「不味いぞ将輝、トンネルは爆破が怖くて使えない。」
「ああそうだな、…茜大丈夫か?」汗をぬぐいながら将輝が言った。
「大丈夫だよ。」幾分苦しそうに茜は言い、小声で将輝に言った。
「お兄ちゃん、私より彼女を・」
「司波さん、そちらはどうですか?」その言葉に慌てて告げる将輝。
「ええ、こちらは何ともありませんよ。
それよりこれからの事を。」
「「……」」将輝、真紅郎共に黙り込む。
その時茜が言った。
「ここに有るあの装置は使えないの?中性子とかいう凄い物が出せるんでしょう?」
「…確かに適切なエネルギーレベルの中性子を当てれば原子炉は暴走する。
が、そのレベルの中性子は水と反応するから潜水艦に届かせるのは難しいぞ。」と将輝。
「…ちょっと待って将輝、直接原子炉を攻撃するのは難しいかもしれない。
けど間接的にならいけるかも知れない。」
「どういう事だジョージ。」
「原子炉には暴走を検出する為の中性子センサーが付いているんだ。
普通原子炉は一定以上の中性子が検出されると暴走したとして緊急停止するように作られているはずなんだ。
どんな反応になるか分からないから、センサーは基本どんな中性子でも検出する。
水を通過する高速高エネルギーのビームなら届くし原子炉の緊急停止装置を誤動作させられるはずだよ。」
「そうか、ならそれでいこう、まずは自家発電機室を見に行くぞ。」
発電機の取説を見て真紅郎は難しい顔をしている。
「C燃料の余熱に時間がかなりかかるみたいだ。こまったな。」とつぶやいた。
「ならここは俺に任せろ。俺の魔法で何とかする。」と将輝。
ハッとする真紅郎。将輝は強く頷いた。
残りは粒子加速器制御室に向かう。
しばらくすると電源供給のパイロットランプが点灯、すかさずシステムを起動する。
中性子ビーム発射の準備を進める真紅郎。
最終段階でエラー表示が出る。
「今度は何だ。」苛立たしげにつぶやく。
「なになに超電導コイルの冷却不良?超電導臨界まで温度が下がらないって?」
「ではそれは私が。」と深雪が言った。
少しの間装置と格闘していた真紅郎だがやがてみんなに告げた。
「司波さん、よろしくお願いします。場所はこの後案内します。
水波さん、中性子バリアーの魔法は使えますか?」
「はい、お任せください。」
「では僕と一緒に来てください。」
水波は深雪をちらっと見て頷くのを確認した。
「真紅郎君、私は?」と茜が恐る恐る聞いて来た。
「うん、茜ちゃんにはここの操作をお願いするよ。このパネルがすべて緑になったら教えて。
その後僕の指示でこのカバーのかかったスイッチを押してね。」
茜は一人取り残されると知りぶるっと震えた。
真紅郎はトランシーバーを渡しながら茜にささやいた。
「茜ちゃんは僕が守るから安心して。」
真紅郎は茜の様子を確認してソナーを背負って二人を連れて出て言った。
深雪を案内してから地下深くに潜って行った。
突き当りがコンクリートらしき素材の広い空間に着いた。
その壁の前には非常に大きな金属の板が台車に積まれている。
真紅郎は台車を器用に操り外壁との間でコンクリートぽい壁に開いた狭いV字状の空間を作った。
真紅郎はその入り口近くに陣取りソナーを展開し独り言を言った。
「よし思った通りだ。あの壁の向こうは海だからここなら使える。」
しばらく操作をしていると茜から準備OKの報告が入る。
「水波さん、念の為中性子バリアーをお願いしますね。大半はこの遮蔽材で何とかなると思うけれど。」
「承知いたしました。」と水波は言った。
その後さらに難しい顔でソナーを捜査していた真紅郎は茜に告げた。
「茜ちゃんスイッチを入れて。」
それなりのタイムラグを経て周囲がほのかに輝く。
「よし。」真紅郎はガッツポーズで叫んだ。
ここで連続投稿は終了です、次回は7日を予定しています。