幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活   作:軍曹(K-6)

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どうやら今週はデロリアンがないようです。


Perfect Cherry Blossom 彼の世に嬢の亡骸

「おぉおぉおぉお!」

「はぁあぁあぁあ!」

「・・・・・・ふぅ」

 

上条は、とりあえず仲良く争う二人は放って、ラスボスがいる方に向かって行く事にした。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・何、やってんだ・・・」

「あ・・・とう、ま・・・」

「遅い・・・んだぜ・・・・・・」

「本当。遅いわよ?」

 

上条の目の前では、霊夢と魔理沙が倒れていた。そして、それを嘲笑うかのように、少女が浮いている。

 

「テメェ・・・。テメェか」

「西行寺幽々子ですわ」

「上条・・・当麻だっ!」

 

大切な物を守るため、上条はその右拳を握りしめる。

 

「・・・気を付けて。アイツ、人を殺しに来る」

「具体的には?」

「無理矢理死ぬ方へ流される感じだぜ・・・」

「なるほど。言ってみれば『主に死を操る程度の能力』か」

「ご明察」

「・・・楽になれるか?」

 

上条は霊夢と魔理沙に一度触れる。それだけで生命力の根本的な回復にはなっていないようだが、二人とも顔色は良くなったようだ。

 

「・・・さっさとやろう。もうテメェには加減しねぇ。この上条当麻は、所謂“問題児”のレッテルを貼られている。だが! こんな俺にも吐き気のする悪は分かる! 「悪」とはテメー自身の為だけに、弱者を利用し踏みつけるヤツの事さ!! ましてや女をーっ! キサマがやったのはそれだ! テメェの能力は被害者には見えないし、法律にも分からねぇ。

 

だから!

 

俺が裁く!! スペルカード。幻符「基準となる弾幕」」

「あらあら、面白い人だことスペルカード。亡郷「亡我郷 -さまよえる魂-」」

 

二人の弾幕が激突する。

 

「テメェ!! 何で霊夢と魔理沙に“能力”を使った!」

「邪魔をされたから。確実にあの桜を咲かせたかったんですもの」

「そうか。やっぱりテメェは悪だ!」

「「悪」は“敗者”の事、「善」は“勝者”の事でしょう?」

「だったら、やっぱりテメェが悪じゃねぇか!!」

 

上条は文字通り完全にキレていた。長い時間を共に過ごした“家族”を、酷い目に遭わされたのだ。上条当麻の怒りのボルテージは完全に振り切っている。

そう。

普段なら手加減して放てるその拳も、手加減など出来る訳もない。

 

 

―――必殺「マジシリーズ。マジ殴り」―――

 

 

スペルカードとして作られているその技も、上条の宣言なしに全力で放たれた。

瞬間。

音が消えた。鼓膜が破れたのではないかと疑うほど、何も聞こえなかった。

轟音は遅れて響く? 否。その後も何も響かなかった。少しして聞こえてきたのは、空気がその場に集まる音だった。

勢い良く、そこに空気が集まってくる。掃除機のような音を立て、上条達がいる場所に。

 

「な、なに・・・が・・・・・・」

「知らねーよ」

 

幽々子の驚いたような声に上条はそう答えた。

音が消えたのは空気がなかったから。空気が消えたのは上条の拳に叩き潰された空気が、周りの空気と共に、前方へ吹き飛んでいったから。

いつもなら簡単に理解できるはずの原理を上条は理解する事を放棄していた

ただ目的は、目の前の少女を。怒りにまかせてぶん殴るだけだ。

 

「テメェが何の為にこんな事をしてるのかとか、本当にどうでもいい。例えソレが、大切な誰かを守る為であっても、助ける為であっても、明日を生かす為であったとしても! テメェは()()霊夢と魔理沙を傷付けた。それだけで理由は十分だ。イイか! テメェはラスボスらしくデッカイ椅子に座ってふんぞりかえってな! テメェは、絶対俺に勝てないんだからな!!」

 

上条は叫ぶだけ叫ぶと、その右拳を血が滲むほど強く握りしめる。

 

「・・・良いぜ! テメェが、自分の目的の為なら他人を傷付けるのも躊躇わないというのなら―――

 

―――まずはその幻想をぶち殺す!!」

 

 

―――幻符「幻想殺し(イマジンブレイカー)」―――

 

 

それは“上条当麻”の性とも言える。握った握り拳は、大切な物の為に振るわれる。その馬鹿げた強さは『人の為』という厚すぎるメッキの奥に隠された『上条の我が儘』の為に使われる。

・・・はて、一体どれだけメッキを剥がしたら上条当麻の我が儘は現われるのだろう?

 

「・・・あなた、そこの博麗の巫女より強いわね。何者?」

「上条当麻。趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ」

「あら。今代の博麗の巫女はそこで伸びているようだけど」

「そうだな。だから、俺が解決する」

 

そして上条は目の前の敵に、近づく為に跳ぶ。

 

「お前の目的もここで終わりだ」

「・・・そうみたいね」

「・・・行くぞ」

 

 

―――連続「普通のパンチ」―――

 

 

幽々子相手に遠慮の無い拳が叩き込まれた。

原始的な暴力の音が響き、少女の体が吹き飛んでいく。

異変は解決したかに思われた。

 

「ご主人! あの桜を咲かせてはダメです!!」

「は? え? お、おう!」

 

上条は訳が分からなかったが、とりあえず全力で跳んで一番大きな桜の幹に触れる。

その瞬間。西行妖と呼ばれる桜に関係する幻想が上条の頭に流れ込んでくる。

 

(えーと。咲かせないようにするには、これに春を集めている術式がある訳だから・・・どれだ?)

 

上条は目を瞑ったまま、全神経を桜の中へ持っていく。

 

(むやみやたらにぶっ壊すと、この桜を咲かせる事と同義になってしまうからな・・・コイツか!!)

 

『おっしゃぁ!!』と上条は叫んで右手に幻想紋を浮かび上がらせる。

 

「消してこい。幻想喰い。幻想郷へ春を!!」

 

幻想喰いの発動音が冥界、いや幻想郷中に響く。異変は解決したようだ。

 




幽々子様とか口調がおかしい希ガス。ショアーン

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