超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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タイトルからして不安。


2人の敗北

《どおりゃあァァッ!》

 

フルクロスが右手のブランド・マーカーを四角錐状に展開してモンスターに殴りつけた。

モンスターの胸に大きくXの文字が刻まれる。

 

《噛ませ鳥は、下がってて!》

 

そしてシザーアンカーに接続したムラマサ・ブラスターで叩きつけて両断。モンスターは爆発して消えていった。

その閃光を背に浴びてフルクロスがアイカメラを光らせる。

その様子をアノネデスは天井に開いた穴から見ていた。横には拘束を解かれたレイもいる。

 

「なによ、あの役立たず……!もう、早く復旧しなさいよ、このバカシステム!」

「に、逃げましょうよ……!今ならまだ……!」

「うっさいわね!下がってなさいよ!」

 

アノネデスが後ろのレイに向かって声を荒げる。

アノネデスは自分のノートパソコンをコンソールに繋いでシステムを復旧しているところだった。

 

「よし、動くわね⁉︎」

 

ノートパソコンに外の戦闘の様子が映し出された。中央には狙いをつけるような印がある。

砲台の1つが復旧したのだ。アノネデスはフルクロスに照準を合わせようとするが、フルクロスの動きが早すぎてうまくいかない。

 

「いい子だから止まりなさいよ!もう!」

 

怒鳴ってもうまくいくはずがなく。

フルクロスの圧倒的なスピードは砲台のそれを完全に超えてしまっていた。

 

「ふ、ふふ……なら……!」

 

アノネデスは目標をフルクロスから変更して、プルルートへと狙いを定める。

 

「庇うしか、ないわよね……⁉︎死になさい、化物……!」

 

プルルートは鞭を振るっているために動いていない。

その腹の辺りに、しっかりと狙いを定めた。

 

《っ、なに⁉︎》

 

フルクロスは歪な音を出して動く砲台に気付いた。

あの動きは、完全にプルルートを狙っている。

 

《逃げて、プルルート!》

「あは、そんなの効かないわよぉ?」

 

移動させるためにピーコック・スマッシャーを撃つが鞭で弾かれた。

このままじゃ、プルルートが撃たれる!

 

「うふふ、庇わないのならあの子が死ぬだけ……!」

《プルルートォッ!》

 

フルクロスはプルルートに向かって急接近する。

 

「あらぁ?頭でもおかしくなったのかしらぁ⁉︎」

《うわっ、ぐっ、くっ!》

 

鞭の直撃を何度も食らうが御構い無しに怯まず進む。

 

《保ってね、僕のクロスボーンガンダム……!》

「さあ、時間切れ……ばいば〜い」

 

アノネデスが砲台の発射キーに指をかけてゆっくりと押した。

砲台から弾がプルルートに向かって真っ直ぐ飛んでいく。やはりプルルートは周りが見えてないらしく、弾を避けようともしない。

もう、間に合わないはず。

その距離をフルクロスは埋めてみせた!

 

《うおおおおおァァッ!》

 

顔のフェイスガードが展開して冷却を行う。それと同時にフルクロスはX字のブースターを全て後ろに向けて加速した!

 

《プルルート!》

 

プルルートをタックルして吹き飛ばす。

それと同時にフルクロスの背に砲弾が直撃した。

 

《うわあああぁぁっ!》

「なにやってるのぉ?そんなことしてると、殺しちゃうわよっ!」

 

体勢を崩したフルクロスに隙を与えずにプルルートが迫る。

 

《うわっ!あああっ!》

 

ムラマサ・ブラスターを持った手を弾かれて、胴がガラ空きになる。

 

「死んでぇぇっ!」

《プルーーーー…………!》

 

それは、最悪の光景だった。フルクロスの腹をプルルートの剣が貫通している。

フルクロスの手から武器が溢れ落ちて、変身が解除された。

ミズキの腹からは血が吹き出してしまっている。目も虚ろで体から徐々に力が抜けていく。

最悪なのは、それを見ているプルルートがこれ以上にないほど恍惚の表情を浮かべているところだった。

 

「がふっ…………」

 

ミズキが口から吐いた血がプルルートの顔を汚す。

 

「あは……あは、あははは!ざ、ざまあないわ!あんだけ粋がってたクセに、大したことないじゃない!」

「あ……あ………!」

 

アノネデスはミズキをあざ笑うように笑い、レイは上空のショッキングな風景に言葉を失っている。

女神が、人を殺めた瞬間だった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ネプテューヌとピーシェの戦いはなおも続いていた。

ピーシェは圧倒的なスピードを持っていたが、NT-Dを発動したネプテューヌはそれに追いついている。

紫と黄の軌跡が空を落書きのように染めていく。

 

「ぴー子!」

「やだ、呼ばないで!体の中から、弾けちゃうからぁ!」

 

だがネプテューヌはただの1度としてピーシェを傷つけようと攻撃はしていなかった。

 

「違う……やり方が違うのね……⁉︎」

 

ただ声で呼びかけてもピーシェは拒むだけ。

ピーシェの心の外側の壁に阻まれて内側には届くことがない。

 

「嫌い!お姉ちゃんは、私の敵!」

「っ………!」

 

それを続けてもピーシェは頑なになるだけだ。

もっと、内側に直接届けなければ。

ピーシェの耳ではなく、心の奥へと届けるような声で。それは大きな声である必要はない。聞こえる必要はない。

 

「ぴー子………!」

「っ⁉︎」

 

ネプテューヌの消え入るような声にピーシェは動きを止めた。

ネプテューヌの体から発せられた脈動がピーシェの体をも脈動させた瞬間だった。

 

「だ、誰……?お姉ちゃん、誰……?」

「私は、ネプテューヌよ……!アナタの、友達……!」

「とも、だち………」

 

ピーシェの脳裏に塗り潰された記憶が蘇る。

いつも隣に誰かいたのだ。いつも隣で誰かといたのだ。

ただその姿が思い出せない。

まるで、その部分だけ切り取られてしまったかのようだ。

 

「大丈夫なのよ、ぴー子……。私は、アナタと仲直りしたくて……!」

 

ゆっくりとネプテューヌはピーシェに近付く。

ピーシェはもうネプテューヌから離れない。むしろ、ネプテューヌへと手をゆっくりと伸ばし始めた。

 

ネプテューヌがその手を取ろうとした矢先。

ピーシェが失われた記憶を取り戻そうとした矢先。

 

ダメよ、ピーシェちゃん……?

 

「ひっ⁉︎」

「ぴー子……?」

 

ピーシェが怯えたようにネプテューヌから飛び退く。

ネプテューヌはピーシェを怯えさせないように近付かないが、ピーシェは周りをキョロキョロと見回している。まるで、怖がっているのはネプテューヌではないようだ。

 

せっかくほんの少しの私が人の中に入れたのに。ここで追い出されたら私が困るのよね。

 

「ひっ!だ、誰⁉︎どこなの⁉︎」

 

ピーシェはあらぬ方向に爪を振り回す。

頭の中に直接響く声。ネプテューヌに名前を呼ばれた時とは比にならない不快な感覚がピーシェを覆う。まるで頭の中を虫が這い回っているようだ。

 

「た、助けて!誰かこの声を止めて!」

「ぴ、ぴー子⁉︎大丈夫、私がいるわ!こっちに来て、守ってあげるから!」

「お姉ちゃん……!」

 

ダメだって言ったわよね?

 

「ううっ!」

 

ピーシェは瞳に涙を浮かべて周りを見る。

こんな恐ろしい声、今まで聞いたことがない。

 

「や、やだやだやだっ!話しかけないでっ!」

 

ごめんね、ピーシェちゃん。でも、ピーシェちゃんがあのお姉ちゃんに寄らなきゃいい話よ?

 

「そ、それもやだ……!私、もうお姉ちゃんのこと……!」

 

じゃあ、仕方ないわね。

 

「ひっ!」

「ぴー子!」

 

ちょっと貰うわよ。

 

「っ、ああああああああっ⁉︎」

「ぴー子⁉︎」

 

ピーシェの体の内側から赤黒い瘴気が溢れ出した。その瘴気はピーシェの周りの空気を包み込み、ピーシェをも包んでいく。

 

「ひっ、やだ、やだ!お姉ちゃん!助けて!助けーーーーっ!」

「ぴー子っ!どうしたの、ぴー子!」

 

そして瘴気は再びピーシェの内側へと戻っていく。

瞬間、ピーシェは糸の切れた人形のように体から力を抜いた。

 

「ぴ、ぴー子……?」

「ヒッ、ヒヒヒッ、ヒ………!」

 

ビクンビクンとピーシェの体が揺れ、段々と上半身を起こす。

ピーシェの体は赤黒い瘴気を身にまとっていて、髪も赤黒く染まってしまっている。

 

「ヒヒヒ!遊ぼうよお姉ちゃん!」

「な、なんだって言うの……⁉︎」

 

逸らした上半身で前髪をかきあげるピーシェ。口調は似ているものの、ネプテューヌには今のピーシェが完全な別人に感じられた。

 

「ヒヒ、サッカーやろうよお姉ちゃん!」

「アナタ、誰よ!ぴー子に何をしたの⁉︎ぴー子は何処に行ったのよっ!」

「お姉ちゃんが、ボールね!ヒヒヒッ!」

 

ピーシェが赤黒い軌跡を残して接近してくる。ネプテューヌはその蹴りを受けるが、吹き飛ばされてしまう。

 

「それそれそれ!良かったね、ボールは友達だよ!つまりお姉ちゃんは友達!」

「なんなのよ、アナタはっ!ぴー子を返してよっ!」

「そぉれっ!」

「ああっ!」

 

蹴りの連打を叩き込んでいたピーシェだったが、爪を両手で振り下ろしてネプテューヌを叩き落とす。

 

「ヒヒッ!手使っちゃった!でもゴールキーパーだからセーフ!」

「ふ、ふざけないでよォッ!」

 

ネプテューヌが勢いを殺して大きく飛翔。

そして左手のビームマグナムを向けた。

 

「お姉ちゃん!」

「っ⁉︎」

「ヒヒッ、騙された〜!」

 

引き金を引くのを躊躇ったネプテューヌを嘲笑うピーシェ。

 

「次、何して遊ぼうか!決めた、キリスト遊び!」

 

ピーシェが両手をクロスさせて振り払う。すると爪が赤黒い瘴気で包み込まれた。

 

「擬似ファンネル……ん〜、名前なんにしよう?まあいいか、らいおんくろー!」

 

片手に3本、両手で合計6本のピーシェの爪が分離してネプテューヌへと飛んでいく!

 

「っ、なに⁉︎」

 

慣性の法則など完全に無視した急旋回、急停止、急加速で折れ曲がりながらネプテューヌ へと向かっている。

 

「うっ、く!これ……!」

 

ネプテューヌはそれを避け続けるが、あることに気付く。

この爪が折れ曲がる場所。そこに極小ではあるが……!

 

「防御魔法⁉︎そんな、複数の防御魔法を極小とは言っても何個も同時展開できるわけ……!」

 

しかも爪の反射角度まで完全に計算してだなんて、できるわけがない。

 

「すばしっこいねお姉ちゃん!でも、私の計算通りに動いてくれてるよ!」

 

これだけ反射しても爪の勢いは軽く人を切り裂くほどの威力なのは、ピーシェの肉体の力があってこそか。だが、その頭脳は一体何処から⁉︎

 

「はい、捕まえた!」

「っ⁉︎」

 

気がつけばネプテューヌの周りを爪が囲んでいた。四角錐を重ねたような、クリスタルの形だ。その中心にネプテューヌがいる。

 

「結界!」

「っ、あっ……⁉︎」

 

赤黒い瘴気が爪と爪とを繋いでネプテューヌを捕まえてしまう。

ネプテューヌはその中で力が抜けたように漂った。この感覚は覚えがある。

 

「アンチクリスタルの、結界……⁉︎」

「キリスト遊び、は〜じめ!」

「っ、かっ……は……!」

 

結界の頂点を担う爪からワイヤーが飛び出してネプテューヌの両手、両足、胴体、首に絡みつく。

力が入らないネプテューヌは全く抵抗できずに磔にされたような状態になる。

 

「は〜い、キリスト遊び!ここからどう処刑するかは、私が決めるね!」

「くっ、うっ………!」

「じゃあ……窒息死!1番エグい気がするもん!」

「うぐっ、う………!」

 

ネプテューヌの首に絡みつくワイヤーがキツく絞まる。ネプテューヌの首に食い込むほどになって、呼吸を阻害した。

 

「返して……!ぴー子を、返しなさいよっ……!」

「やぁだ、返しません!おろ、何これ。鼻血?」

 

ピーシェの鼻から血がポタポタと垂れ始めた。血がピーシェの真っ白なスーツを汚していく。

 

「あらら、耳からも出てる。さすがにこれだけの演算にはついてこれなかったか〜」

「くっ、何を……してるのよ……!」

「ナイショ〜!でもね、つまりこういうこと!」

 

ピーシェは自分の首をぎゅううと絞め始めた。

 

「ヒヒ、苦し……!でも関係ない、私の体じゃないもん……!」

「アナタ……は……!」

「バイバイお姉ちゃん。死ねっ!」

「っ……………」

 

ネプテューヌの首を絞めるワイヤーが、さらにキツく絞まった。




サイコジャマァァァッ!
インコムじゃなく擬似ファンネルって名称にしたのはワザとです。インコムはオールドタイプでも微小ながら出るニュータイプが出す脳波の増幅と(ニュータイプの特殊な脳波でファンネルは動くらしいです。インコムはそれを増幅してさらに)コンピューターで動かしてますが、擬似ファンネルは完全に演算頼り。
ですが瞬時に演算を終了させてその演算の通りにモノを動かす(今回の場合は反射)させられるとしたら、それはもうファンネルのように思い通りに動く武器。……ま、リフレクターインコムでいいと思うんですけど!
脳波はなくとも計算だけで動かすファンネル、擬似ファンネルって名称にしました。

ですがそんな計算に女神も耐えられず、ピーシェの頭は崩壊寸前。みたいな感じです。

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