「わあ〜!」
ネプギアが驚きの声を上げる。目の前には光り輝く大きなシェアクリスタル。
「こんなに大きなシェアクリスタル、初めて見た……」
アイエフとコンパも驚いているようだ。
ネプテューヌは逆に得意げな顔でふんぞり返っている。
「そう!今プラネテューヌは大ブレイク中なんだよ!」
「下降傾向にあったシェアがある日を境に急に持ち直したんです。今はもう他の3国に大きな差をつける勢いで……」
「でも、なんでそんないきなり?」
「それが……よくわからないのです。エディンの侵攻を食い止めたのが理由だと思ったんですけど、他の国も侵攻を食い止めているわけですし……」
「でも、ねぷねぷ頑張ったですぅ」
「まあ、その成果が出たと考えてもいいかもね」
「そう!やっとみんながプラネテューヌの魅力に気付いたってことだよ!あ、でもそんなことより!」
ゴソゴソと懐から大きな紙を取り出すネプテューヌ。それを開くと、そこには遊園地の風景が描かれていた。
「みんなへのお礼ってことで!教会を一般開放して、祭りだよ!」
ーーーーーーーー
ラステイションの教会、そのベランダに4人の女神とミズキが集まっていた。
「そういうわけで!みんなにも来て欲しいの!」
「仕事もあると思うんだけど、来てくれると嬉しいなって」
ネプテューヌがチケットを広げる。
だが、他の女神はあまり乗り気ではないようだ。
「私は無理よ。シェアが減少しているのに、遊んでなんかいられないわ」
「え〜っ!」
「そんなくだらないことで呼ばないで。それじゃ、私は仕事があるから」
ブランが変身して飛ぼうとするのをミズキが止める。
「ブラン」
「……んだよ」
「また今度、落ち着いたらまた遊びに行っていいかな?」
「……好きにしろよ」
口をへの字に曲げてブランが飛んで行ってしまった。
「…………」
「ナイスフォローですわよ、ミズキ様」
「怒ってるというか……機嫌が悪いというか、焦っているというか。そんな感じだったからさ」
「シェアがプラネテューヌに負けたことを余程悔しく思ってるのよ。あんないきなり抜かれちゃ、私だってたまったもんじゃないわ」
ノワールもやれやれと言った風に首を振る。
「ま、すぐに追い越すけどね」
「クスクス、ネプテューヌも負けられないね」
「私も、帰らせていただきますわ。リーンボックスも、やはりシェアが減少傾向にありますので」
「出演を依頼してる、5pb.ちゃんは?」
「あの日はもともと私と番組に出演する予定ですの。申し訳ありませんわね」
「ううん。5pb.にもよろしくね」
「ええ。伝えておきますわ」
ベールも変身して飛んで行ってしまう。
「ノワールも、やっぱり無理かな?」
「ええ。見てなさい、すぐに追い越すんだから」
「……うん。でも、偶然、もしかしたら、暇になったら来てね!」
ネプテューヌがノワールの手に強引にチケットを握らせた。
そしてネプテューヌも変身する。
「ミズキは少しここに残るんでしょ?」
「うん。夜までには帰るよ」
「え?なにそれ聞いてないんだけど⁉︎」
「あれ?ネプテューヌから連絡したって……」
ミズキがノワールの方を向くとネプテューヌが意地悪そうな顔でこちらを見ていた。
(は、ハメたわね〜!)
「?」
「それじゃあね。私も準備で忙しいから!忙しいから!どうしても帰らなきゃいけないから!名残惜しいけど!」
「ア、ン、タ、ね〜っ!」
「怖い怖い。それじゃあね」
手を振ってネプテューヌは飛んで行ってしまった。
「クスクス、それじゃあ理由から説明したほうがいいかな?」
「……お願いするわ」
「実は、エディンが使ってたシェアを供給する装置を見たくって。ノワールがもう調査を始めてるって聞いてるけど、僕の手でも調べたいんだ」
「まあ、それは構わないけど……まだわからない部分ばかりよ?」
「いいからいいから。僕が満足したいだけだからさ」
クスクスと笑う。
ノワールはミズキを研究室へと連れて行ったのだった。
「……データ、見せてもらっていいかな?」
「ええ。わかったことがあったら教えて?」
ノワールに許可を取ってから書類を眺める。
と言ってもほとんど中身がないような書類なのだが。
プルルートが巨大な電撃球をぶつけても少し焦げる程度の耐久力。そしてシェアを集める未知の機能。
「何かわかった?」
「ううん、何もわからないや」
あっけらかんとした顔でそんなことを言うミズキ。ノワールは思わずずっこけそうになってしまった。
「でも、もしかしたら別次元の技術なのかもしれないね」
「その可能性はあるわね。アナタ然り、ピーシェ然り。それに、写真があったって聞いたけど」
「ああ、これだね」
ミズキが懐からボロボロの写真を取り出してノワールに見せた。
「……楽しそうね」
「うん。……その写真を持ってるってことは、十中八九『子供たち』の誰かがこの次元にいるってことだと思うんだ」
「それって……!もしかして、死んだと思ってた人が……!」
「うん。もしかしたら、生きていてくれてるかもしれない。でも、そうだとしたらその人は何故強化人間の技術なんて……」
謎ばかりだ。結局、エディンとの戦争が終わってもわからないことが多い。一件落着のようで残された課題は多いのだ。
「そうだ、アノネデスは何か知らないの?」
「………その名前はあまり聞きなくないわね」
「クスクス、あんなことがあったからね。でも、アノネデスも指示通りに動いてただけなんだっけ……」
「ええ。そもそも捕まえた時に黒幕のことは何も知らないと言っているしね。黒幕を捕まえるまでは、本当に終わったとは言えないわ」
2人は険しい表情で装置を見る。
ミズキは一抹の不安を感じていた。
アンチクリスタル。強化人間の技術。ピーシェの人格の変化。戦争。裏切り。洗脳。
ビフロンスを思い出す。
ミズキの次元を壊した張本人にして、自らも壊れた次元にいながらもその身の絶望をアンチクリスタルとしてゲイムギョウ界に召喚された魔女。
彼女は壊れた次元に放り込まれたのだ、いくらほとんど不死の体とは言っても次元の崩壊に勝てるはずはない。だから死んだはずなのだ。
ならば、ゲイムギョウ界で起こっている一連の騒動はビフロンスの遺志を継ぐ者の仕業か……?
「ミズキ?」
「え?ああ、ごめん、考え事してた」
「はぁ。困ったらちゃんと相談しなさいよ?私はミズキと一緒に戦うって決めたんだから」
「うん、ありがと。それじゃ僕はそろそろプラネテューヌに戻るね」
「ええ。またね、ミズキ」
「うん、またね」
ノワールと別れてプラネテューヌへと飛び立つ。
「………あ、また目撃されちゃうかもなあ」
ミズキは心持ち上空を飛んだ。
ぬぅぅぅわぁぁぁぁんテストが始まりそうだもぉぉぉん!
テストが始まるまでに休暇にしたいっすね〜…。