郷「………」
一位樹47300点、二位東郷35000点、三位夏凜15000点、四位友奈2700点。
樹は二位の東郷と10000点以上差をつけてのリード。
風が吹き始めていた。(風先輩のことではない)
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風「これは案外…初心者の樹が決めてしまうかもね」
園子「いや~わかりませんよ。まだわっしーはイッつんに一度も振り込んでいないから~…わっしーの親満貫ツモで逆転もあり得ますよ~」
風「それもそうね。なんにせよ、樹の親連荘を含めてあと最低4ゲーム…どう転ぶかわからないわね」
園子「そうですね~今のところ流れはイッつんにありますから、この親でどこまで突っ走れるか…といったことろでしょうか~わっしーはもちろんですが、三位、四位のゆーゆ、にぼっしーにも頑張ってもらいたいところですね~」
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南一局二本場。ドラ{1}
樹「{中}」
東郷「ポン」{中横中中}
友奈「{6}」
東郷「もちのロン、中のみ。二本場で1600点」
{②③④⑤⑤三四五45} ポン{中横中中} ロン{6} ドラなし
樹の流れに危険を感じた東郷、安手で樹の親を蹴る。
友奈はさらに最悪。このロンで点棒は1100点を残すのみとなった。
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一位樹47300点、二位東郷36600点、三位夏凜15000点、四位友奈1100点。
南二局。親は夏凜。ドラ{⑤}
夏凜「(…トップとの点差は32300点…樹を抜くには、跳満直撃…それか満貫跳満ツモを1回ずつしないと逆転できない計算…なんとしてもこの親で稼がないと…!)」
今のところ、点数的には樹か東郷…その2人が新部長の椅子へ駆け上がろうとしていた。
しかし夏凜、そこは突っ走る。
夏凜「(よし!配牌は死んでいない…来てるわ!こいっ…こいっ…!)」
10巡目、夏凜テンパイ。
索子のホンイツ一通中、{3}-{6}-{9}待ち。
{12345678中中中北北}
夏凜「(来たっ…!満貫確定!高めの{9}が出れば跳満…!)」
東郷「リーチ!」
夏凜「(うっ…東郷もテンパイ…捨て牌からして、待ちは筒子辺り…?)」
次巡
友奈「{9}」
夏凜「(や、やった…!私のロン牌…!)」
が、夏凜…あがれない。
なぜなら、もしここで夏凜がロンをしてしまえば18000点のあがり。
残り1100点の友奈はとび、自動的に勝負が終了してしまうからである。
牌を倒したとしても、夏凜の点棒は15000点から18000点プラスされ33000点。
完全勝利…トップにはなれない…!
夏凜「(…友奈の捨て牌ではあがれないわ…リーチした東郷はともかく、樹は東郷のリーチを受けてベタオリの気配…この手、あがれるのはツモか、東郷の直撃のみ…!)」
しかし、このとき夏凜は気付いていなかった。
夏凜「(ここで私があがれば…!ツモ…!来た!高めの{9}!跳満ツモ…!)」
{12345678中中中北北} ツモ{9} ドラなし
…ここで夏凜、気付く。この手、またしてもあがれない。
なぜなら、親の跳満ツモは6000点オール。残り1100点の友奈はとぶ。
夏凜「(くっ…せっかくの跳満の手をあがれないなんて…!なら、ここは待ちを変えて…あっ…待って…もしこの局で東郷が満貫以上をツモることがあれば、子の友奈は2000点払いでとぶ…いや、友奈が東郷に打ち込む可能性もあるわ…そうなれば、有無を言わずに東郷のトップが確定…なんてことや…)」
そう…気が付けば状況はすでに最悪であった。
跳満見逃しどころではない。待ちを変えるか、友奈をとばさないよう自分のテンパイを崩して東郷のリーチに振り込まなければいけない状況。
すべてが遅すぎた…!
夏凜「(東郷がツモらないのを祈るしかないわ…残り数巡だし、とりあえず今はテンパイ維持…)」
だが幸運にも、この夏凜の思考は結局杞憂に終わる。
東郷もツモれず、友奈、樹も打ち込まない。
東郷「流局…テンパイです」
友奈「テンパイだよ」
夏凜「テンパイよ…」
樹「ノーテンっス」
夏凜「(友奈と東郷も索子待ち…2人の待ちを、私が握り潰した形だったのね…)」
流局…東郷、友奈、夏凜テンパイ。
ノーテン罰符により、樹は1000点をそれぞれに支払う。
この時点で一位樹44300点、二位東郷36600点、三位夏凜16000点、四位友奈2100点。
(東郷のリーチ棒1000点据え置き)
樹か東郷…このどちらかが跳満をツモると友奈がとび、あがった者のトップが確定するという状況。
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南二局一本場。再び夏凜の親。ドラ{②}
夏凜「(うっ…配牌は微妙ね…ツモもいまいち…)」
夏凜、ここに来てなかなか手が伸びない。
前局の悪い流れを引き継いでいる様子。
ここで友奈、動く。
夏凜「{白}」
友奈「ポン!」{白横白白}
樹「{7}」
友奈「ロン!白ドラ3、一本場で8000点」
{②②②③③七八九56} ポン{白横白白} ロン{7} ドラ{②}
わずか4巡。友奈、電光石火の早あがり。このあがりで友奈は追加8000点。
さらに前局の東郷のリーチ棒1000点も加算され点棒は11100点にまで回復。
ひとまずツモられたら即とぶという状況からは抜け出す。
一方樹の点棒は36300点にまで減少。わずかながら東郷を下回る。
東郷「(くっくっくっ…よし!)」
今の樹に流れはない…そう確信した東郷。
友奈のあがりによって夏凜の親は流れ、次親は東郷。この瞬間から東郷の麻雀が動き出す。
東郷「(樹ちゃん…悪いけど今あなたに流れはないわ…さっき友奈ちゃんに8000点を振った…それが分岐点よ…そして舞い降りた私の親…それにこの配牌…行けるわ!絶対に…勝つ!)」
第三話、完