ネプギアとF91はモンスターの大群相手に奮闘していた。しかし、今のところは拮抗を保ててはいるものの、疲労は溜まっていっている。
《なんとぉ……!》
「くっ、あっ!素の力からして、足りない……!」
F91が懸命に左肩に担いだビームランチャーとビームライフルで敵を撃ち落としている。
しかしF91が何かを感じ取る。
《っ、来た……!》
「あっはははは!遠足楽しいね〜っ!動物さん達と、お友達〜!」
《ピーシェ!》
「あ、お兄ちゃん⁉︎」
ピーシェがとんでもないスピードで向かってくる。F91がその前に立ちはだかった。
《ネプギア!モンスターの相手を頼む!》
「は、はい!」
「お兄ちゃんが遊んでくれるの⁉︎やった、楽しそう〜!」
《言ったはずだよ、ピーシェ!君のその力は、使うべき時に使うべき相手に使えって!こんなの、何もかも間違ってるじゃないか!》
「……?よくわかんない!パパとママをイジメる人は、みんな遊んでいいんだよ⁉︎」
《くっ、ピーシェ!》
ピーシェの爪を避け、ビームランチャーを腰のマウントラックで携行。そして左手でビームサーベルを引き抜いた。
《ピーシェ!正気に戻って!》
「なんのことだかわかんない!遊んで、遊んでよお兄ちゃん!」
《ピーシェ!戦いは遊びじゃないんだ!》
ピーシェの爪とF91のビームサーベルが火花を散らす。
もう片方の手が飛んでくるが、右手のビームシールドで防いだ。
「あはは!楽しいね、お兄ちゃん!」
《っ、全然楽しくなんかない!君と戦うのなんて、辛いだけなんだよ!》
「なんで⁉︎私のこと、嫌いだから⁉︎」
《大好きだからだよっ!》
お互いに離れて距離を取る。
F91の背中に装備されたビーム砲がピーシェに狙いを定める。
対象物の耐久力や距離に応じて高速で貫通力の高いビームから低速で破壊力の高いビームまでを撃ち分けできる。
F91はヴェスバーの貫通力を高くしてピーシェを狙い撃った。
「きゃっ!あはっ、あははは!」
《ピーシェ!僕だ、ミズキだよ!思い出して!》
「知らないよ?お兄ちゃんのことなんか、全然知らない!」
《ピーシェ!》
「やめて!なんか、頭がむずむずする!私の名前を、呼ばないでっ!」
ピーシェがまた襲いかかる。
F91はライフルで牽制するが全ての弾が避けられて虚空へと吸い込まれる。
ピーシェの爪をビームシールドで受け止めるが、F91がピーシェのスーツの胸のあたりにあるネックレスのチェーンのようなものを見つける。
その先は谷間に挟まれていて見えないが……きっと、アレは!
《見つけた!君とみんなを繋ぎ止めてるモノ!ピーシェはまだ、みんなと繋がってる!》
「わかんないわかんないわかんない!お兄ちゃんが何を言ってるか、全然わかんないよ〜っ!」
押し切られる形でF91が後退する。
「もうやめて!頭が痒いの〜っ!」
《っ!》
突っ込んだピーシェとF91の間に鞭が差し込まれてピーシェが動きを止める。
《プルルート!》
「プルルート“様”ね。けど、私はこの子の相手なんてヤァよ」
《わかってる。今はネプギアの援護を!》
「仕方ないわねぇ。雑魚相手でも数がいれば、やりがいあるかしらッ⁉︎」
ネプギアの援護へとプルルートが向かう。
ネプギアはモンスターの群れを相手にしていて傷つき疲労していた。
「あら、これだけいても……あまり気持ち良くないわね」
「プルルート、さん……」
「下がってなさい、ネプギアちゃん。ここは私が引き継ぐから」
「っ、でも……!」
プルルートが鞭と電撃魔法で敵を薙ぎ払う。リーチの長いプルルートが敵の手の届かないところから敵を倒していく。
「私、下がれません……!お姉ちゃんが来るまで、ここを守らなきゃ!」
『………何もかもが足りない』
「っ、また……⁉︎」
ネプギアが右目に鈍い痛みを覚えて目を抑える。次にネプギアが目を開いた時、まるで網膜の上に焼きついたように文字が表示されていた。
「な、なに……⁉︎『データは充分』って、なんの⁉︎『進化する』って何に⁉︎」
「ネプギアちゃん?」
「私、進化する……⁉︎強くなる⁉︎」
ーーーー『運命の先へ』
ネプギアのNEXTが解ける。だが、それと同時にネプギアの体から光が発せられる。
「何もかもが足りなかった……!だから、何もかも、1から強くなる!そっか、それが……!」
ネプギアのM.P.B.Lは大型化して引き金のあたりの上下にアーマーがつけられる。肩から4枚の羽のようなプロセッサユニットが装備され、胸にはNの文字が輝く!
「私、進化するんだ!強く強く!体だけじゃない、心だって!」
ネプギアが大きく飛翔して大型化したM.P.B.Lを構えた。
「私の、新しい力!生まれ変わるんだ、私の強さが!」
マルチプルドッズビームランチャーの銃身をさらに大型化、貫通力を上げた形態ハイパードッズビームランチャーだ。
H.D.B.Lから発射されたビームはモンスターを倒すばかりか貫通して後ろの敵すら撃ち抜いた!
「M.P.B.Lに近接能力が、なくなったって!」
ネプギアがプルルートの横を高速で通り抜ける。その衝撃でできた突風がプルルートの髪を大きく揺らした。
「なんてスピード……」
ネプギアはH.D.B.Lを投げ捨てて両手にビームサーベルの柄を持った。
「2刀流!ミラージュ・ダンス改め、ウルフファングッ!」
クロスコンビネーションにも似たXの斬撃がモンスターを切り裂く。
そして素早くネプギアは飛翔して敵から離れる。
「まだ、私は戦えます!換装!」
ネプギアの肩の4枚の羽が消え、その代わりに2つの赤いキャノンが肩に装着された。膝には新たにアーマーが装備される。
対大軍戦用のウェア、ダブルバレットだ!
「ドッズキャノンの威力なら……!」
ネプギアが両手を前に出すとドッズキャノンの砲身も前を向く。その砲身がスパークし始めた。
「最大出力ですッ!」
放たれたビームがモンスターを飲み込んでいく。何体ものモンスターを飲み込んだ光の奔流が終わった頃には何も残ってはいなかった。
「ネプギアちゃん、あの子……」
「何処にいたって、逃げられませんから!」
肩のツインドッズキャノンを別々に動かして次々と敵を撃破していく。1発1発が通常のビームよりも威力が高い上、それが雨あられのように降り注ぐ。
さしものEXモンスターもその弾は避けられずに陣形に大きな穴を開けた。
「まだ、終わりません!妥協は、できないんです!」
ドッズキャノンをパージ、そこからまるで翼のように巨大ビームサーベルが発振した。
そしてネプギアは手のビームサーベルも発振する。
「4刀流です!決して、負けない!」
膝のアーマーからカーフミサイルを発射しながら接近。モンスターが周りを取り囲んだ瞬間、ネプギアは1回転。
ビームサーベルに引き裂かれたモンスター達が瞬間遅れて爆発した。
「なにあれ……⁉︎すごい!」
《余所見しないでよ、ピーシェ!》
「っ、お兄ちゃんと遊ぶのヤダ!痒くて、ムズムズして、イヤなの!」
ピーシェが爪を振り回してF91を吹き飛ばした。
「来ないでっ!」
ーーーーーーーー
「ジャックさん、大丈夫ですか……?」
「……生憎、大丈夫ではない。これで大丈夫な奴は気が狂っている」
部屋に入るとジャックは疲れたように壁にもたれかかっていた。
「怖いんですよね……?」
「そうだ。戦火が怖い。砲撃が怖い。銃撃が怖い。何より……また人がいなくなるのが辛い」
ジャックが瞑目する。
イストワールはそんなジャックに近づいてそっと手を取った。
「大丈夫ですよ。みんなまた……帰って来ます」
「……万が一ということもある。それに、いつも成功するわけではない。いつか失敗する。ミズキだってそうだ、俺だってそうだった」
「……ジャックさん……」
「無論、そうならないように努力しているのはわかる。……だが、確証はないんだ」
「……なら」
イストワールはジャックの手を強く握った。
「私はいなくなりません。戦火が止むまで……ずっとここにいます」
「……頼りになるな」
「教祖ですから」
「クク……。そうだな、ここにいてくれると助かる」
ジャックは少し微笑んでイストワールと手をつないでいた。
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ネプテューヌはまだ揺れる瞳でベランダに立っていた。
ほんの少しだけ勇気が欲しくて右手の甲を撫でる。その温度が進ませてくれる気がした。
「私……逃げない。逃げちゃダメ。ピーシェから、もう逃げないよ」
ベランダの手すりに足をかけて、飛び降りた。
「変身!」
ネプギアはAGE2へと進化。Xラウンダー能力は健在ですが。
必殺技もネプギアを二刀流にするにあたってウルフファングにしちゃいました。いい人だったなあ、ウルフさん…。
やっぱりAGE2は最高だぜ。寝ただけ変形ではない変形ってガンダムの中では貴重だと思うんですよ。