スパロボVの存在を昨日初めて知りました…。閃ハサとクロスボーンの参戦が嬉しすぎますね。バンナムぅ…アニメ化するんだろぉ…?
プラネテューヌ地下ではジャックが奮闘していた。
継続的に注ぎ込まれるビフロンスのウイルスを撃退しているのだ。
だがその処理も出来なくなりかけていた。ジャックの体は既に火がつきかけていた。
「このままでは……間に合わん……!こうなれば……!」
例えるならばそれは軍隊から家を守る1人の戦士。軍隊という強力かつ多勢に対しジャックは今まで家を守り通してきたようなものだ。
当然それだけの負担はジャックにかかり、その1つとしてジャックの体に溜まる熱が挙げられた。
「意識を、データを、中に……!」
ジャックの中の全てのデータ、ジャックを構成する全てがコンピューターの中に注ぎ込まれていく。
ジャックの意識を全てコンピューターの中に注ぎ込めば、処理速度を高めることができ、その上負担もかかりにくくなる。
しかし直接ジャックという人格を書き換えられるというリスクもある。
電脳世界の中にジャックというデータが保存された。
現実のジャックの体は火がついてしまい、朽ちていく。
「っ、これは……⁉︎」
目の前にはビフロンスのウイルスという軍隊が迫っていた。
しかしその軍隊は横から入ってきた新たな軍隊に消滅させられる。
「何者だ、お前達は……!」
「……私達は、ハッカーよ」
「ハッカー………」
「リーンボックスのね」
ーーーーーーーー
「……………」
一国の代表が頭を下げた。だがその事態以上にイストワールの必死さが伝わってみんなが押し黙る。
すると世界中の画面が入れ替わり、緑の髪をした女を映し出した。
「あれ………!」
「チカさん……!」
リーンボックスの教祖、チカだ。
チカは真っ直ぐに前を向いて話し始めた。
「リーンボックスの教祖、チカです。単刀直入に言います、彼に協力してあげてください」
『…………!』
「アタクシは彼とはなんの接点もありませんが……それでもアタクシは彼の戦いを見ていました。人柄がわからなくとも、顔も知らぬとも、それだけで彼は信頼に値する人物だとアタクシは思いました」
「チカさん……」
「何より、お姉……ベール様が話すのです。彼の話を。リーンボックスのみなさん、そして世界中の皆さん。どうか、彼に気持ちを届けてはいただけないでしょうか」
チカすらも頭を下げた。
するとプラネテューヌの広場にいる人の1人が腕を組んで目を閉じ、祈りの姿勢をとった。
そこから小さな小さな緑色の光が現れてミズキの方へと寄ってくる。
「人の……心、が……」
「あ、集まるですぅ。また、あの時みたいに……」
空からも小さくて微かな光がやってくる。
すると画面の向こうのチカは頭を上げた。
「リーンボックスだけではありません。ミナ」
チカが名前を呼ぶと画面がパッと入れ替わる。
そこに立っていたのはルウィーの教祖、西沢ミナだった。
「ルウィーの教祖、ミナです。今までの戦い、拝見させていただきました。そして私は直接は知らなくとも、間接的にガンダムを知っています」
「世界が……1つになってく……?」
5pb.がポツリと零す。
「ルウィーで起きた誘拐事件、ロム様とラム様を助けたのはガンダムだと聞いています。ならば、私は彼を信じます。イストワールが動いたということはそういうことです。私が、私達が動いたということはそういうことなのです」
ミナが毅然とした態度で言い放つ。
「ルウィーの皆さん、どうか彼に想いを伝えてください。世界中の皆さんも、どうか、頼みます」
ぺこりと頭を下げるミナ。そしてまた画面が移り変わり、ラステイションの教祖であるケイが現れた。
「ラステイションの教祖、神宮寺ケイだ。まあ、予測がついていると思うが……ラステイションも彼の支援を頼みたい。これは僕の独断ではあるが……きっとノワールもユニもそう言うはずだ」
「世界中が……ミズキに味方してる……」
「僕は勝つ確率が少しでも高い方を選ぶ。決して損はないはずだ。簡単なことだ。……信じればいい」
ケイはふっと鼻で笑って後ろを振り向く。
そこで通信は途切れた。アブネスが流している映像が世界にまた流れる。
空の向こうから緑色の光が満ち始める。その光は誰にでも見えるほどはっきりしていて誰にでもわかるほど暖かい。
周りの人が祈る度にそこから緑色の光は放たれて飛んでいく。それを見た人は信じようという気持ちになる。
ミズキの体を緑色の光が包み込んでいく。
「ああ………暖かい……よ……」
ミズキが穏やかな顔をして少し微笑む。
緑色の光はミズキを支えるように周りに集まり、ミズキはその光の力を借りてゆっくりながらも立ち上がり始めた。
「っ、はあ、ふぅ………クス、クス……アブネス、主役を映してよ……。主人公は、僕だよ……?」
「で、でも……!」
「いいから……。少し、情けないかもだけど……うっ」
それでもふらつくミズキを両端からアイエフとコンパが支えた。
「いいのよ、ミズキ……。こうなったらやれるだけやりきりなさい」
「絶対、死んじゃダメですよ!怪我もです!」
「……うん。大丈夫、楽勝だよ……!」
2人の体に支えられながらミズキは震えながらも立ち上がる。ミズキの体は緑の光に包まれて、ミズキに触れているアイエフとコンパにもその光の暖かさが伝わる。
アブネスはミズキに向かってカメラを向けた。
「っ、僕は……クスキ・ミズキです。あまり、っふぅ……たくさんのことは、言えな、うぐっ、ぶぉえっ!」
「ミズキ!」
ミズキの体が負荷に耐えられず、口から血を吐く。まだ電撃にやられた内臓は回復しきってないのだ。
「ミズキ、やっぱり!」
「ダメだアブネス!僕を、撮っていて……!」
ミズキは口の端から血を流しながらカメラの向こうを見つめる。
「感じます、みんなの声を、気持ちを……!僕がこの場でただ1つ、約束できることは……!みんなを、守り切るということだけです……!」
息を切れ切れにしてボロボロで。
それでもミズキはしっかりと瞳に光を宿して世界を見つめた。
「僕に力を貸してください……!僕が、みんなを助けに行きます……!」
ーーーーーーーー
ノワールの左肩に収納されたソードビットが射出される。
「ソードビット!」
「何か言った?」
「っ⁉︎あうっ!」
ビフロンスにソードビットが届こうとした瞬間、ビフロンスはノワールの目の前にまで迫っていた。
ビフロンスはノワールに回し蹴りをして蹴飛ばす。
「私も、バスターソードで……」
ビフロンスの手に巨大な赤いバスターソードが握られた。
ビフロンスは身の丈ほどもあるバスターソードを片手で軽々と振り回しながらノワールへと迫る。
「薪割りみたいに、真っ二つ☆」
「おやめなさい!」
横からベールが飛び出す。
2本持った槍で素早い連撃を繰り出したがビフロンスはその間をするりと抜けながら体を横にして蹴りをベールの喉に食らわす。
「うぐっ……!」
「これで御陀仏!ヒヒヒッ!」
「ああっ!」
怯んだベールに思い切りバスターソードを振り下ろす。ベールは槍を交差させて受けたが叩き落とされる。
「後ろ」
そしてすぐさま振り向いてホーミングレーザーを発射する。
それは後ろから迫っていたロムとラムに向かって飛んでいく。
「ラムちゃん……!きゃあっ!」
ロムが前に出て防御魔法を展開するが吹き飛ばされる。
「ロムちゃん!ああっ!」
それに気を取られたラムもビームの直撃を食らってしまう。
「ゼロ!私に未来を見せろってんだ!どうしたってんだよ!」
「私に勝てる未来……見えない?」
「うっ、くっ!」
ニタァと笑うビフロンスに向かってブランが羽を散らしながら突撃する。
斧を振り回してビフロンスを攻撃するが全てヒラリヒラリと避けられてしまう。
「んん、反応速度が遅いわよ?」
「クッソォォッ!」
「それ、ほい」
「うあっ、がっ!」
バスターソードの柄で腹を打ち、怯んだ隙にバスターソードの腹でブランを吹き飛ばす。
「なんなのよ、なんなのよ、アナタ!」
「女神様よ。いいわ、その表情……絶望に呑まれかけてる」
「っ!」
ユニが恐れに呑まれたように後ろに下がる。
「いいのよ、身を任せて。それは間違った気持ちじゃないわ?ただ、体の力を抜いて……」
「やめてくださいっ!」
「しつこいわねぇ、アナタも」
斬りかかるネプギアをビフロンスは片手でバスターソードで持ち、受け止めた。
「あと少しで世界が平和になるというのに……どうして⁉︎」
「この世界を絶望に染めるなんて、許せるはずがありません!」
「それはエゴよ!この世には絶望を望む人がいる……それは私が顕現していることからも明らかよ!」
「そんな、こと……!」
「やっぱりアナタ達って信じてくれないの?どうしても平和を拒むっていうなら……」
ビフロンスの体から赤黒い瘴気が溢れ出す。
「これ、アンチエナジー……⁉︎」
ネプギアがその瘴気の正体に気づく。
ビフロンスは自分に蓄積しているアンチエナジーを全て解放したのだ。
「遊びは終わり。……殺すしかないわ」
「っ!」
ビフロンスの体をアンチクリスタルが覆い、鎧のようになっていく。
ビフロンスはネプギアを蹴飛ばしてバスターソードを投げつけた。
「あっ!」
ネプギアはそれを受け止められず吹き飛ばされる。
「さて………っ⁉︎」
ネプギアに向かおうとビフロンスが構えた瞬間、異変に気付く。
「この……光は……!」
「まさか、ミズキ⁉︎」
女神達も異変に気付いた。
空を緑色の淡い光が飛び交っているのだ。その光はミズキに向かって集まっていく。
「この光……執事さんだ……!」
「あの時と、同じね!」
どんどん光は増えて行き、暗雲をも吹き飛ばして空を覆う。
そして奇跡は起こった。
ーーーーーーーー
「そんな……この、光は……」
イストワールが驚愕の声を漏らす。
緑の光に覆われたミズキの前にはキラキラと輝くクリスタルがあった。
「シェアクリスタル、ですって⁉︎」
アイエフがその正体に気づく。
「みずみず、神様だったですか……⁉︎」
「……ううん。きっと、みんなが僕と繋がったように……僕もやっとみんなと繋がれたってことなんだ」
ミズキはもうアイエフとコンパの支えを必要としなかった。
確かな足取りでそのクリスタルに向かって歩き始める。
きっと、2度も女神の心に触れたから。ミズキがシェアクリスタルを顕現させたのはただそれだけの理由なのだ。
ミズキがシェアクリスタルを掴もうと手を伸ばす。
「……………!」
瞬間、ミズキは気配を感じて後ろを振り返る。
そこにはかつての友達が並んでこちらを見ている。
半透明の体で手を振っている。その姿はミズキだけではなくその場にいる全ての人間に見えていた。
「シルヴィア……!ジョー、カレン……!」
『……久しぶりだな』
『やっほ〜だにゃ〜。しっかしあれだにゃ、随分ガールフレンドが増えたにゃ〜。(仮)とかじゃにゃいよね?』
『でも私には確信できるわね。アンタまだ童貞でしょ!気配でわかるからね!』
『処女に言われたくはないだろうな』
『まったくだにゃ』
『うっさいそこのバカップル!処女はステータスなの!』
現れるなり喧嘩を始める3人。
周りの人間はぽかんとしているが、それを見てミズキは腹を抑えて笑い始めた。
「ぷくっ、クス、クスクス……!ふふっ……!や、やめてよ……!おかしくって……ぐすっ、涙、が……!涙が、出てくるよ……!」
『ほらほら、泣かない泣かない!せっかく会ってあげてるのに何よその顔は!』
「うっさい……クスクス、バーカ……!」
『なっ、バカ呼ばわり⁉︎ふ〜ん、そういうこと言うのね⁉︎こうなったら勝負よ!私の生涯において唯一勝てなかったあの勝負でね!』
『子供にどちらが懐かれるか……か?』
『ええ!』
『勝敗は見えてるにゃ。シルヴィアに勝ち目はないにゃ』
『なんですって〜⁉︎』
「クスクス……ただそれだけのために……!ここに来たの……⁉︎」
『………ええ。ミズキの顔が辛気臭くなってないかな〜って思ってたけど、あんまり心配することはないみたいね』
『楽しそうだ。羨ましいよ』
『そういうことだにゃ。それに、来たのは私達だけじゃにゃいよ?』
空から何人もの子供が舞い降りてくる。
手を繋いでいたり、はしゃいでいたり、泣いていたり、じっと大人しくしてたり、いろんな子供達だ。
「みんな、も……」
『仕方ないから手伝ってあげる。私達は天下無敵の子供たち!仲間のピンチにはいつだって駆けつける!ってね』
子供達はシェアクリスタルに向かって歩いていく。シェアクリスタルに触れたものから笑い声をあげて光になり、シェアクリスタルの一部になる。そしてシェアクリスタルはどんどん輝きと大きさを増していった。
『さあ、行くわよ!』
『ん〜にゃ、肩が凝りそうだにゃ〜』
『やる気が出ないな』
『ちょっとアンタ達やる気出しなさいよ!』
シルヴィア、カレン、ジョーもシェアクリスタルに向かって歩いて行く。
その背中をミズキは呼び止めた。
「ま、待って!」
『ん?何よ』
「その……!僕は、あの時笑えてたかな……⁉︎みんなが笑ってた時、僕もみんなを笑顔で見送れた……⁉︎」
別れの時。みんなが笑って子供たちの紋章を見せ、笑顔で見送ってくれた。僕だって笑顔で見送りたくて、涙が溢れる顔で笑ったんだと思う。今の今までわからなかった疑問。
シルヴィアは即答する。
『バ〜カ!いい笑顔だったわよ!』
3人がニカッと笑って子供たちの炎の紋章を見せる。
ミズキはまた視界が歪む。だが今度は自分でも分かるほど笑えた。
「またね、バ〜カ!」
3人も光になってシェアクリスタルの一部になった。
「……………」
そんな様子をみんなは黙って見ていた。
ほんの少しの再開。次元を超え、死を超え、ただ友人のためだけに駆けつけた子供たち。
ミズキは今度こそシェアクリスタルに手を伸ばす。
「………みんな、行ってくる。晩御飯はネズミでいい?」
「………好きにしなさい。ネズミだろうがコウモリだろうが、なんだって作ってやるわよ!」
「行ってらっしゃいです!」
「どうか、頑張ってください」
「バッチリ撮ってあげるわよ!」
「ミズキ!ボクも歌うから!」
みんなが手を振ってくれる。それを見て少し微笑んでからミズキはシェアクリスタルを握り締めた。
「変身」
死人との再会。イメージはマリーダさんみたいなイメージで。