四葉が通達を出したのと同じころ、千葉家でも新年の挨拶が行われていた。
千葉一族とその高弟が一堂に集まっている。
今年はいろいろと変わった点がある、当主以外ピリピリした雰囲気になっている。
そしてこれまでははいなかったエリカが前面にに出ている、長子の二人がああなってしまったから。
高弟の一部は修次に強い不満を持っているのだ、今は当主の言葉を待っている状態だ。
みんなで一礼の後、まさに当主が口を開こうとした時エリカが爆弾発言をした。
エルンストと会談の後、あの彼女を千葉家で引き取った。
(ホームステイの外国からの留学生と言う扱いだ。)
奴が示した保険を受け入れた形だ。
あれから深雪の動向を詳しく観察した、時におせっかいになるかもとレオに言われるほど密着した。
それで確信した事はやはり深雪と達也の間には何か深い溝が出来たのだろう。
だが不思議な事に対立している訳では無い、ミキやレオなんかは違和感を感じていない様だ。
(立場の違いや進学などに伴っての変化に過ぎないと言っている。)
エリカは深雪と同じ所に進学を決めた、入学条件が変わった事が功を奏した形だ。
これで最低限の環境は整った、そうなると気になるのは足元の事。
あの行き遅れが家を出て行って初めは清々したのだが流石は達也君、トラブルをきっちり残して行った。
自業自得なのかもしれないが次兄上の様子がさらにおかしくなった。
後輩や弟子たちには目もくれず一人何かをしている。
達也君との勝負に負けた事は高弟たちの間では公然の秘密になっている。
私の所にも色々相談に来る人が増えてきた、大半は次兄上は千葉家に合っていないんじゃないかと言う意見だ。
確かに次兄上はこれまで形にとらわれない事が売りだった、武蔵の剣の様に人に教える事が困難な物だと。
この意見には私も頷かざるを得なかった、無理しているのが痛々しい。
そして私自身の件だ、千葉家を出てただのエリカになる、と去年までは思っていた。
だが近い将来襲ってくる災悪を考えると千葉家を出るのは得策とは言えなくなった。
千葉家の力は国家に深く結びついている、国家間の問題になっても介入できる。
「よし決めた。」、エリカは自身に気合を入れるため口に出して言った。
修次は達也に負けてから心休まる時は無かった。
体を治して(完治には一か月近くかかった。)技を磨いた、だがあの男に勝つイメージが沸くことは無かった。
だが修次にはもはやあの男に勝ち、そして千葉家当主になる以外に道はない、そう感じていた。
負けたままでは済まされない、勝って摩利と一緒に当主にならねばならない、そう強く思っていた。
エリカの話に当主の丈一郎は破顔して言った。
「面白い、では当主の座はあの男を先に負かした方にする。
互いに精進して当主の座をつかみ取れ。」
高弟たちの前でそう宣言した。
これでエリカの思いとは逆に修次はさらに追い込まれることになった。
北山潮はとある人物と会っていた。
とある個人的な買い物の最終確認のためだ。
「性能はどうでしたか?」
「特に問題は無かった、こちらの要望通りになっている。」と潮。
「体形の変更は今後も可能となっております。肝心のスピードはどうでしょうかね?」
「こちらでのテストでも十分な性能をしているし装備に関しても人間用で問題ない。」
「それは良かった、それにこの機体は魔法にも相性が良く出来ております。
そして顔の変更は自由ですからお子様にピッタリではないでしょうか。」
「その点も考慮して今回決めさせてもらった。」と潮。
差し出された契約書を確認の後にサインする潮。
「これで戦闘用ガイノイド4体とメンテナンスキット一式は貴男の物です。」
握手を交わして二人は別れた。
潮の取引相手、それはかつて九島に雇われていたパラサイドールの主任、
九島の失脚後ドールと共に放り出されていた男だった。
(実際は飼い殺し扱いに喧嘩別れの状態になったのだ。
腐ってもエンジニア、新しい物を作り出したい要求に逆らえなかったのだ。)
そして潮に引き渡された4体、それはかつてプライムフォーと呼ばれていた物だ。
達也の所為で中に憑いているパラサイトは眠ったままだ。
ベースとなる筐体は以前から開発されていた物を流用しているいわば汎用品。
そして外見が変わり、かつ眠っているので現状ではピクシーでも気付く事はない。
ほのかと雫の傍に来てどんな波乱が起きるのだろうか?
果たして憑りついたパラサイトは誰の思いで目覚めるのだろうか?
この後0章最後のエピソードになります。
1章の第一エピソード(旧作と同じ)で一旦停止する予定です。
原作終了後に再開する事を今は考えています。
こっちに集中している間にもう一つの方の原作が大変な事に…