幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
上条は未だに博麗神社の階段下にいた。それもそのはず、目の前に『鬼』がいたからだ。
「・・・どちら様で?」
「いやーちょっとね。博麗神社に用が会ってきたんだけど。あれ? 知らない?」
「鬼だって事は普通の人間である俺が見ても分かるよ」
「うーん? 博麗の巫女とは面識があるんだけどなー」
「霊夢と?」
「そうそう霊夢! もしかしてお前が“当麻”か?」
「そうだけど? 上条当麻。それが俺の名だ」
「私は伊吹萃香。当麻の言う通り鬼さ」
「よろしく。って事はあれか。三日おきに宴会をさせられたって霊夢が言ってたのがお前の仕業だったって事か!」
ポン。と手を叩いて納得する上条に、萃香はニコニコと笑って。
「その通りさ。ところで当麻、今から異変解決だろう?」
「そうだけど」
「じゃあそれが終わったら私と闘らないか?」
「え・・・・・・」
「博麗の巫女より強いなんて聞いたら、鬼としては黙っていられないんだ」
「まぁ、良いけどよぉ・・・・・・。良いか? これが終わったらだからそれまで待っとけよ?」
「おう。博麗神社でのんびりしておくよ」
階段を上っていく萃香とは逆に、上条は森の中へ走って行った。
暫くして上条は小川のそばで幼い少女を見つけた。
「ほう♪ ほう♪ ほたる こい♪ あっちのみずは にがいぞ♪ こっちのみずは あまいぞ♪ ほう♪ ほう♪ ほたる こい♪」
「お前も蛍だろうに」
「?! き、キミは!?」
「俺は趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ。とは言ってもこっちの方が名乗りなれているからであって、別に誰彼構わず妖怪を潰している訳じゃないから安心しろ」
「そ、そうなんだ」
「さて、この幻想郷にはこんな言葉がある」
「え、な、何?」
「目と目が合ったら弾幕ごっこだ!」
「えぇ!?」
『冗談だ』と上条は付け加える。どこぞのトレーナーじゃないんだから、彼は好戦的な性格じゃない。
「お前はこの異変どう思う?」
「・・・そうだなー。蛍が光るのは夜だけだから、気分が良いと言えば良いけど、でも何だろう。早く終わって欲しいかな」
「そりゃな。夜ばっかり続いたらおかしな事になっちまう。この異変を解決しない限り、妖怪の賢者共は朝を来させないようにするつもりらしいからな」
「大変だね。博麗の巫女の代理も」
「そりゃあな。ところでお前、名前は?」
「人に尋ねる前に自分から名乗るのが礼儀だよ? 私はリグル・ナイトバグ」
「上条当麻だ。リグルね。一応弾幕ごっこしとくか」
「え・・・するの?」
「するさ」
上条はそう言うと、一枚のスペルカードを出現させる。
「スペルカード。麗装「博麗式段幕」」
上条の持つスペルカードが発動し、彼の周りに二つの陰陽玉が浮かぶ。その手にはお祓い棒つきで。
「え、ええ!?」
「今回は美しさを競おうぜ。リグル・ナイトバグ」
上条はそう言うと、地面を蹴って後ろに跳んだ。
「スペルカード。霊符「夢想封印」」
「わ、わわわ!!」
上条の放った弾幕を何とか回避しながらリグルも負けじとスペルカードを出現させる。
「スペルカード! 蛍符「地上の流星」」
「おっ!」
上条はその弾幕にグレイズしながら、次のスペルカードを取り出した。
「スペルカード。幻想「見る者を圧倒する炎の花」」
そう、それは“花火”だった。
空を彩る『赤』『青』『黄』の三色。それが様々な混ざり方をし、別の色を作っていく。
外の世界でも夏に見られる炎の花。幻想郷に再現したのは上条当麻の趣味だ。
「す、すごい・・・・・・」
「じゃあトドメ。幻想「流れ落ちる炎の滝」」
空中から突然吹き出した炎は、まるで水のように地面へリグルへと流れていく。
「わ、わわわっ!!」
その元は、橋に取り付けた噴射機から火花を飛ばす『ナイアガラ』という花火の技法。弾幕ごっこの美しさ勝負でも、上条に勝てる者はそうそういない。
「俺の勝ち♪」
「負けたぁ・・・。ま、当たり前か」
「納得するなよ。つまんねー」
リグルに興味を無くした上条は、更に別の場所へ歩いていく。