幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「・・・やっとこさ、春ね」
「そうだな」
上条と霊夢は春の陽気が差し込むようになった神社の縁側でお茶を飲んでいた。
と、そこへ境内の方から金属と金属がぶつかるような音が聞こえた。
「こんな寂れた神社に参拝しようなんてバカな人間もまだいるのね・・・」
「自分の神社だろー? 寂れたとか言うなよ」
「うるさい。私の神社なんだからどう言おうと勝手・・・で・・・しょ・・・?」
「・・・んじゃな。霊夢」
上条はその場からそそくさと奥に引っ込んでいった。
「あ、待って当麻!」
「れぇいむぅ? 掃除をさぼってお茶? 良いご身分ね!」
上条が奥に引っ込んでいったのは、今霊夢の目の前に立つ霊夢と色違いの巫女服を着て、箒を片手に眉間に皺を寄せた貴音から逃げる為だった。
「お、お姉ちゃんこれは違うの!!」
「違う? 何が違うって言うの? 私が納得するように説明してみなさい?」
「あ、えと。これからやろうと思っていたところで。それにお茶を飲み出したのは掃除時間の大分前だったし、全部飲まないともったいない気がしてついつい・・・だ、だから。そう。あ、え、と。ごめんなさい!!」
「うん。謝れるのは良い事だけど、何一つ解決してないから。そこのところよーく覚えときなさい」
「は、はいっ!」
(貴音こっわ。あんなに怖かったか?)
「あん?」
「あ、何でも無いぞー。今日も可愛いな!」
「ふぁっ?!」
『あ、えと・・・。掃除の続きしてきますっ!』と、霊夢に箒を持たせて参道の方へ消えていった貴音の背中を見送った上条は、縁側に置いていたお茶と、お茶請けのお菓子を片付けてちゃぶ台のそばに座った。
「さて? 勝手にお茶請け食べてから。ぬらりひょんの真似事か? 紫」
「あら。ぬらりひょんだなんて人聞きが悪い。私はスキマ妖怪よ」
「人の家に勝手に上がり込んで堂々と飯を食っていく。ぬらりひょんだろ」
「はぁ、まあいいわ」
「言われない為に態度の改善をする訳ではなさそうだな・・・」
上条は呆れたようにそう言うと、自らのスキマに座る紫の隣で縁側に腰掛けた。
「結局。今回は何の異変だったんだよ」
「えーっとね。彼女が幻想郷中の春を集めてあの西行妖を咲かせようとしてたのよ」
「春夏秋冬朝昼晩。花咲けぱっかん?」
「それ外の
「娯楽? それは聞き捨てならんぞ紫! 良いぜ。お前が
「スキマガード」
「おっ! ちょっ!」
紫に攻撃を加えようとした上条の足元にスキマが開く。落ちた上条は上から地面に叩き付けられた。
「・・・おう。紫。痛ぇじゃねーか」
「あなたの冗談みたいな拳をくらうぐらいなら。これぐらいは妥当でしょう?」
「あ、そう」
上条は悔しそうにしながらも、奥から新しいお茶を持ってきた。
「あら、気が利くじゃない?」
「妖怪の賢者に優しくしておいて損はないだろ?」
「あなたは十分優しいわよ?」
「お世辞は結構」
「しかし霊夢も大きくなったわねぇ」
「婆くさいぞ紫」
「誰がおばあちゃんよ」
「言ってねぇよ」
「・・・大きくなったわねぇ」
「・・・十四だろ? 大きくもなるさ」
「恋したりするのかしら?」
「次代の巫女を生む為さ。するんだろうな」
「・・・まだ、先よね?」
「だろうな。後十数年は霊夢の時代さ」
「当麻はいつまでここにいるのよ」
「風が吹くまま気の向くまま。せめて霊夢が一人前になるまでは、代理と一緒に修行もしてやるさ」
「ずっと
「まーな。神々の義眼なんて持ってる時点で人間じゃないらしいけど、それでも人並みに生を全うしたいな。なんて思ってるんだよ」
「人として死ぬってワケ?」
「ああ。俺は妖怪にはならないと思う」
「“神上”“統魔”なんて名前してるんだし、あなたなら妖怪の総大将になれると思うけど?」
「妖怪の総大将・・・ねぇ。生憎ぬらりひょんになるつもりはないさ」
「そう言うイメージがある? 何もぬらりひょんになれとは言ってないわ。神上って言う妖怪になれば良い。魔を統べ、神上として過ごせばいいんじゃない?」
「魅力的な相談だが、お前は流石に入れ込みすぎだ。霊夢に関しても・・・いや、命さんの時もそうだったろ。あの人が行方不明になった時、誰よりも心配して、幻想郷中・・・いや、外の世界含めて半年も探し続けて・・・。親友がいなくなったのは分かるが、もうちょっと妖怪らしくいろ。霊夢がどうにかなった時、またあんなお前を見るのは、俺はイヤだぞ?」
「あら、霊夢がどうにかなるまであなたは生きるつもりなの?」
「そういう訳じゃないが、それだけ酷いっつってんだ」
「お気遣いありがとう。でも、私はこのままでいいわ」
「飲もうとしてるとこ悪いけど、桜の花びらでびっしりだぞ。そのお茶」
「ブーッ!!」
紫が口に含んだそのお茶は、縁側から見える桜の木から散った花びらで水面がピンク色に染まっていた。忠告も遅く、桜の花びらを口から吹き出すという奇妙な風景を紫に見せられた上条であった。
「ゲホゲホ。もうちょっと早く言いなさい」
「気づいてるかと思ったんだが、遠慮無く行ったからな。忠告したんだ」
「そ、そうなの」
「ほらスキマのBBA! ご主人! そろそろ宴会を始めますよっ!!」
「「あー、今行く」」
「・・・って誰がババアだぁーっ!!」
「お前じゃスキマババア! 紫おばあちゃん!」
「殺す!」
「殺してみろっ!!」
「・・・・・・あいつ等・・・」
「・・・当麻」
「? どうした?」
「当麻は、気になる人とかいる?」
「恋愛観でか? それとも別の観点か」
「れ、恋愛で・・・」
「それは榎本貴音先輩かな」
「お姉ちゃん?」
「アイツは何だかんだ言って気になる人だからな・・・・・・」
「私じゃないんだ・・・・・・・・・」
「そりゃ霊夢は妹みたいなものだからな」
「ッ?! 聞こえたの!?」
「ああ。難聴系? 知りませんねそんな人」
「・・・? また当麻の不思議言語?」
「・・・・・・クソ。
上条は悔しそうにそう呟いた。
「・・・ま、花見と行きますか。お前等! フランクフルトはあるか!?」
「フランク? なにそれ?」
「・・・・・・じ、じゃあ。リンゴ飴は?」
「リンゴ・・・飴?」
「だぁあぁくっそ! 花見屋台の定番がねぇ!!」
「フランクフルトはソーセージの事です」
「あぁ、ソーセージね」
「「?」」
レミリア達西洋勢はソーセージで一体何のことか分かったようだが、霊夢達は分からない。
「ソーセージなら用意しておきました」
「おっ♪ 流石咲夜さん!」
上条は咲夜が指し示す重箱に近づき中を確認する。
「これこれ! これこそフランクフルトソーセージだぜ!」
『いただきまーす』と食べようとする上条を咲夜が慌てて止める。
「ま、まだ焼いてませんので!」
「え? そうなの?」
上条は目に見えて残念そうに肩を落としたが、貴音が持ってきたBBQセットを見てテンションが回復していた。
「
上条のテンションがヤバくなった状態で宴会は続いていく。