幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「ギロチンカッターは、吸血鬼でも、ましてやヴァンパイア・ハーフでもない。人間じゃ」
「只の人間なのか?」
「只の、と言うにはいささか無理があるが、純粋な人間じゃ。じゃが、あやつがあの中では一番危険じゃ。人間が吸血鬼退治を専門で請け負っておるのじゃ、むしろ警戒すべきじゃろう」
上条は忍に最後の相手、ギロチンカッターの事を聞いていた。そして思う。
「人間の状態で闘いたいな・・・。そんな強い奴なら」
「・・・そう言えばあるじ様と似たような存在じゃな。もっとも吸血鬼ではなく妖怪全般の退治を“博麗“のものでは無いただの人間(嘘つき)が請け負っておるのじゃから」
「おい、副音声聞こえているからな。俺は歴とした人間だっつの!!」
「おっと聞こえておったか」
「聞こえてるわ!!」
上条はあるはずのないテーブルを叩くと片膝を立てて半分立ち上がり、勢いのまま感情を剥き出しにする。
「大体何なんだよ! 会う奴全員全員! 人の事何だと思ってんだッ! 宴会の時にただの人間だって霊夢や魔理沙から聞いた時に、驚いて何もかも信じられない見たいな顔すんじゃね―――ッ!! 俺は人間だっつの! 霊長類人科人目上条当麻! 何だったら生まれも育ちも地球! 親も普通の人間だっつの! 引きニートだよ悪いかボケェエェエェエエエエ!! あぁ、もう不幸だぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」
「はっはーとてもとても楽しそうなところに水を差すようで悪いんだけど。悪い、ミスった」
「は? どういう事だ」
「上条くんの恋人が攫われた」
忍野は博麗神社の人間には手を出さないと思っていたらしい。しかし、貴音が人質に捕られていては上条は迂闊に行動できない。実質に二対一だ。バランスが崩された。と、忍野は吐き捨てるように言った。
「おや、走って来られたのですか? お疲れ様です。しかし、身体を霧にもできないとは、まだまだなりたてということですね」
急いで対決場所に来た上条に、ギロチンカッターは丁寧な口調で言った。
「こっちの方が早いんだ。博麗巫女の代理舐めんじゃねェ!」
「! ご主人!」
「・・・オイ。なんでエネを巻き込んだ。これはルール違反だろ?」
上条は今にも爆発しそうな怒りを抑えて、静かに言った。
「人質はルール違反だとは聞いてませんが?」
「一対一の闘いだろうが! これじゃあ二対一になる!」
「人質に戦闘力はありませんよ」
「・・・そうかもな」
上条がよく見てみると、不意をつかれたのであろう。上条のように化物じみた防御力を持っている訳でもない貴音の体は、ボロボロになっていた。確かに一対一だろう。
だが。
この状況は上条にとってはこれ以上もないチャンスだった。
「・・・貴音。俺の為に死ね」
「は? え? ご主人?」
上条の袖口から射出される心渡が貴音ごとギロチンカッターを貫き、両手に持ったカスール改造銃とジャッカルから十三mmの銃弾が同じく貫いた。
「ガッ!」
「大丈夫。急所は外してある。死にはしないさ。まァもっとも、貴音の方は心臓とか普通にぶち抜いてるけどな」
「・・・手加減しろよ馬鹿トーマ」
「うるさいドラキュリーナ。黙って死体のフリしてろ」
「いきなりフられて分かるもんですか。分かってたまるもんですかァ!!」
うるさかった貴音を強制的に気絶&強制帰宅させた上条は、治癒魔法をギロチンカッターにかけると、外の世界への転移門に放り込む。
「さて。帰るか」
と、帰りかけた所で上条は拉致られた。
「・・・何のつもりだ。忍野」
「はっはー鋭い眼光だね上条くん。何か良い事でもあったのかい?」
「全員倒して平和になったと思ったらお前が出てきた。やっぱりラスボスはお前か?」
「違う違うそうじゃない。君が闘うのは僕じゃない」
「は?」
「君にはハートアンダーブレードを殺してもらいたい」
「は? 忍を? 俺に?」
「そうだよ。彼女はあの洞窟に縛られていた。名前は今も縛られているけどハートアンダーブレードは今君のせいで自由だ。復活されたらバランスが崩れるんだよ」
「・・・それで俺に忍を殺せってか」
「そうだ」
「必要ないさ。忍野。これだけは言ってやる。何か勘違いしているようだが、アイツはもうハートアンダーブレードじゃあないよ。忍野忍。俺の忠実なる眷属だ」
「・・・彼女の危険性を下げる事は出来るのかい?」
「だてに博麗の巫女の代理はやってないさ」
次回。VSハートアンダーブレード。