幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
異変を解決した数日後。上条は偶然にも橙と会っていた。
「おっ。橙じゃん。元気か?」
「今回の異変で大分疲れてるけど、元気と言ったら元気です」
「ん。そうか。なら大丈夫そうだな」
「あ、ハイそうですね・・・。あ! そう言えば!」
「どうした?」
「今回の異変。私、貴音様と決闘したんですよ」
「ああ、言ってたな」
「それで、藍様が貴音様に報復する。と」
「マジか・・・・・・」
上条は雑に頭をかく。その顔から諦めと呆れが同時に読み取れる。
「貴音が負けるとは思えないが・・・・・・。そうか、藍か。紫が出てきそうだな・・・・・・」
「紫様ですか・・・・・・」
―――貴音side
「・・・で? いきなり攻撃とは物騒ですね? 流石、
「うるさい。キサマは橙を苛めたそうだな。だから、式の主としてお返しに来た」
「詰まるところ報復、と。全くもって訳が分からないですよ」
貴音は付き合いきれない。と言って背を向けるが、そこに弾幕が飛んでくる。彼女は一瞬で反応し、弾幕をお祓い棒で弾いた。
「・・・・・・やる気ですか? たったそれだけの事で?」
「大事な橙をやられたんだ。黙っていられんな」
「まるで死んだみたいな言い方をするんじゃねーですよ。生きてるんですからね? 彼女」
「ああ。分かっているさ」
「分かっているならこの不毛な争いを止めようとは思わないんですか?」
「思わないな」
「だ―――ッ! 面倒臭い! いいわ。やってやるわよ。その代わり、
「いいだろう」
「「
その宣言の直後。妖狐と吸血姫、二つの巨大な力が激突した。
「おぉ~。これは貴音と・・・藍かな?」
「あわわ! と、止めないと!」
「止めなくて良いさ。これは弾幕ごっこ。一種のケンカさ。他人が口出して言いない事じゃないさ。さて、どうする? こっちもやるか?」
「え。本気ですか!?」
「止めとくか。流石に貴音に負けたヤツ相手に戦う気は起きないな」
「何気なく酷い事を言っているって事を分かってますか当麻様・・・」
「何となく。だが事実でもある」
「まあ当麻様の強さからしてそれは常識なのでしょうが・・・。人間に対して妖怪が弱いと言われる事は結構こうクるものがあります」
「そうか。悪かったな」
上条は弾幕の爆発もとい激突音が聞こえる方向へ指を指して、
「行ってみるか? 主人の事も気になるだろ」
「そう言う当麻様は貴音様の事を全く心配などはされていないようですが」
「当たり前だ。俺の貴音が紫の式神程度に負ける訳がねぇ」
「・・・俺のって堂々と言える辺り、本当に大好きなんですねー」
「むしろ好きすぎて愛してるレベル」
「・・・・・・他に当麻様を好きな人が現われたらどうするんですか?」
「その時にゃ、ハーレムでも作るかね」
「一夫多妻制ですか・・・」
「元々生き物は、人も妖怪も関係なく独占欲が強いヤツが多いからな・・・。ま、女よりも男の方が独占欲が強いが。だから、好きになったヤツを誰にも渡したくなくて、一夫多妻なんて状態ができあがる。そして、一妻多夫はなかなか無いんだな。これが」
「・・・・・・。あ、見えてきましたね」
「無視か。まあいいが。思った通り、貴音優勢か」
弾幕全てを回避し。その要所要所で一番相性のいい弾幕を撃つ。これが貴音が敵によく使っている弾幕の一つだ。
もちろんその他にもたくさんあるが、現在はその方法をとっている。故に、貴音は被弾後がなかった。
「しかし貴音はグレイズ上手いな・・・。俺相手じゃあそこまで行かないのに・・・」
「当麻様の拳の連撃相手にどうやってかすれって言うんですか・・・」
「気合い?」
「・・・ハァ」
上条の解にため息をつく橙。が、彼はそんな事は気にもせず、自分の恋人の少女が勝つのを見ることにした。
「―――もう、やめにしませんか? 結構グレイズ溜まりましたし」
「・・・ハァッ・・・ハァッ。やめる訳にはいかない! ここで、負けたらッ!!」
「次のセリフは“紫様に何と言われるか”ですっ」
「紫様に何と言われるか・・・ハッ!?」
「・・・もう、良いでしょう。終わりにしましょう?」
貴音はそう言うと、その右手の人差し指と中指で挟んだスペルカードを発動させようとする。
そのスペルカードが何であるか即座に理解した上条は貴音の元に跳ぶ。
「ばっ! お前にそれは早っ!!」
「幻爆「
「ぐぅッ!!」
上条は至近距離でそれを浴びることになったが、もともと上条の力。自然に吸収されていく。
「な、なんだ・・・これは・・・。この私が・・・式に強制的に戻されかけた・・・・・・」
だが、同じく近距離にいた藍はアリスの時と同じようなダメージを受けていた。
「あ、あれ? なんか目の前が暗く・・・・・・」
が、発動者である貴音の方もダメージを受けていた。上条ですら体力を削られる技。貴音が使えばどうなるか、彼は正しく理解していた。理解していたからとっさに彼女を抱きしめその唇を塞いでいた。
「んむっ?! んん!? んむんん!? んんん!」
「・・・っは! バカ!! 何で使った!!」
「え、だ。だって。何かボムっぽかったですし。かっこいいかなって」
「それで命の危機にさらされてたら元も子もないだろ!! いいか! 絶対、二度と! 幻想消去は使うんじゃねーぞ!!」
「あ、は、はい!! というか・・・何でキスしたんですか・・・・・・」
「生命力を流し込むのに一番手っ取り早い方法だからだよ」
『自分で自分の命を削ってる馬鹿にはこうやって送ってやるのが一番なんだ』と付け加える上条の唇を、凝視している貴音がそこにはいた。
「懲りたら使うなよ」
「もちろんです」