防衛大学校の劣等生   作:諸々

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00-06 市原 鈴音

2097年2月15日、市川鈴音は何時もより少し遅く大学についた。

理由は前日にある、2月14日バレンタインデーである。

大学中の浮かれた雰囲気に勉強する気になれずに早々に引き上げてきた。

今日も時間をずらしての登校の予定だった。

だが大学に入ることが出来なかった。

大学前でデモ、直ぐに終了するだろうと思っていたが意外なことに暴徒化し騒動は拡大した。

野次馬に混ざって経過を観察していたが流石に身の危険を感じて帰宅する事に。

大学に入学する時に立てた誓いが有る。

それは『大学在籍中は学業一筋、その他は最小限に』だ。

だからニュースはこの一年全く見ることなく過ごしてきた。(ただし校内ニュースは除く)

流石に今回は禁を破りこの事件を調べる事にした。

発端は10日前に起きた師族会議を狙ったらしいテロ事件の様だ。

その犯人らしき人物の魔法師を非難する犯行声明が発表されたために起きたとニュースには書かれていた。

その記事にいくつかの疑問を感じた。

例えば犯行声明は本当に犯人の物なのか?

大きな事件だと便乗した犯行声明や複数の犯行声明が出る事がままある。

それとデモに至る期間だ、通常はネットで話題が拡散しデモをする事になる。

次に場所や日時の決定、ここは調整が必要なのでかなりの時間が必要なはず。

作為的な物を感じるが自分に出来る事は何も無く、RSSにチェックを入れるにとどめた。

大きな事件だけに進展を期待したが派手な事件もなくまた犯人逮捕の話も無かった。

 

4月になり大学に新入生があふれる。

私は図書館近くのカフェテリアで昼食、そこで新入生たちの会話の中に無視できないフレーズを聞いてしまう。

去年までなら周囲の話など聞くことは無かったが、デモの件はさすがに気になっていたのだ。

『去年の今頃』『一校で』『恒星炉実験が話題になった。』

この後ローゼンがどうとか盛り上がっていたが私は急いで食事を終えると外へ出て過去ニュースをチェックした。

(混んでいるカフェテリアで端末を開くとテーブルチャージを取られる。)

キーフレーズが有るので該当記事はすぐに見つかった、が時間が経ちすぎているのでヘッドラインのみだった。

どうやら生徒会が中心となって行った実験らしい、ならあーちゃん(真由美に毒されている)を呼び出そう。

 

「すみません市原先輩」しきりに頭を下げるあずさ。

何でも自分には理解不能という事で、手持ちの資料は破棄したとの事。

なら司波君に頼んでくれないか、とお願いした所あずさは顔を青くし震えだした。

何とかなだめすかして聞き出した事は驚愕の事実だった。

司波兄妹が『あの』四葉の直系でありなおかつ実はいとこ同士で今は婚約者だった。

鈴音はその事を驚愕したが、あの魔法力(知識も含む)を知っているだけに納得してしまう。

そしてあずさが怯える理由を自分なりに解釈し納得した。

(梓が怯える本当の理由は花音にあった。

防衛大学校組が準備を理由に五十里の見舞いをキャンセル。

結局あずさ一人が見舞いに行く事になってしまう。

そこで聞かされたのは、司波兄妹の冷酷さだ。

四葉家のエピソードも交えるそれは、あずさを怯えさせるにあまりあったのだ。)

鈴音は考える、直接司波君と接触せずに済む方法を。

そして思いつく、四葉直系に対するに相応しい人物を。

 

深雪との話し合いを受けて4月初旬、真由美、克人、達也の会談(座談会?)は無事終了した。

達也を送り出した真由美と克人は深刻な表情だ。

「真由美…」と克人。

「分かってる。」と真由美。

何が起きたのか?

それは単純な事、話題が尽きてしまったのだ。

元々この会議は各々の家を背負っての情報交換の場だった。

その為話題が何でも良い訳では無い、特に達也には移動の手間をかけさせている。

初日こそ大学の話でそこそこ盛り上がったが、真由美にしても高々一年しか在籍していないのだ、そんなに話題がある訳は無かった。

 

真由美のこの悩みは唐突に解消する事になる。

だがこの事は後々真由美を大いに悩ませる事となる。

 


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