幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活   作:軍曹(K-6)

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前回の続き


Stage3 吸血鬼としての上条当麻 弐

「俺が攻撃したらこの辺が吹っ飛んじゃうだろ。まだ力が完全に扱えてないんだよ。察せ」

 

適当なウソをつく上条だったが、あながち間違いではない。吸血鬼の能力など眷属作りの時以外使ってこなかったのだ。何が出来るのか今一分かっていない。

 

(ま、凄い回復力があるって考えとけば良いか)

(甘い。甘すぎるぞあるじ様! ちょっと練習じゃ! 創造スキルを使ってみぃ)

(創造スキル?)

(そうじゃ。創造したいものをグワーと思い浮かべれば良い)

(んじゃあ・・・)

 

上条は手っ取り早く何かを思い浮かべる。自分の手元に作り出したそれは、一本のバールだった。

 

「よっしゃ。幻想CQC『名状しがたいバールのようなもの』!」

「ほう! 創造スキルまで使いこなすか! だが、まだ甘い!」

 

いつの間にかドラマツルギーの両手にはフランベルジェが握られており、上条の一閃はいとも簡単に受け止められていた。

むしろ、二刀を持っているドラマツルギーの方が優勢となり、上条のバールを受け止めている方ではないもう一刀で左腕を切り落とされてしまった。

 

(あー。これあれだな。本物より若干性能落ちするんだな)

 

上条は落ち着いた様子で左腕を回復する。もちろん落ちた方の左腕は飛び散った血しぶきと共に消えている。が、服までは再生しないので左袖だけがない不細工な格好になってしまったが。

 

「だりゃぁああ!!」

 

上条は距離を取る為に見せかけて物質創造スキルを使って地面を隆起させる。文字通り壁を造ったはずなのだが、距離感の計算が間違っていたのかドラマツルギーの体を打ち上げる結果になった。

 

「面白い使い方をする。益々殺すには惜しい人材だ」

「はっはー殺すだなんて元気が良いなぁ。何か良い事でもあったのかい?」

 

忍野の言い方を真似る上条。少し余裕が出てきたのだろう。

 

「そうか。だが、その程度では私を倒すことなどできんぞ」

「知ってる。だからこの立ち位置に導いた」

 

月明かりが地上を照らすそれによって出来た影はドラマツルギーの方へのびていた。

 

「行けっ!!」

「ぐっ・・・」

 

左腕を切り落とされたドラマツルギーは初めて表情を崩し、続けて振るわれた上条のバールをバックステップで避ける。

 

「そ、れは!?」

「妖刀『心渡』」

 

そう。上条の影から射出され、ドラマツルギーの左腕を切り落としたのは上条の愛刀。心渡だった。更に追い打ちをかけようと上条が心渡を振り上げたところでドラマツルギーは剣を捨て、地面に手をつけていた。所謂土下座をしていた。

 

(え、何。俺悪役みたいじゃん。正義の味方は土下座はしないけど)

「・・・何のつもりだ?」

 

まだ決着はついていない。油断を誘うつもりなのだろうか。

 

「見ての通り降参だ。日本ではこうするのだろう?」

「いつの時代の日本だよ」

 

上条はそこまで言って、『あれ。幻想郷じゃあながち間違っちゃいないのかも・・・』なんて意見を変えていたりする。

再度上条は心渡を構え直すと、ドラマツルギーは慌てた様子で、

 

「待て。降参だと言っているだろう」

「証拠はあるのか?」

 

ドラマツルギーは上条に切断された・・・・・・左腕を差し出し、険しい表情で告げた。

 

「この腕では戦いようがない。自力で負けていようが、経験では勝てるものだと思っていたのだがな・・・。力だけでなく、策を弄することにも長けていては私に勝ち目などない」

「それは過大評価だろ。つーか、その左腕だって簡単に再生するだろ? 吸血鬼なんだから」

 

先程上条が切り落とされたときはいつ再生したかも分からないほど早かった。

 

「勘違いしているようだな。お前達のように一瞬で再生できる吸血鬼などそうはいない。まあ、それでも私は再生力の低い部類なのだが――それでも、お前は珍しい部類の吸血鬼なのだぞ。言ったであろう。あのハートアンダーブレードの眷属だとな。私なぞとは格が違うのだ」

「そうか。それと降参って言ったからには、しn。ハートアンダーブレードの事は諦めて、外に帰るんだろ?」

「約束は守る。すぐにでも帰ろう」

「わかった」

「では、示談成立だ」

「最後に訂正させてくれ」

「何だ?」

「俺はアイツの眷属じゃない。逆にアイツが俺の眷属だ。この俺のな」

「・・・そうか」

 

 

 

―――忍の待つところに帰還した上条。

 

「待っておったぞ! あるじ様!」

 

上条が帰ってきた瞬間、忍が彼に飛びついた。

 

「して、どうじゃった?」

「勝ったよ。すぐに相手が降参した」

「まぁあるじ様ならそれが打倒じゃろうな」

「はっはー。いや流石上条くん。吸血鬼の能力だけという枷付きでここまでやれるなんてねー」

「褒めてくれてありがとよ。それと忍。お前に返すものがある」

「返すもの?」

 

上条は自分の影の中から大きな団子状のものを取りだした。

 

「何じゃ? それは」

「お前の右脚。これだけしか分離できなかった。他はもうちょっと待ってくれ」

「何をしておる、アロハ小僧! これから食事をするのじゃ! 一人にするのがマナーじゃろ!」

 

忍野に大声をあげるキスショット。手厳しい。やれやれといった感じで教室から出て行く忍野を上条は同情の目で見る。

 

「あるじ様もじゃ! 見るでない、は、恥ずかしいじゃろ」

(顔を赤くするキスショット。可愛い)

 

上条はなんとも言えない感想を抱いた。

忍に入る許可をもらい、扉を開けると、十二歳くらいに成長したキスショットがニコニコしながら立っていた。

 

「どうじゃあるじ様! 可愛いか?」

 

そう言う彼女に上条は、

 

「ああ、可愛いよ。とても」

 

と返事をしたのだった。

 




忍野忍完全復活か・・・。

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