超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ハードボイルドを目指して。ハードボイルドって何なのかよくわかんないんですけどね。Wな仮面ライダーみたいな?


第9章〜最後の決戦。世界が繋がる瞬間、奇跡が起こる。ミズキ、最後の変身〜
取材と告白とハードボイルド


ピーシェのオモチャなどを片付けてプラネテューヌもピーシェが来る前に元通りだ。

だが彼女らがいた証はプルルートのぬいぐるみが残している。

だからみんながいなくなってもみんなを忘れたわけではない。

だから普通の穏やかな日常が戻って……来たわけではない。

主にプルルートのせいで。

 

「………疲れた」

「今回ばかりはミズキが悪い」

「あはは……取り付く島がないなあ」

 

ずっとノワールとブランに叱られていた。昨日のことだが、まだ疲れが取れていない。実際は2時間ぐらいだったが体感としてはメイドインヘブンで時空が一周するのを加速なしでまるまる体感した感じ。

ネプテューヌにも冷たい視線を向けられているとイストワールとジャックが寄ってきた。

 

「ミズキさん、お客さんですよ?」

「お客?僕に?誰だろう……」

 

恥ずかしながらあまり知り合いなどいないんだけど。

 

「もうそこのドアの前にいる。会うか?」

「うん。断る理由もないし。どなた様でーーー」

「ガラッ!ガラッ!ガラッ!」

「…………」

「どうも!幼年幼女の味方、アブネスよ!」

(………会ったことあるんだけどなあ……)

 

そういえば、あの時は仮面をしてたっけ。

 

「アナタがクスキ・ミズキで間違いないわね⁉︎」

「う、うん、まあ。その幼年幼女の味方さんが何の用かな?」

「取材を申し込ませてもらうわ!クスキ・ミズキ……いや、ガンダム!」

(………面倒なことになったかも……)

 

 

ーーーーーーーー

 

 

結局取材を受けることにしたミズキ。ただし、ネプテューヌが隣にいるという条件付きで。

 

「えと……なんでバレたのかな?」

 

ミズキが珍しく余裕のない感じだ。頬からは汗が垂れている。

 

「R18アイランドでアナタが変身したのを見たの。それを放送したら、リーンボックスでも他の変身の目撃情報があるじゃない」

「あ、ああ……。あの時の……」

「アンコウの時だよね?」

「うん。そういえば派手にやっちゃったからなあ……」

 

ポリポリと頬を掻く。

 

「ルウィーでは突如テーマパークの上で変形した鳥のような機体、そして最近はプラネテューヌを飛び回る機体とか戦争の時に空を飛ぶ機体が確認されたわ!」

「まあ、隠すつもりはなかったしね。最近は色々必死だったし」

「そして!私はこんな記事まで見つけたわよ!」

 

アブネスがカバンの中から取り出したのは折りたたまれた紙だ。

それを開くとコピーされた新聞記事が印刷されていた。

 

「なになに?『火事から子供を救った謎のロボット』〜⁉︎」

「ああ、それ僕だね」

 

目撃されたのはラステイション。偶然ミズキが火事の現場に遭遇したために中の人を救助した時の記事だろう。

 

「他にも他にも!これら全て、アナタの仕業でしょう⁉︎」

「まあね」

「やっぱり!早速取材させてもらうわよ!」

「ま、待ってよ!ミズキの過去はそんなホイホイ話せるようなものじゃ……!」

「まあまあ。別に僕の過去だけを話すわけじゃないんだし。それに掻い摘んでだけなら、教えても僕は大丈夫だよ」

「で、でも……」

「昔なら言えてない。この意味、わかるでしょ?」

「む、むぅ……」

 

ネプテューヌはニコリと笑うミズキの顔に黙り込んでしまう。

 

「それじゃ言いたくないことは言わなくていいわ、アナタが何者なのか教えて!」

「そうだね……僕は別次元から来たんだ。その次元はとある戦争で壊れてしまって……僕だけがこの次元にたどり着いた、って感じかな」

「ふんふん」

「それでここに居候させてもらってる感じ。僕はその戦争で戦ってから、変身できるんだ」

「なるほどね……。それじゃ、あの変身した姿は?何種類もあるわよね?」

「うん。僕の次元で遥か昔に現れた英雄、ガンダムだよ。何億年もの時間をかけて何回か現れてるから、たくさんのバリエーションがあるんだ」

 

つらつらと質問されたことに答え、また一部は答えるのを拒否していく。

 

「そろそろ時間かな。悪いけど、また今度来てくれるかな?」

「ええ、わかったわ。今日はありがとう」

「あれ?案外素直にお礼言うね?」

「私をなんだと思ってるのよ!まあ、聞いた話はとても笑えるようはものではないし……何より!火事から幼年幼女を救ったところが尊敬に値するわ!」

「あ、あっそ……」

 

ネプテューヌが頬をピクピクさせる。

 

「これからも取材頼んでいいかしら!その話を本か何かで出版すれば、きっと多くの人に平和が伝わるわ!特に戦争後まだ間もないこの時期なら尚更よ!」

「まあ、伝わってることだけなら。でも僕のことは教えないよ?」

「構わないわよ!幼年幼女の味方の傷口に塩を塗るような真似はしないわ!それじゃ、またよろしくね!」

 

アブネスは小走りでドアを開けて出て行く。

 

「案外、悪い人じゃなかったのかも……」

「え〜っ⁉︎私あの人嫌い〜!」

「クスクス、確かに相性は悪いのかもね」

 

ミズキとネプテューヌはアブネスが見えなくなってから教会に戻った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

イストワールが小さな手でコンコンと部屋をノックする。

中から入っていいぞ、と声がした。

 

「失礼しますね」

 

ドアを開けて中に入る。

中にはジャックがいた。

 

「もう大丈夫ですか?」

「……すまないな。情けなかった」

「そんなことはありませんよ」

 

ニコリと笑ってジャックに近付く。

 

「……わざわざそれだけを確認しに来たのか?」

「ええ。わざわざです」

「……ふっ、そうか」

 

ジャックは軽く微笑む。

そしてイストワールに近付いていく。

 

「隣、いいか」

 

ジャックが指差す先はイストワールの座っている本だ。

 

「ええ、構いませんよ」

「失礼する」

 

イストワールが少し横にずれて空いたスペースにジャックが座る。

 

「ふむ。これは、なかなかどうして……」

「座り心地がいいでしょう?長年の改良の集大成です」

「得意げな顔をしているな。クク……」

 

ジャックは空中からショットグラスを持ち出し、透明な液体を少しだけ注ぐ。さらにその上からソーダが注がれた。

 

「なんですか、それ?」

「ジンだ。アルコール度数が高い酒として有名だな」

「うっ、すごい匂い……」

 

一応ソーダ割りしてあるのだが。

 

「まあ、酔わないとやってられないからな……」

「何がですか?」

「………すぐわかる」

 

ジャックは少しずつそれを飲んでいく。途中で口を離してイストワールにワイングラスを差し伸べた。

 

「チューハイくらいならある。飲むか?」

「まあ、それくらいなら」

 

よく冷えたチューハイが次元の穴から注がれる。グレープフルーツの爽やかな香りが辺りに弾けた。

 

「んっ……おいしいですね」

「ああ」

 

度数は低く、ほとんどジュースのようなチューハイをイストワールは喉を鳴らして飲み干していく。

ジャックはグビグビとジンを飲み干した。

 

「ジン、好きなんですか?」

「酔いたい時にこいつは1番だと個人的には思っている。他の酒でもいいのだが、今はこの辛い味が欲しくてな……」

「そうですか?お祝いなら、もうちょっと甘くても……」

「いいや、祝いの酒ではない。これは俺に決心をつけさせるための酒だからな」

「決心、ですか?なんの?」

「クク、すぐにわかる」

 

さっきと同じ答えをしてもう一杯ソーダ割りのジンを注ぐ。

 

「大丈夫ですか?そんなに度数の高いものを飲んで……」

「酒には強い方だ。それに、ほとんどソーダになっているしな」

 

またジンを飲み込んでいくジャック。それにならってイストワールもチューハイを飲み干した。

 

「……まあ、だいぶ酔えた。ちょうどいいか」

 

ポイとジャックがグラスを放り投げると次元の穴にグラスが消えていく。イストワールもその穴に向かって投げ入れるとワイングラスは穴に吸い込まれていった。

 

「わざわざ付き合ってくれてありがとうな」

「いえ。今度、一緒に飲むのもいいかもしれませんね」

 

ニコリと笑うイストワール。その顔を見つめたジャックの顔が赤いのは果たして酔いのせいだけなのか。

ジャックは本から立ち上がり空中にふわりと浮く。

 

「ジャックさん?そういえば、すぐにわかるって何がですか?」

 

 

「………好きだ、イストワール」

 

 

「…………はい?」

 

振り返ったジャックがいつもと変わらぬ鉄面皮でそんなことを言ってくる。

始めは冗談かと思ったが、ジャックの真剣な瞳に嘘はないと気付く。

 

「酒の力でも借りないと、こんなことは言えなかった。弱くてすまないな」

「……あ………と………」

「ククク、どうした。鳩が核弾頭を撃ち込まれたような顔をしているぞ」

 

ポカンと開いた口がふさがらない。

まず顔が熱くなり、その熱さが体中に伝わっていく。その熱さがイストワールの感覚を麻痺させて動くことができなくなる。

嫌でも瞳を逸らせない。

嫌でもないのだから、尚更の事。

 

「生憎、これでも心配性でな……。答えは今欲しい」

「あぅ、あぅあぅあぅ………」

 

ジャックがゆっくりとイストワールに近付いた。

その顎を指で軽く持ち上げ、上を向けさせる。

2人の鼻が触れ合う少し手前にまでジャックは顔を近づけてイストワールの瞳を真っ直ぐに見つめる。

 

「返事はいらん。ただ、瞳を閉じてくれ」

「……あ………!」

 

イストワールとジャックが見つめ合う。

瞬きすら許されないと思わせる程の真摯な瞳。その瞳を直視できず、顔を逸らそうとするがジャックに顎を抑えられているために出来ない。

せめてもの抵抗として瞳を逸らすが、ジャックが見つめていることは視界の端に映ってしまう。

 

「イストワール」

「……ご、ごめんなさいっ!」

 

イストワールがジャックの手から逃れて走るようにドアへと向かう。

だが部屋を出る直前、後ろを向いたまま耳まで真っ赤に染めたイストワールが声を漏らす。

 

「じ、準備できたら……飲みに、よ、呼びます、から……!」

「……出来るだけはやく頼む。クク……」

 

イストワールが逃げるように部屋から出て行く。

それを見届けてからジャックは机の端に足を組んで座る。

次元倉庫から缶ビールを取り出してプシュッと開ける。

 

「気長に待つか……。ククク……」

 

ビールをグビグビと飲み込んでいく。

 

「今日は浴びるほど飲むぞ。クックック……!」

 

ジャックは1人嬉しそうに酒を飲むのだった。




ジャックは自分を励ましてくれたイストワールに惚れた模様。
惚れたら間髪開けずに告白。アピールとかはなし。
新章はぶっちぎりですぐ終わると思います。すぐにアニメを終わらせましょうね。
なんか、とある感想が消えた?返信しようと思ったら消えたんですよね…。…?

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