幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活   作:軍曹(K-6)

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Stage1 忘恩の地から吹く風

上条は地底への穴を落ちていた。

 

「相互不可侵条約?」

『えぇ。どうやら地上の妖怪と地下の妖怪は争わないようにしているみたいです』

「・・・ほーぅ。つまりあれか。紫達じゃ解決できないから俺達人間が解決するってワケだな」

『いつも通りな、気がしないでもないですが・・・。ああそれとご主人』

「何だ?」

『止めるのは湧き出る怨霊だけにしてください。金儲けに必死な巫女が一名いるので』

「・・・・・・分かった」

 

上条はそう言うと、体を半回転させて地面に両足を着けて立った。

 

「ここが地底か・・・。・・・・・・!」

 

上条は何かに気付いたのか、左手を消した。

 

「わっ! ・・・止められるとは思ってなかったなぁ~」

「・・・つるべ落としか。何の用だ? お前を落とされると俺は死ぬらしいが」

「あはは。それを狙うのが妖怪ってヤツだよ。知ってるでしょ? 人間さん」

「お前はあの高さから落ちて無事なヤツを人間と呼ぶのか」

「よく分からないけど、あなたが変な動きをして重力を一度無視したのは見てたからね」

(・・・ヘェ。コイツ雷迅の高速起動を見破ったのか・・・?)

「さて、地底までやってきた物好きさん。あなたは一体何者?」

「・・・久しぶりに名乗るな・・・。俺は博麗の巫女の代理をしている者だッ。知らないかもしれないが、地上に吹き出した間欠泉の原因と、湧き出た怨霊の責任を問いにやってきた」

「・・・・・・博麗の巫女の・・・! じゃあ弾幕ごっこでもしようよ」

 

少女、キスメのその言葉に上条はいつも通りへらへらと笑うと、スペルカードを抜き放った。

 

「スペルカード。紋章「悪魔の紋(ベルゼスペル)」」

 

それは、元々は幻想紋と呼ばれていた物。上条の修行の間に紋章の形は大きく変わり、まるで髑髏(されこうべ)のような形を見た魔理沙が言った。

 

【「これじゃあまるで、悪魔の紋章だな」】

 

そこからは連想ゲームだ。悪魔→魔王→魔王ベルゼブブ→ベルゼ(スペル)

 

「全てを焼き尽くせ」

「え。ちょっ」(まさか・・・コイツが例の・・・・・・)

「電撃「ベリュ・・・・・・。電撃「蠅王の咆哮(ゼブルブラスト)」!!」

(世界の基準点・・・幻想喰い(イマジンイーター)の上条当麻っ!!)

 

弾幕用に押さえられたゼブルブラストで初撃決着を付けた上条は更に奥へと進む。

 

「あーあ。ジメジメしてんな・・・」

『ご主人。何ですかさっきの。思い切りパクりじゃないですか』

「良いだろ? 悪魔の紋章で、ベルゼブブがでた時点で思いついてたことだ・・・・・・」

『ご主人? ごー主人?』

「おお? 人間とは珍しいねぇ。地底に遊びに来たのかい? あそこは今お祭り騒ぎよ。誰も拒みゃしないから楽しんでおいき」

「そりゃ結構なお誘いで。でも生憎、遊びに来たんじゃないんでね。それに、妖怪にそんな事言われても素直に歓迎される人間がいるとお思いで?」

「・・・違いないね。それに、お前は普通の人間じゃないみたいだ」

「ご名答。とっくに人間の道を外れたただの人外だよ。平等なだけのな」

 

上条はケケケ。と笑って目の前にいる土蜘蛛の妖怪にねらいを定める。

 

「弾幕ごっこ? 地上の人間が地底の妖怪相手に? ・・・って言いたいところだけどちょっと今回はマズいかな。何せ地底まで噂が轟く幻想喰いさんだからね」

「知ってんのか。そろそろこの噂どうにかしないとな・・・。自分の力に自信がない奴は俺の顔を見ただけで逃げてっちまうようになったからなぁ」

「しみじみ呟かないでもらえるかな」

「あ、でもこの前の天人は面白かったな。結構な強さで殴ったのに平気そうにしてたし。笑ってたし」

『あれはただのドMですよ』

「なぬっ」

「・・・誰と話してるの。とか詮索はしないけど、そうだね何もしないなら特別に良いことを教えて上げるよ」

「ん? 何だ?」

「この先の旧都を越えたとこ。大きなお屋敷が建ってるそこに行ってみると良いよ」

「・・・・・・ありがとな」

 

上条は微笑むと言われた方向に歩いていく。土蜘蛛の少女、ヤマメに背を向けて。

 

(・・・もらった!)「?! がっ・・・・・・」

 

攻撃をしようとしたヤマメの体が一瞬浮き、地面に強く叩き付けられる。気絶する前にヤマメの目と耳に届いたのはどちらもそれを行った少年の物だった。

消えた左腕と嗤った口。そして、

 

「考えることは同じか。なら後はスピード勝負だ。こっちの勝ちだぜ。ヤマメちゃん」

 

近所に住む小学生に語るように言った上条は、そのまま歩いて地底を進んでいく。

 

『・・・・・・卑怯者』

「・・・はて、何のことかな」

神々の義眼(その眼)で、何でもかんでも見通してるくせに、何をとぼけてるんですか』

「・・・・・・ん?」

『その眼から入る情報がどんな物か、詳しくは私も知りませんよ。ですが、見えてるんでしょ? 相手の思考ぐらいいとも簡単に』

「呼吸をするぐらい簡単にな」

『ホント、いつか嫌われますよ・・・・・・』

「そうしたら引きこもるだけだ」

『・・・・・・バーカ』

 

小さく呟かれたその言葉を綺麗に拾ったマイクに苦笑しながら上条は更に地底を奥へと進んでいった。

 


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