「では打ち合わせの通りに。」と青のカチューシャを頭に付けた深雪が言った。
今回新設された女子特別ルールにより頭部への直接攻撃は反則になる。
なので見栄えの悪く煩わしいヘルメットを付ける必要はない、と言うよりせっかくの美人が見えないからなのだが。
ただしヘルメットを着用しない場合は代わりのアクセサリーを付けて、それを取られたらリタイア扱いとなる。
今回は深雪、真由美、雫、ほのかが装着している。(深雪以外は赤色)
残りの二人、摩利と慶子は耐寒装備(極地戦使用)をしている。
具体的にはモコモコの服、ヘルメット、遮光ゴーグル、寒冷地用マスクでほとんど外気に肌が触れないようになっている。
ちなみに摩利と慶子は二人とも小通連を手に持っているので外見からは見分けがつかない。
その内の一人はモノリスの裏の茂みに身を隠し、残り一人は深雪と共に二手に分かれて相手陣営へゆっくりと近づいて行く。
一方真由美陣営はモノリス前で円陣を組み上を見上げて話し合っている。
よく見ると上方の景色が少し歪んで見えている。
「いました、事前の予想通り小早川さんはモノリスの裏の草むらの陰にいます、残りの二人は別れて向かってきます。」とほのか。
「予想通りね、狙撃する居場所を教えて。」と真由美。
真由美がCADを操作するとモノリス裏の選手が倒れる、魔弾の射手で狙撃した様だ。
背中側から撃ったので草むらに頭から突っ込み足だけが草むらから出ている状態だ、少し待ってもピクリとも動かない。
「よし上手く無力化できたみたい、じゃあ二人は深雪さんをお願いね、私は摩利を抑えるから。」と言って真由美は駆け出す。
ほのかと雫は頷き合って真由美に続いた。
深雪は1/3ほど進むとCADを操作し立ち止まった。
すると上空に雲が湧き起こり、やがて白いものが舞い降りてくる。
この時倒れた選手が寒さの為かピクリと体を動かした。
最初に接敵したのは真由美だった。
対戦相手は不規則に方向を変えながら小走りで近づいてくる。
真由美は相手を目視できるまで近づくと立ち止まりCADを操作した。
白い弾が対戦相手を襲うが、やすやすと避けられる。
「おかしいわね、スピードが出ない。」と真由美がつぶやく。
立ち位置を変えて更に攻撃するが同じく躱され真由美は首を傾げている。
そこへ空から白いものが降ってくる、真由美はぶるっと体を震わせる。
「はっ、そういう事。」空を見上げて真由美は言った。
慌てて相手に近づく真由美。
その時、小通連の刃が真由美を襲う。
咄嗟に避けた真由美だったがその動作に小首をかしげた。
「摩利にしては動きが違う気がするけど防衛大学校に入って二年、高校時代の事は当てにできないか。」そう呟く真由美。
だがぐずぐずしていれば突破されてしまう。
「考えている場合じゃない、当たらないなら考え方を変えるまでよ。」
己を奮い立たせるように真由美は叫んだ。
相手の進路を妨害するように弾を撃つ、魔弾の射手も併用する事でやっと妨害する事に成功した。
そしてそれからは一進一退の攻防が繰り広げられたのだった。
画面が切り替わりモニターではほのかと雫が接近している様子が映っている。
気温低下によりほのかは少し寒そうに見える。
深雪についているカメラだ、CADを操作しているのが見える。
モニターに映っている二人とは別の場所に風が吹いた、するとそこにほのかが突然現れる。
同時に雫の姿も別の場所に現れる。
ほのかは凍り付いたように動かないが、雫はその場を飛びのく。
「何故?」と雫。
深雪は雫たちの後ろを指さす。
そこには空から降って来たもので白くなり始めたフィールドにうっすらと足跡が有った。
明確な歩幅の差がほのかと雫、二人を分けたのだ。
「ちっ。」雫は舌打ちしてさらに後退しながら回り込もうとする。
「深雪に勝つ必要はない。」雫はそう呟いた。
深雪はほのかに近づきカチューシャを取って言った。
「その通りね。」
深雪はCADを操作、突風が巻き起こり雫はバランスを崩し方向を変えたが、ほのかの様には動きは止まらない。
何故か雫は深雪の風を受けて動きが止まるもすぐに再起動を果たしている。
その後は終了のサイレンが鳴るまで雫が突進をするたびに同じ事が繰り返された。
フィールドでは膠着状態が続いたが、突然真由美側のモノリスが轟音を立てて開いた。
程なくして終了のサイレンが鳴り響く。
カメラが切り替わりモノリス前にいた選手がヘルメットを脱ぎその場でジャンプ、勝利の雄たけびを上げた。
「なんで?じゃあそこで倒れているのは誰?」茫然と呟く真由美。
勝負は深雪側の勝利で幕を閉じた。
ちなみに後にコンテンツ化された時、この選手のジャンプのシーンが再生回数ベスト1だった。
ジャンプシーンの謎は次回明らかに。