防衛大学校の劣等生   作:諸々

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01-08 午後の試合 解説

「ダイジェストをお届けしました。

見逃した方、もう一度見たい方、ご安心ください共に満足されたと思いますよ。

午前の試合は一対一が3組別々に行われるという形式でしたが、午後はまさに団体戦でしたね。

ですのでまずは各々の陣営の当初の作戦をお聞かせ願います、まずは真由美さん側からどうぞ。」とMC。

「では始めます、こちらの作戦はほのか先輩の光魔法で相手を俯瞰して索敵。

次にモノリス付近にいるであろうディフェンス役を真由美先輩の魔弾の射手で無力化します。

3対2にして深雪先輩をほのか先輩と雫先輩で、もう一人を真由美先輩で対処する予定でした。」と賢人。

賢明にも相手をぼかして解説する。

「こっちはそれを読んでいたぞ、2対3に見せかけて勝利だ。」と前田。

「初めに真由美さんの陣営の上空が変だったのは光魔法のせいだったんですね。」とMC。

「それについては疑問が有る、真由美嬢はマルチスコープを持っている事で有名だが、何故それを使わないんだ?」と前田。

「それに関しては一言だけ、『酔う』、だそうです。」そう言って賢人は目の前のカメラを左右に素早く振った。

「…なるほど。」と前田。

「……撮影機材に安易に触れないようにお願いしますね。

前田校長、もう少し解説をお願いします。」とMC。

「では、2対3になった時点で深雪嬢が上空にニブルヘイムを発動した。

これによりフィールドは極寒に、だから他の二人は極地仕様だったわけだ。」と前田。

「寒さで相手選手の行動力を奪う訳ですね。」とMC。

「それだけじゃない、真由美嬢の使うドライアイス弾への妨害も入っているぞ。」

「???どういう事ですか?」とMC。

「ドライアイス弾は空気中の二酸化炭素を集め、冷却して造っている。

その際に除いた熱エネルギーを運動エネルギーに換えているんだ。

だが元の空気の温度が低ければ運動エネルギーに換えることが出来ない。

その結果スピードは出ず、彼女でも避けることが出来たわけだ。」と前田。

「それか!なぜか真由美先輩の弾のスピードが出なかったのは。

CADの調整ミスか!と思ってましたよ。」と賢人。

「寒さで行動阻害、おまけに攻撃手段まで封じたと、それで魔法力に問題のあった彼女でも1対1で拮抗出来たわけですね。

では2対1の方をもう少し詳しくお願いします。

まずほのかさん側から、それと実行できなかった部分についてもお願いしますね。」とMC。

「こちらの作戦はまず相手の出方を探る事から始めました、『敵を知る』という事ですね。

予定では相手は実質二人と思っていたんでディフェンスラインを上げてくると推定しました。

何かあったらリカバーが可能ですから。

ほのか先輩の幻影魔法で深雪先輩を翻弄して、雫先輩をモノリスの下へ。

雫先輩の長所を生かして、あらゆる振動を抑制し秘密裏に接近する予定でした。

モノリスが開いたら、雫先輩は目視で、ほのか先輩は光の屈折魔法で、真由美先輩はマルチスコープでコードを打ち込むはずでした。

その時は3対2なっているはずでしたから、誰かは必ずフリーになっているのですから。」と賢人。

「なるほど、二人も遠隔視能力者がいますからね、三人の内誰かがコードを打ち込めば勝ちですからね。

作戦としては非常に良く考えられていますね。」とMC。

「ほう、画面を見る限り偽装は完璧だったが少々詰めが甘かったな。

後ろを振り返る余裕が有れば結果は変わったかもしれん、雪降る中で足跡が無いのは流石に分かってしまうな。

上空でのニブルヘイムでバトルフィールドを制す、いわば『深雪の世界』と言ったところか。

もちろん上空での発動なのでレギュレーション違反ではないぞ。」と前田。

「その後ほのか先輩の体温を下げて止めたんですね。

ほのか先輩をターゲットにしたのはたまたまですか?

もしあれが雫先輩だったら常時発動していた魔法でキャンセル出来たはずなのに。」と賢人。

「もちろん深雪嬢が狙ったのは幻影魔法を使ってくるはずのほのか嬢だ。

目で見た物が信用できないのは厄介すぎるからな。

二人は歩幅が明らかに違うからな、分かりやすいだろう事も考慮してだ。」と前田。

「ではそちらはほぼ予想通りという事でしょうか?」とMC。

「正しくは想定の内の一つ、だな。

中々に高度な戦術だった、良い試合を見させてもらって満足だ。」と前田。

「では今回のMVPである渡辺摩利さんについて語ってもらいましょうか。」とMC。

「入れ替わっている事に結局こちらは最後まで気が付きませんでしたよ。

姿を隠して登場しましたけど深雪先輩がフィールド全体を冷気で覆った時には納得しましたからね。

ですが最後のあの姿はちょっと僕には恥ずかしいです。」顔を真っ赤にしながら賢人は言った。

「いや、あれはカッコいいだろう。

時にあの足は防衛大学校でよく鍛えられたイイ筋肉をしているな。

隅々まで申し分ない、まさに脚線美と言う奴だろう。」と前田。

「では最後に渡辺真理選手映像をモノリス上部の360度カメラの映像でお楽しみ下さい。」とMC。

 

試合開始直後に一人の選手がモノリス裏の茂みへ身を隠す。

ちらちらとときおり周囲を警戒するそぶりを見せていたが、突然倒れ動かなくなる。

やがて空を雲が覆い始め真由美嬢の射撃音が聞こえると突然倒れたはずの選手が動き出す。

寒冷地仕様の服を脱ぎ、まだそこに選手が倒れているように装ってからフィールドを回り込むように走り出す。

ここで画面が別のモノリス上部の切り替わる。

遮る者のいない林を信じられないほどのスピードで駆け込んでくる選手、無粋なヘルメットが非常にアンバランスに見える。

そして林の中から選手が飛び出しモノリスに鍵を打ち込む。

モノリスが開き、その前で選手がコードを打ち込んでいる。

試合就労のサイレン、選手がヘルメット一式を脱ぎジャンプして勝利を喜んだ。

このシーンが色々な角度で繰り返し再生される、渡辺摩利の引き締まりすらりと伸びた足が美しく映えた。

色々な角度で摩利の姿を映し出す、最後に正面からの止めの映像で終わった。

 

 

注記

渡辺摩利はこの時点で防衛大学校に入ってほぼ2年が経過しています。

その為思考は軍人のそれになっています、もはや一般人の羞恥心とはかけ離れている訳です。

それを踏まえて競技は早春、寒冷化したとはいえマイナス50度以下に耐えられる服はかなり熱い。

流石の摩利でもその中に平服を重ね着するのは耐え難かったのだった。

では何を着ていたのか、それはボディーラインがハッキリわかるほどの極薄のインナー。

手足の動きを極力妨げない機能的なデザイン、ハッキリ言うと100年前にはやったハイレグレオタードだ。

寒冷化と共に肌の露出が無くなった現代(気候の回復と共に徐々に変化は始まっているが)

それはかなりのインパクトを持っていた。(ツイギーのミニスカート並の衝撃か?)

それとモノリスコードと言う競技が軍の作戦に近い事から摩利は羞恥心なくガッツポーズをカメラに曝した。

だだいわゆる下着ではない、だが摩利の鍛えられた足はハイレグとの親和性は最大だ。

ちなみにいわゆる”オタク”より”お姉さま!”の方が多かったことは内緒だ。

 




これが旧作の流れを整理した物になります。
途中原作20巻、南海騒擾編が入った事により大幅な修正を余儀なくされてしまいました。
なんとか辻褄を合わせたつもりですがどうでしたか?
原作に比べると大人が動いています。(動機はどうあれ、結果はあれかも知れないが)
弘一は二人の沖縄行きにチョッカイをかけてきますし、十師族嫌いの沖縄軍は二人が沖縄で活躍するのを認めませんでした。
その結果、大亜連合はつまり外国は二人を直接のターゲットにはしませんでした。
そして潮は達也に説得されるも諦める事無く魔法師を援護する方法を模索し続けました。
こういう無理っぽい展開もあるかもしれない、と思っていただけたら幸いです。

ここでこの物語はしばらく休止します。
まああまり人気が無いようだから良いよね。

ニ〇コイと言うよりしゅ〇ばら的な展開を考えていたんですが、どうも防衛大学校では展開が難しいかなと考えています。

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