防衛大学校の劣等生   作:諸々

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01-03 モノリス一校前の解説とモノリス三校前

「一校前の攻防を見ていただきました。

互角の戦いと言ったところでしょうか。」とMC。

「三校側の方がHIT数は多かったが?」と前田。

「HIT数はもともとオフェンス側が有利では?

モノリスも開いていないですしディフェンス側のレオ先輩が優勢ですよ、」と賢人

「それらも考慮して引き分けで良いんではないでしょうか、エキシビジョンですし厳密な事は抜きで。

それよりも解説をお願いします前田校長。

まずは仕掛けた時の事からお願いします、賢人さんも不明点は遠慮なく指摘してくださいね。」

「では、とは言え普通に索敵して攻撃してそれに紛れる形で塹壕を掘っただけなんだが。」と前田が言いかけた。

「ちょっと待ってください、三校オフェンス側はレオ先輩は見えなかったはずです。

それでどうして攻撃できたんですか?」と賢人が割り込んだ。

「そうか、そうだったな一校とは実習カリキュラムが違うんだったか。

我が三校では実戦を重視している。

だから障害物越しに魔法を当てる事も標準で実習している、見えない相手に対して魔法を当てるのは我が校では常識だ。

ここは国際ライセンスを重視している一校と違う所だな。

この様にわが校では卒業後に役立つ教育を受けられるのだ。……」

この後数分三校の宣伝が続いた。

「ま、まあその位で」とMC。

「うむ、今年の受験は四校では無くうちが割を食ったからついな。

この催しに全面的に協力したんだから少しぐらい良いだろう!」

一校で達也の活躍により魔工科新設され受験者が殺到したのは原作にも書かれている。

だが中学卒業者がいきなり増えるはずはなく、どこかが割を食った形になるのは当たり前の事。

どこが受験者数を減少させたのか?それは四校だった。

一校と距離が近く魔法の技術に特化しているのだから魔工科と競合するのは当たり前だった。

この事態に危機感を抱いた四校は今まで万年最下位の九校戦に目を付けたのだ。

達也が技術力で優勝に導いたのだから自分たちも出来るはずという訳だ。

で誰も注目していなかった四校は去年の九校戦で三校を抑えてまさかの二位、今年の受験者数を見事回復させたのだった。

では今年割を食った所はどこか?それが三校だったのだ。

技術力で九校戦が優位に戦えるなら、わざわざ尚武の三校に行く必要が薄れてしまったのだ。

魔法科高校卒業生全員が軍に入る訳では無い、実戦的な訓練が全員必ずしも重要ではないのだ。

「…ではあの塹壕?とおかしな機動を解説してください。」と賢人。

「あああれか、あれは山津波の応用で地面に溝を掘っただけだ。

深さは30cmほどだから一瞬だな。

機動の方も単純だ、肘と膝の摩擦を減少させて地面を滑っているだけだ。

足裏で地面をけって進む、慣れれば自転車並みのスピードが出せるぞ。」と前田。

「…塹壕掘りと匍匐前進は陸軍の花(重労働)だったんじゃあ…」と賢人。

「ああ、そんな古臭い概念を今の学生も持っているのか?情けない。

時速数百メートルの匍匐なんぞ魔法にとっては良い的でしかないぞ。

それにスコップでの塹壕堀は最低でも一週間はかかる、『兵は拙速を重んじる』と言う言葉を知らんのか?」

「…まさかそれを上官に言わなかったですよね?」とMC。

「もちろん言ったぞ。

それだけじゃないぞ、一人で一個小隊をぶっ飛ばして証明してやったよ。」

「文句は出なかったんですか?」と賢人。

「ぐちぐち言う奴はいたが実績がすべてだ。

ただその後セクハラが酷くなって軍を辞めだがな。」

MCと賢人は何とも言えない表情をしている。

「…では気を取り直して次に行きましょう。

この後反撃は不発になりましたね、何故か地面に引っかかって止まってしまいました。

これは三校側、ラッキーでしたね。」

「それは違うぞ、あいつは小通連が発売された時に真っ先に手に入れて色々研究していた。

前回一撃で倒された事をずっと悔やんでいたからな。

あの小通連は術の途中で距離を変えることが出来ない、つまり術者を中心に基本円運動しかできないのだよ。

だから円ではなく直線を組み合わせて四角に、全周だと八角形に溝を掘ったんだ。」

「なるほど、あれも作戦だったんですね。

ではその後三校の選手が飛んだもののダメージが無かったのも摩擦を軽減していたからなんですね?」

前田校長が鷹揚に頷く。

「でお返しとばかりディフェンス側を吹き飛ばしたと。」

「それに合わせてモノリスに魔法を打ち込むはずだったがそれはさすがに阻止されてしまったようだがな。」

「レオ先輩でなかったらモノリスに魔法を打ち込まれてしまったでしょうね。」と賢人。

「この後はお互いに有効打が無く時間切れになったわけですね。

では簡単ですが一校モノリス前の攻防の開設を終わります。

次は三校モノリス前、すぐに始まる予定です。画面前でお待ちください。」

 

 

 

三校モノリスを霧が徐々に包んでゆく。

但し魔法の効率の関係か地上数メートルの範囲にとどまっている様に見える。

「三校ディフェンスの姿が見えない、罠かも知れないが行くしかない。」

霧の密度が十分に濃くなったんだろう、オフェンス側が駆け出した。

当然だが一校オフェンス側は霧の密度が薄いため大した苦労もなく進んで行く。

だが突然体制を崩し転倒した。

この時三校側の選手の視線カメラへ画面が切り替わる、画像からは選手の位置がよく分からない。

画面からは高い所にいる様だが下は霧の薄い所が地面が透けて見える程度で、オフェンス側の一高生は良く見えていない。

ここで両選手の視線カメラの2画面表示になる。

オフェンス側の画面では周囲の下草が揺れている、攻撃を受けているのは明白だ。

画面が不自然に揺らぐ、前回同様に幻術が発動してたが効果を強めたようだ。

だが攻撃は当たっている、画面が揺らぎスピードが遅くなった。

盾にするためか近くの木陰に足を引きずり逃げ込む。

「何故だ、幻術も発動しているし情報強化もかけているのに攻撃を防げない。

それにどこにいる?霧の中なら分かるはずなのに。」つぶやきをマイクが拾う。

霧が濃いと不利だと思ったのか霧が薄くなっていく、しばらくして事態が動く。

「見つけた、だけどなんでそんな所に。」

視線が空の一点を指し示す。

空の一点にわずかに違和感がある、青色の何かが浮かんでいてその上に選手がいる様だ。

それに向けて雷童子を放つ、選手が慌てて飛び降りる。

それと共にひらひらと何かが落ちてくる、それは空色のマントだった。

それを隠れ蓑にして空に紛れていたようだ。

地面に落ちる前にマントは回収される。

突然風が吹き荒れ薄くなっていた霧を払ってしまう。

オフェンス側は木の上へ上がるがディフェンス側は動き回っているようだ。

再び霧が辺りを覆うがモノリス周りは何故か霧に覆われない。

「古式は底が知れない、僕の役目はモノリスを守ること。

終了まであと少し、将輝、後は頼んだよ。」

ディフェンス側はこの間にまた空に上がった様だ。

「随分高くまで登ったな、こちらから攻撃するには高すぎる。

あれが飛行魔法なら時間制限がある、降りてきた所を迎撃しよう。」

「さすがにこの高度じゃあ動いてないと判別できないか。

まあ良い、このまま動きが無ければ僕の勝ちだ。

この魔法は苦しいが何とか持つだろう、ガンバレ俺。」

数分が過ぎそろそろ残り時間が気になりだした頃、オフェンス側が動いた。

「降りてこない…、カーディナルジョージなら別の方法を考えてもおかしくないか。

だけどもう一発足にあの魔法を受けたら僕はもう動けない。

魔法力がギリギリだが風を読めばなんとかなるか。」

雷が上空で発生する、だが当然の如く届かない。

だが連続して発生すると、前の雷の道を通り上へ上へと伸びていく。

上空の選手は慌てるように避けようとしていたが竜が昇るがごとく雷が昇り届く。

選手が空から落ちてくる、辛うじて落下スピードを軽減できたようだが動く気配はない。

それを見てオフェンス側の選手が動き出す。

落ちた選手をちらっと見て走り出す。

怪我をしているのか足を引きずってモノリスへ。

時々倒れた選手を気にしながら近くへ行きCADを構えたその時、突然前のめりに倒れる。

「やった…、守り切ったぞ。」そう呟きディフェンス側も倒れた。

 


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