超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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あと少し、このまま勢いに乗って突っ走りましょう。


ビフロンス、復活

ミズキとブランが歩を進めてアノネデスへと近付く。ブランはノワールの隣で止まるが、ミズキはもう少し前に出た。

 

(ちょっと、なんでアンタまで一緒にいるのよ)

(……成り行き、としか)

(どういう成り行きでオカマの戦犯のところに一緒に訪ねに行くみたいなことになるわけ⁉︎)

(……私もわからなくなってきた)

 

ノワールとブランは一緒に頭を抱えた。

だがミズキは真剣な瞳でアノネデスを見据えた。

 

「アノネデス、君が知っていることを教えてくれない?今、他国のシェアがプラネテューヌに吸われていてーーー」

「ああ、それね。それなら今ノワールちゃんに言おうとしてたとこ。ちょうどいいからアナタ達にも話してあげる」

「シェアが吸われた⁉︎ちょっと、それってどういうーーー!」

「まあまあ、ノワールちゃん。まずはアタシの話を聞いて?」

 

アノネデスが足を組み替えた。

 

「実はね、ここ最近アタシ暇だったじゃない?だから、クライアントについて調べてたの」

「君に指示を下していた、という人のことだね」

「ええ、そうよ。そしたらとんでもない人の名前が出てきてねえ……」

「………誰、その人」

「キセイジョウ・レイ。またの名を……

 

『ビフロンス』

 

と言うわね」

 

「ーーーーッ!」

 

ミズキが息を飲む。そして膝はガクガクと震え、崩れ落ちた。

 

「ミズキ⁉︎」

「どうしたの、ミズキ……!」

「あ、あ………!ビフロンス……っ!」

 

体を抱えてブルブルと震えるミズキにノワールとブランが走り寄る。

 

「プラネテューヌにシェアが集まってるって言ったわよね?確か、彼女が投獄されているのもプラネテューヌ……。もしかして、プラネテューヌの女神様……危ないんじゃない?」

「っ!」

 

ミズキがバッと顔を上げる。

 

「……っ、僕が行くしか……っ、ないっ!」

 

ミズキが駆け出そうとするがそれを2人が止めた。

 

「待ちなさい!アナタ、また1人で戦う気⁉︎」

「私達のこと、信用できないの……⁉︎」

「……っ、僕、はっ……!今回ばかりは、一緒に来てくれって、言えない……!」

 

ミズキの瞳は動揺に震えている。口も戦慄いて、まるでとてつもない恐れに囚われてしまったようだ。

 

「ノワール、ブラン……!怖い、怖いんだ……っ!君達を、失いたくはないよ……!」

 

ミズキが2人を抱き締めた。

そこからミズキの震えが伝わってくる。2人は仮にも恋慕を抱いた相手に抱き締められたというのに、一片の嬉しさもなかった。

ミズキの震えから、恐れと悲しみが伝わってくるからだ。

 

「っ、ごめん……!」

 

ミズキはドアを開いて走って行ってしまった。

ノワールとブランはそこに立ち尽くすだけだ。

 

「ミズキ………」

「どういう、ことなの⁉︎アノネデス、説明しなさい!」

「ん〜?アタシもねぇ、あんまり大したことはわかってないの。でも……」

 

アノネデスが頬に指を当てるような仕草をする。

 

「アンチクリスタルの元凶で……強化人間の技術を提供し……他人を操る瘴気をアタシに送りつけ……モンスターをも操る機械もアタシに送りつけた。そしてシェアを集める機械を作れたのなら……シェアを奪う機械だって、作れるんじゃないかしら?」

「……何者よ、そいつ……!」

「……天才、じゃないかしら?」

 

アノネデスは鋼鉄の仮面の下でほんの少しだけ微笑んだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その頃、プラネテューヌではアイエフがイストワールの部屋に入って来ていた。隣には大きく輝くシェアクリスタルがある。

 

「私が、挨拶を……ですか?」

「はい。ネプ子が何処か行ったっきり帰って来なくって……代わりに頼めないでしょうか」

「ええ、構いませんよ。構いません、よ?」

「?なんですか、今の間は?」

「い、いえなんでもありません。んんっ」

 

咳払いをして自分を落ち着ける。

ずっと前から考え込んで、今日やっとジャックへの答えを決めたのだ。

本番は夜、ジャックを誘って酒を飲みながらその答えを伝えるだけ……だがイストワールはとても平然とできる気がしなかった。

そのために精神統一に関する情報を片っ端から漁りに漁って今は『アニ○で分かる心療内科』を見ていたところだった。

しかしこの程度で心乱される程度ではまだまだらしい。

腕試しというか精神統一試しに大衆の前で話をするとしよう。

と、思って部屋を出ようとすると後方のシェアクリスタルがさらに眩く輝き始めた。

 

「な、なに⁉︎」

「これは……⁉︎」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

プラネテューヌの大地が隆起した。

ビルは倒壊し、道路はひび割れ、大陸が空中へと浮かんでいく。

暗雲がプラネテューヌを覆い尽くした。

そしてそれと同時にプラネテューヌの監獄は爆散した。

 

「…………すぅ〜……ああ、戦乱の香りがするわ……」

 

その瓦礫の中に立っていたのはキセイジョウ・レイ。

レイは自分の体を動かして骨を鳴らす。

 

「うん、うん。これで何とかなるかな。ヒヒッ」

 

その手には赤黒い瘴気が渦巻く。

 

「変身!」

 

その瘴気がレイを包み込む。

水色だったレイの髪は赤黒く染まり、体をスーツと装甲が覆う。翼のようなプロセッサユニットを装備した姿が、レイの変身した姿だ。

 

「長かった……。長かった……本当に。これで、やっと世界を平和に導ける……」

 

ふわりと空中に舞い上がって空中に浮遊する大陸の前で止まった。

 

「あ〜、あ〜、マイテス、マイクテスト〜。世界のみなさ〜ん、聞こえるでしょうか〜。ブラジルの人、聞こえますか〜!」

 

突如、世界中の電波がジャックされた。

世界のテレビというテレビ、ラジオというラジオ、形態という携帯、電子機器という電子機器にレイの声と映像が届く。

 

「私は新たな女神、ビフロンスです。私は争いをする気はありません。私は世界の平和を求めています。皆が争わずに、誰も死なない世界を……」

 

ビフロンスは悲痛に訴えるような声と顔で世界中へと訴えかけた。電波ジャックで狼狽えていた人達が安心しかけた瞬間、次の一言で凍りつく。

 

「というわけで。この巨大な大陸、ありますね?これは……てってれ〜!地球破壊爆弾〜!です!」

 

世界が声を失った瞬間だった。

 

「私は絶望による平和を求めます!みんな絶望すれば争いなんてする気はなくなるよね!そして私は恒久的な平和なんて無理だと思ってます!なので〜……あと〜、ん〜、どうしよう……1時間後!この爆弾は爆発しま〜すっ!」

 

キラッと星が散るようなウィンクで世界にそう告げるビフロンス。

だが瞬間、世界は大パニックに陥った。

 

「この爆弾が爆発する寸前……みんなが絶望して何もかもが嫌になった瞬間に、ほんの一瞬に……平和は訪れます!というわけでみんな!平和のために死んで?」

 

そうビフロンスが告げると世界中は電波ジャックから解放された。

 

「っ、アナタ、何者よ⁉︎」

「ん、あ〜、お久しブリーフ」

 

ビフロンスの前に戻ってきたネプテューヌが立ちはだかった。

そのネプテューヌにビフロンスはまるで友達にあったような顔で手を振る。

 

「アナタ、キセイジョウ・レイ……いや、違うわね」

「こう言えばわかるかな?んんっ……お姉ちゃん!」

「っ、アナタ!」

「ご名答!こんにちは、ビフロンスです!」

 

ぺこりとビフロンスは頭を下げる。

全ての行動が、まるでふざけているようにしか見えない。

 

「アナタ、何が目的よ!こんなデマ流して、世界を混乱させて!」

「デマじゃないわよ、本当よ?本当の本当にこの爆弾は1時間後にこの星を割るのよ?」

「っ、デタラメを!」

「だから、デタラメじゃないって。ん〜、どうすれば信じてもらえるかな〜」

 

ビフロンスは顎に手を当ててくるりくるりと宙返りして考える。

いや、本当は考えていないのだ。天才の彼女はこの程度のこと、考える必要がない。ただ考えているふりをしているだけ。

 

「あ!そうだ……。あのね、ここにミズキって人いるでしょ?」

「アナタ、なんでミズキを!」

「ミズキの次元滅ぼしたの……私よ?」

「………っ!」

 

ビフロンスがニヤリと冷たい笑みを浮かべた。その笑顔にネプテューヌはまるで体の底から凍ってしまうような薄ら寒さを覚えた。

 

「ん〜ふふふ、やっとのことで私から逃げられたのにねえ……また壊されちゃうなんて、運が悪い〜!いや、ある意味運が良い〜!」

「そうはさせないわ!この世界は、わたしが守る!」

「うん、いい決意だね。でも、私も平和のために譲れないものがある!」

 

ビフロンスが片手をあげると空中に浮いた大陸から巨大なビーム砲が姿を現した。

ビフロンスの前にはモニターが現れてそれに高速で文字を打ち込んでいく。

 

「キャリブレーション取りつつゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定……擬似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結……ニュートラルリンゲージ・ネットワーク再構築して〜、メタ運動野パラメータ更新、フィートフォワード制御再起動、伝達関数……うん、コリオリ偏差修正、運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動!」

 

ビフロンスがそう言いつつタップを終えるとビーム砲はその砲口を大きく開いた。

 

「じゃじゃ〜ん!すぅぱぁびぃむ砲!」

「……私を脅したって無駄よ!」

「ん〜?最初からキミを狙う気はないよ?」

 

ビーム砲は砲塔を旋回させて……教会へと狙いを定めた。

 

「っ⁉︎」

「ご〜、よ〜ん」

「やめなさい!」

「さ〜ん、ぜろ」

 

ネプテューヌがビーム砲の前に立ち塞がろうとしたが遅かった。

ビームは教会をなぎ払い、後方の街ごと教会を真っ二つに割った。

 

「はい、動かない。これ以上動いたらもう1回撃ち抜くよ?」

「……っ、アナタはっ!」

「アナタも平和のために協力してもらわなきゃ。私は諦めないよ?」

「そんな言葉、アナタが言う資格なんてないっ!」

「そうかな?例え道が間違っていたとしても……平和を求める心自体は尊いものだと思わない?」

「アナタは、平和なんて求めてない!」

「私は最初っから最後まで平和を求めてる。……アナタもそうでしょ?」

「っ、一緒にしないでぇっ!」

 

ネプテューヌが声を荒げる。

だがビフロンスはほんの少し微笑んでいるだけだ。

 

「私だって殺したくないもん!できれば殺したくない……けど、私には覚悟がある!平和のためなら、大量殺人犯になる覚悟だって……!」

「そんな、綺麗な言葉!嘘くさいのよ!」

「嘘じゃない!心の底からの言葉……だから、信じて!私を信じて、失望して?」

「っ、そんなことしないわ!守りきってみせる、みんな!」

 

ネプテューヌはビフロンスへと飛び立った。

ビフロンスは手に金属の鎌を召喚してそれを受け止めた。

 

「っ、なるほど。これじゃ私もびぃむ砲を操作できないもんね。うん、凄い凄い。思いつかなかった……」

「戯言っ!」

「でも、私は負けられない!世界の平和のためにも!」

「言わないでっ!」

「おいで、擬似ファンネル!」

「っ⁉︎」

 

ビフロンスの周りに赤黒い結晶で出来た刃が4本現れた。

それが発射されて防御魔法に当たって反射、ネプテューヌへと向かう。

 

「くっ、あの技を……!」

 

ネプテューヌが間合いを取った。

 

「擬似ファンネル、私に従え!」

「くっ、この程度なら!」

 

だが擬似ファンネルにはピーシェの体に取り憑いた時ほどのスピードがない。

ネプテューヌは難なくそれを避けるが、ビフロンスはさらに4つの赤黒い結晶の刃を召喚した。

 

「擬似ファンネル、やれるね?」

「っ、なにを⁉︎」

「気付いた?この射線上に……教会がある。アナタは受け止めるしかない……」

「まさか⁉︎」

「そう、そのまさか」

 

4つの擬似ファンネルは集合するとその中央にエネルギーがスパークする。

 

「くっ!」

 

ネプテューヌが防御魔法を展開してビームに備える。

 

「結晶化光線」

「きゃああああああっ!」

 

そこから発射された極太のビームがネプテューヌを襲う。

 

「ぐぐ、くっ、あっ!ああっ………!」

 

ネプテューヌが懸命にほんの少し防御魔法の角度を変えてビームのほとんどが教会を逸れて飛んでいく。

だがネプテューヌはその限りではない。

 

「あの時はできなかったから……今回はやろうね」

「………………」

 

ビームの照射が終わった時、ネプテューヌは磔にされて透明な結晶の中に閉じ込められていた。

 

「そうれっ」

 

ビフロンスが腕を振るとネプテューヌを閉じ込めた結晶が空中に浮いた大陸に固定された。

 

「磔遊び。アナタはどれだけ耐えられるかな?」

「………………」

 




ごちゃごちゃ言ってるのはストライク起動のセリフです。ビーム砲はストライクだった…?

ビフロンスは本当にただ平和を求めています。ただ平和は恒久的に存在するものではなくほんの一瞬のみ存在して、皆が絶望して生きる気力を無くした時にこそ、この世から争いがなくなると主張しています。ビフロンスはその絶望の手段にミズキの時は次元破壊爆弾、今回は地球破壊爆弾を使っています。
天才です。ええ。超弩級で。ただし、バカと天才は紙一重と言うようにビフロンスは知識はあってもそれしかありません。その時その時の状況判断とか知識じゃないものは苦手。常人並。ただし計算はできるという。

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