アブネスがカメラを弄ってなんとかネットワークに接続しようと奮闘する。
「動いて、動きなさいよ!」
「大丈夫です、きっとすぐ……!」
もう何度目かわからない配信開始のボタンの連打。
そのボタンをタップした時、世界中のモニターがバックされた!
「え⁉︎」
「やった……やりました!ジャックさんです!」
「な、何が何だかわからないけど……とにかく、接続されたなら!」
アブネスがカメラの前に立った。
「みんな、あの戦いの様子が見えるかしら⁉︎今プラネテューヌは突如現れた敵にシェアを奪われ、戦えない状況にあるわ!女神様も不甲斐ないことにやられてしまった!けど、あそこで戦っているガンダムが、アナタ達見えるでしょ⁉︎」
世界中にνとビフロンスの戦いが中継され始めた。
「あの機械の名前はガンダム!ある時はリーンボックスで女神を救い!ある時はR18アイランドに現れた化け物を退治した!英雄、ガンダムよ!」
生きることを諦めかけていた世界の人々の瞳に希望が宿る。
間違いなくあのガンダムはビフロンス相手に互角の戦闘をしている。もしかしたら、勝てるかもしれないのだ。
「各国に救援を求めるわ!世界に終わりが来ても、最後まで戦ってる人があそこにいるの!決して絶望してはダメ!世界中の幼年幼女が殺されてたまるものですか!」
世界の人々にほんの少しの希望の火が宿った。
「何よ、いつの間に私のハックが……」
《ジャックだよ!いくら君とて、戦闘中にハックなんてできないでしょ⁉︎》
「あら、私には無敵の次元フィールドがあるのよ?だから……」
《君は嘘もヘタだ!無敵のフィールドがあるのなら、君は僕に攻撃なんかする⁉︎僕の攻撃を防いでいるのは、僕にフィールドを破られる可能性があるからだ!》
「……まあ、当たらずとも遠からず。次元フィールドは無敵よ?けれど、限界時間がある」
νから放たれるビームがビフロンスの手前で湾曲して全て彼方へと消えていく。
ビフロンスが使用している次元フィールドというのはビフロンスを覆う空間の次元を湾曲、そこを通ろうとするものは歪んだ次元のために真っ直ぐ進むはずが結果として湾曲させるフィールドだ。
だがそれを常備稼働させるには膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーはプラネテューヌのシェアだった。だがプラネテューヌのシェアのほぼ全てを使っても稼働時間はほんの数分、再充填には数時間という使い勝手の悪いフィールドだ。
「けれど、私はまだ本当の力の半分も出していないのよ?」
《っ、わかってるよ、それくらい!1割も出し切ってないでしょ、この程度!》
「さすが、私と2度合間見えただけある。それじゃ、行ってみましょうか。変身」
またビフロンスが変身を重ねる。変身した様子はほんの少し、体を覆うスーツに赤黒いラインが入った程度だが……。
「人は見かけによらぬもの。アナタには伝わる?この想い」
《この、渦巻く黒い感情は……!》
「そう、アンチエナジー」
ビフロンスの左手に赤黒い結晶が現れた。
「他人の信仰じゃない、私の意思で強くなれる力。例えみんながいなくなっても、私が諦めさえしなければ、この力は私に応えてくれる!」
《だから、そういうセリフを吐くなぁぁっ!》
νが周りの擬似ファンネルを撃ち落としながらフィンファンネルを収納し、ビフロンスへと盾のビームキャノンを撃ちながら接近する。
「無駄よ無駄。次元フィールド」
《うくっ!》
「エナジー、マッチング完了。吹き上がれ、エナジー!」
ビフロンスの右手にはシェアクリスタルが現れ、その2つをビフロンスは融合させた。
掌の中には不安定に渦巻き、互いを砕き合う光と赤黒さのクリスタルがあった。
「互いを破壊し合うエナジー……。私はエナジーにだって喧嘩してもらいたくない。だから、ほら、相反する2つのエナジーだって共存できた……」
《バカな!シェアエナジーとアンチエナジーのツインドライブ……⁉︎そんなことが……!》
「互いを壊し合おうとして、だからこそ強くなる。ふふ……これが私の第2形態」
生まれる圧倒的なエネルギーは先程の比ではない。
「これで……次元フィールドは1日くらい保つかしらね?」
《くそッ、バケモノめっ!》
ーーーーーーーー
ブランはあの世界をジャックした放送があってからすぐにルウィーに戻ってきていた。あんな放送があるなら国民がパニックに陥ることが確実だからだ。
教会に降り立ったブランの元にロムとラムが駆け寄る。
「お姉ちゃん!」
「お姉ちゃん……!」
「ロム、ラム、国民はどうなってる……⁉︎もしや、暴動なんて……!」
「ち、違うのお姉ちゃん!」
「みんな、落ち着いてる……!」
「え……?」
あんな放送を一般市民が見てパニックにならないとは思えない。既に対処したのか?
「お姉ちゃん、これ見て!今これが全世界で放送されてるの!」
「執事さんが、頑張ってる……!」
「これは……」
ラムが差し出したパソコンの画面には空中の戦いが映されていた。
ガンダムと謎の赤黒い女。今はガンダムが劣勢に見える。
「助けにいかなきゃ……!」
「さっきから執事さんの攻撃、1つも当たってないの!このままじゃ負けちゃう!」
「……でも、この国は……」
「ダメ……!ダメなの……!嫌な予感がするから、このままじゃダメなの……!」
ロムが必死に訴えかけてくる。最近身についたという不思議な予知能力か。
……この国に残って国民を守ることも必要だ。だがあの女を倒さなければ世界が滅びて国どころの話ではなくなる。何より、ミズキ1人にやらせていいのだろうか?
また1人で戦っている。
1人で戦おうとしている。
そんなの、負けるに決まってるのに……!
「……行くわよ。ロム、ラム、準備はいい?」
「お姉ちゃん……!うん!」
「いつでも、行ける……!」
ーーーーーーーー
νとビフロンスの戦いは熾烈を極めていた。
いや、それは最早戦いではなかった。ただビフロンスがνを痛ぶるだけだ。
「ホーミングレーザー!」
《くっ、バリア、保つかっ……⁉︎》
自分には全く攻撃が当たらず、相手には強力な攻撃を放てる。ミズキはチートだと叫びたくなったが、やめた。そのチートがビフロンスなのだ。そのチートに打ち勝てなければビフロンスには勝てない。
「ビームがダメなら、ミサイルよ」
《くそっ!》
今度はミサイルがνに向かって飛んで行く。ミズキはバルカン砲でいくつかを撃ち落とすが大多数が仕留めきれない。
《っ、ファンネルで!》
フィンファンネルもバリアを解除してミサイルへとビームを放つ。
大爆発が起こるがその中をすり抜けてきたミサイルが数発νに迫った。
《うわああっ!》
「今よ、擬似ファンネル!」
体勢を崩したνに擬似ファンネルが迫る。
νは不自然な体勢から赤黒い結晶を撃ち落そうとするが、何本かの決勝はνの体を切りつけて行く。
《くっ、ああっ!》
「まだよ、擬似ファンネル!」
何度も反射する結晶がνの装甲を切り裂いて行く。
νは完全に体勢を崩して今はただ悪足掻きで体を動かしているに過ぎなかった。
「シェアもアンチも……私は全ての感情を理解し、支配する」
《お前に人の気持ちが、わかるものかあっ!ぐあっ!》
「カオス・ビーム」
《っ、来て!フィンファンネル!》
螺旋を描くビームがνを消し去らんと周りの空気を消し去りながら向かう。
フィンファンネルがバリアを張ったがあまりの威力にバリアはヒビ割れ始めた。
《マズい……⁉︎》
「私の計算じゃ、約0.142566925秒しか保たないわよ」
その言の通り、ファンネルバリアはいとも容易く砕け散る。
《………!》
そのビームはνの目前にまで迫った。
没案
「私の計算じゃ、約1145148101919秒しか保たないわよ」
《汚い!》
純正太陽炉と擬似太陽炉のマッチング的な?両方打ち消しあうのでホワイトホールとブラックボールみたいな?水と油?