幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
地底に立つ大きな屋敷。どうやらここが“地霊殿”のようだ。
「・・・ここに、怨霊の管理者がいるのか?」
『ええ。いるはずよ』
「しかし。もうお腹いっぱいなんだが?」
『・・・さっき死ぬほど猫をモフってましたから・・・』
『それで満足してしまってたら異変解決できないだろ』
『自由人過ぎるのよね・・・』
「・・・・・・誰かしら? 人間・・・・・・? まさかね、こんな所まで来られる筈がない」
「ご名答。俺は人間じゃない。平等なだけの人外さ」
「・・・・・・?! あなた、何者?」
「言っただろ? 平等なだけの人外さ。古明地さとりさん」
「私は・・・あなたに名を名乗った覚えは無い!」
左胸に浮かぶ、紅い第三の目が特徴的なさとり妖怪の少女。古明地さとりは上条の言葉に酷く驚いているようだ。
「俺に隠し事は無意味さ。何せ、
「・・・その眼」
「私と似てる? 勝手に似せんな。そうだな・・・じゃあ思考の読み合いと行きますか?」
そう言った上条は幻想喰いの能力をOFFにする。
「!?」(急に読めるようになった!?)
(そういう風にしたからな。お前からどんな風に俺が見えてるかは知らねーけど。少なくとも思考回路を読み取る事ぐらいなものだろ?)
(・・・私のさとりの能力より恐ろしいものですね)
(神の眼だからな。それぐらい容易いさ)
『・・・二人とも何をしてるんでしょう?』
『心の読み合いで会話でもしてるんでしょう』
『・・・気になる』
(嫌われ者ぉ?)
(そう。自分の心を覗く奴なんか嫌われて当然でしょう?)
(あっそ。俺は自分の事だから分かんねーや)
(・・・・・・そうでしょうね)
(羨ましそうだな。だったら、俺が友達になってやろうか? お前の初めてのさ)
「なっ!」(何を言ってるの!?)
(友達は嫌か。そうか。じゃあ何だろ・・・家族? 同じ幻想郷に住む家族かなァ・・・・・・)
(ちょ、ちょちょちょっと待ちなさい? あなた自分が何を言ってるのか分かってるの!?)
(安心しろ。例え世界中のみんながオマエの事をさとり妖怪だって差別したとしても、俺はお前の傍にいてやるよ)
(で、でもっ)
(「信じたものに裏切られるのが怖い」心が読めるからなおさらか? 心が読めない人間でさえ裏切りが怖くて怯えてるって言うのに・・・。信じてみようぜ? 目の前にいる人外の言葉と存在ぐらい)
「・・・・・・ふん、私には見える。心を読む第三の目が貴方の心象を映し出す! 戦いの心象。それに貴方は苦しめられるといいわ」
「やってみろよ。俺がこの手でお前に信じさせてみせる。俺という人外を」
「さっきまでの口げんかは終わり。これからが本番よ。眠りを覚ます
「トラウマ・・・?」
上条の目の前で形作られたのは弾幕と言うより、一人の人外。
「―――やっほー、当麻くん。久しぶりになるのかな?」
「?! なじ・・・みっ?!」
確実に上条当麻の何かが崩れる音がした。
『!! 馬鹿っ! それはただのご主人の記憶ッ! 本物の安心院さんじゃないですよ!?』
「・・・・・・そ、れは・・・」
「おいおい酷いじゃないか。本物か偽物か、なんかどうでもいいじゃないか。僕は君と闘いに来たんじゃない。ただ一言伝えに来たんだ」
「何・・・?」
『何ですって?』
なじみをかたどるその記憶は、上条に向かって腰から頭を下げる。
「―――僕を止めてくれてありがとう。当麻くん」
「ッ?!」
彼の魂がきしむ音が確かに聞こえた。それは僅かな音だったかもしれないし、大きな音だったかもしれない。だが、確実にその音はだんだんと大きくなってきていた。
「・・・じゃあね」
「なじみっ!」
「・・・どうやら、予想以上に効果抜群みたいね」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・そう。今ならあなたがここに来た目的が分かった。間欠泉と一緒に出てきた怨霊の類いね。分かった。何とかできるように手伝いを」
「・・・か?」
「・・・ひっ」
「なじみを消したのはテメェか?」
『ご主人の馬鹿っ! 向こうは協力してくれるって言ってるんです。落ち着きなさい!』
「・・・それなら私のペットの管轄ね。中庭を開けてあげるわ。中庭から、さらに地下深くへ潜れます」
『ご主人』
「・・・・・・ああ。わかった」