超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ファッ⁉︎なんだかすっごく多くなっちゃいましたよ。
あと、久し振りに挿絵を描きました。描いたっていうのもおかしいですけども。ここにも貼っておきます。

【挿絵表示】



酷い寒気がした

「面白かった〜」

「ふぃ〜、ひどい目にあったよ〜!」

「それはこっちのセリフだよ……はあ……」

 

ネプギアが持ってした解毒薬は即効だった。飲んだ瞬間に2人はミズキから離れてくれたのだ。

 

「大丈夫ですか、ミズキさん」

「大丈夫、大丈夫。ただ、こう、心が疲れたよね……」

 

げっそりした顔をしている。

 

「あは〜、ごめんごめんご!ところで、ガイドさんは〜?」

「あれだけの騒ぎだったんだし、逃げたんじゃない?仕方ないわよ」

「自力で探すしかないと思うわ……」

「ええ〜、めんどくさ〜い!ノワール、魔法とかでパパッと探せないの〜⁉︎」

「無理よ、無理。地道に探しましょう」

 

みんながスタスタと森の中へと戻っていく。

 

「ね〜え〜ミズキ、アテとかないの〜⁉︎」

「今回ばっかりはないかな。でも、それだけの巨大な砲台なら作った形跡とかはあるんじゃないかな」

「形跡……ね……。確かに」

「形跡……って例えばどんな?」

「部品を運ぶためのトロッコとかが必要になるんじゃないかな。そうじゃなくても弾を運ぶ道も必要だし」

「確かに、そうですね。じゃあ、線路とか不自然に開けた道をたどっていけばいいってことですね!」

「ですが、そんなに都合よく見つか……りましたわね」

 

目線の先には不自然に開けた道と線路。

 

「クスクス。じゃあ、たどってみようか」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

というわけで案外スムーズに砲台が見つかった。

確かに、対空砲のようなゴツい見た目をしていて兵器として使われれば手を焼くだろう。

 

「ふぅん。結構強力な砲台なんじゃないかな。まあ………」

 

まあ、兵器として使われれば、だが。

 

「シャボン玉を打ち出してちゃあね……」

 

目の前の砲台はシュボボボと音を立ててシャボン玉を打ち出していた。

その上では裸の女性が踊っている。ここにはナゾノヒカリ草もなく、本当に素っ裸だ。

 

「み、ミズキ!見ちゃダメでしょ!」

「いや、なんか、ほら……さっきので疲れた」

「悟りを開くほどに⁉︎」

 

ネプテューヌとプルルートの猛烈アタックを受けたミズキの心はもう磨り減っている。

慌ててノワールが目を塞いでいるがあまり意味はないらしい。

 

「知人ならまだしも……なんていうか、見ず知らずの人の、しかも見せつけてるような感じだと……何も感じないよね」

「私に何を語ってるの⁉︎」

エロス(生命)

「そんな大層な話だったかしら⁉︎」

「いや〜、みんなパーリーピーポーだね!私も混ざっちゃおうかな〜!」

「自重しなさい」

「はい……」

 

ブランの制止でネプテューヌが踏みとどまる。自分でも一応恥ずかしいことをしていた自覚はあるらしい。

 

「しかし……私達はこのシャボン玉を見るためにここに来たということですか……」

「クスクス、いいじゃないか。みんなで遊べたんだし」

「それはそうですけど……」

「じゃあもう帰りましょう。ここにいても時間の無駄……っ⁉︎」

 

ノワールの目線の先。砲台の上にピンク色の目立つパワードスーツ、アノネデスが見えた気がした。

 

「アナタ!」

 

ノワールが走り寄るが、シャボン玉の影に隠れた瞬間にアノネデスは見えなくなっていた。

 

「……幻……?そうよね、だってあいつは……」

 

投獄されているのだから。こんな島にいるはずがない。そのはずだ。

 

「…………ッ⁉︎」

 

ミズキがバッと後ろを振り返る。その方角はプラネテューヌの方角だ。ミズキは胸を知らず知らずのうちに抑えていた。

 

「ミズキさん?どうかしたんですか?」

「………何か、起こる。胸騒ぎがする……っ、苦しいほど……!」

 

ミズキから冷や汗が垂れる。息も荒くなってひたすらにプラネテューヌの方向を見つめている。

 

「取り返しが、つかなくなる……ッ!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その少し前。

アイエフとコンパはベランダいっぱいにビニールプールを広げてホースで水を入れていた。もちろん水着に着替えている。

 

「ミズキは気が利くわね〜。こんな大きいビニールプールを置いていってくれるなんて」

「これだけ大きいと、ちょっとした市民プールみたいですぅ」

「これなら私達も遊べそうね」

 

もうプールにはそこそこ水が溜まっていた。

そこに水着に着替えたユニ、ロム、ラム、ピーシェが入ってくる。

 

「できた⁉︎」

「できた……⁉︎」

「はい、そろそろいいですよ」

「やた〜!」

「あ、こら、ピーシェ!飛び込んじゃ、きゃうっ!」

 

ピーシェが飛び込んで大きく水しぶきを飛ばす。

 

「ダメでしょ!」

 

アイエフのお怒りもなんのその、パシャパシャと泳ぎ始めた。

ロムとラムはゆっくりと足から水に浸かっていく。

 

「まったく、なんで私がこんなビニールプールなんかに……きゃっ⁉︎」

 

ユニの顔にホースの水がかけられる。犯人はラムだ。

 

「スキあり!」

「こ、この〜……やったわね〜!」

 

楽しそうに笑いながらユニもプールへと入ってロムとラムを追いかける。アイエフとコンパもプールの中に入った。

 

「……………」

「何をやっている。入ったらどうだ」

「ひいっ!じ、ジャックさん……!」

「何をしている。せっかく水着に着替えたんだろう?イストワール」

「で、ですけど……」

「ほら、早くしろ」

「うう……、せめて、みなさんには見られないところに……」

「……仕方あるまい」

 

プールの脇にあった風呂桶が誰にも気づかれないまま次元の穴に消える。そして扉の奥にいたジャックとイストワールの所へとやってきた。

イストワールもジャックも水着に着替えていた。せっかくだからと水遊びをと誘われたがイストワールがあの手この手で逃れようとしたのだ。

やれ、溺れるだの。やれ、足場の本が濡れるだの。やれ、水着がないだの。

 

「要するに恥ずかしかっただけだろう?」

「うう、はい、そうです……」

「これなら俺以外に見られる心配もない。安心して遊べばいい」

「ですが……」

「教祖にも休息は必要だ。偶にはネプテューヌを見習って遊んだらどうだ?」

「ですけど、その、私は本がないと飛べないし……泳げないのですが……」

 

本がないのでイストワールは珍しく地面に立った状態だ。

 

「それくらい俺に持ち上げられないはずがない。ほれ、両手を上げろ」

「きゃっ、ちょ、恥ずかしいです……!」

「もう水着を見られてるんだからいいだろう」

「いや、それと触れられるのは別問題で……!」

「ほら、大声を上げるとみんなに気付かれるぞ」

「外道ですか⁉︎」

 

「あれ?今イストワール様の声がしなかった?」

「気のせいじゃないですか?」

 

「!」

「クク、静かにしてた方が身のためじゃないか?」

「わ、笑わないでくださいよ!訴えますよ〜!」

 

「やっぱり聞こえるわよ。ほら、あっちから」

「そうですか?でも、そうだったらそのうち来ると思うですぅ」

「そうね」

 

「!」

「ほら、足から浸かるぞ」

「う、うぅ………!」

 

顔を真っ赤にしてイストワールがジャックに持ち上げられる。そして桶の中に足から使った。高さはイストワールの胸ほどまである。

 

「これくらいなら何とかなるだろう。足もつくな?」

「は、はい。一応は……」

「なら、このまま遊べばいい。あくまで静かにな」

「……そう、ですね。それじゃあ、しばらくは……」

 

しばらくイストワールが顔を水につけたりして少しずつ水になれる様をジャックはニヤニヤしながら見ていた。

するとイストワールが来客のベルに気付く。

 

「あら、お客様ですかね……?」

「俺が応対をしよう。イストワールは体を拭いてこい」

「あ、はい」

「さて、どんな客が来た……?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

体を拭いて着替えたジャックの前には1人の女がソファーに座っていた。色の薄い髪にメガネをかけた若い女。オドオドしているのはここが教会だからだろうか。

 

「お待たせしました。連れてきましたよ」

 

イストワールが自分の人形を持ったピーシェを連れて部屋に入ってきた。そう、この女は……。

 

「本当に、お前がピーシェの母親なのか?」

「は、はい!そうです……!」

「ですが、ピーシェさんはアナタのことを知らないと仰っていますよ?」

「そうなのか、ピーシェ」

「うん……知らない……」

「そ、そんなわけ……!あっ!」

 

女が立ち上がると机に足が当たってコーヒーが溢れてしまう。

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

「いいえ、いいんですよ。今拭く物を持ってきますから……」

「手伝おう」

 

イストワールとジャックが奥の部屋に消えていく。それを見届けてから女はカバンの中から慌てて瓶を取り出す。その瓶の中には赤黒い靄のようなものが詰まっていた。

 

「え?」

「………!」

 

その瓶をピーシェの目の前で開ける。すると赤黒い靄はピーシェの顔を包み込んでいく。ピーシェの目は暗く沈み込んだ。

ピーシェの手からトサ、と人形が落ちた。

 

「すいません。今拭きますから……」

「あの、思い出したみたいです……」

「なに?」

 

ピクリとジャックが眉をひそめる。

だがピーシェは女を見つめて呟く。

 

「……マ…マ………」

「ほら……」

「そ、そんな……」

「……………」

 

安堵した顔をしている女。

果たしてその裏にあるものは何か。その顔をさせた感情は何か。

子供が自分が母だということを思い出してくれたから?それとも……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「み、ミズキ!ちょっと待ってよ!」

《ごめん、みんな。この胸騒ぎを僕は無視できないんだ……!》

 

日が沈みかけたR18アイランド。

ミズキはアリオスガンダムに変身していた。

アリオスはキュリオスの次世代機。キュリオスと同じく可変機構を持ちオレンジの色が特徴的なガンダムだ。

 

「待って〜、ミズキ君〜。私も〜、行く〜」

「私も行く!お願いミズキ、連れてって!」

 

ネプテューヌとプルルートが一歩前に出た。

 

「この中じゃミズキが1番速いわね……私達は後から追いかけるわ!」

「急いで、ミズキ。何かあるんでしょう……?」

《きっと起こる。それはきっと、何かの始まりだ……!》

 

経験上、こんな胸騒ぎがある時はロクなことがない。誰かがいなくなってしまうような不安感。現にミズキはこの胸騒ぎに逆らって救えなかった人がいる。

 

《捕まって、2人とも!》

「うん、変身!」

「へ〜んし〜ん!」

 

アリオスが変形してその垂直尾翼を2人が掴む。

 

《最初から全開で行くよ、トランザム……!》

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《はあっ、はあっ、はあっ……!ジャック!》

 

ベランダにアリオスがブレーキもそこそこに降り立った。

ついでネプテューヌとプルルートが着地して3人が変身を解く。

 

「ジャック、ジャック!」

 

ふわりと通路からジャックが現れた。ついでイストワールや女神候補生、アイエフにコンパが現れる。

 

「何か、あった……⁉︎」

「………ああ。あった」

「う、ウソだよ!だってみんなここに……!ここに……あれ……?」

「……ピーシェちゃんは〜……どこ〜……?」

「……ピーシェさんは、行ってしまいました」

「……く………!」

「え?い、行っちゃったって?」

「お母さんが迎えに来たんです……ピーシェさんはもう、ここにはいません」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ネプテューヌはプラネテューヌの街を駆けずり回っていた。その手にピーシェが落としていったぬいぐるみを持って。躓いても転んでもがむしゃらに走り続けた。どこにいるのかもわからないのに。

 

「こんなんじゃ、同じだよ……前と、同じ……!ミズキの時と、同じ……!」

 

 

 

リビングで追いついたみんなを加えて集まっていた。

 

「いくらなんでも急すぎやしないですか⁉︎」

「ピーシェさんがすぐに帰ると言って聞かなくって……」

「で、でもまた会えるんですよね⁉︎」

「それが住所を聞く前にいなくなっちゃったのよ」

「寂しい……」

「私達も最後に会えなかったのよ」

 

ユニとロムとラムも急な別れを寂しがっているようだ。

 

「……あの女。ピーシェを迎えに来たという女はな」

 

ジャックが口を開いた。

 

「1度も、ピーシェの名を呼んではいなかった」

 

『………!』

 

「ジャックさん、あまり疑うのは……」

「杞憂ならばよし。いくらでも俺を責めてくれ。だがな、ミズキの直感は告げたのだろう?」

「……うん。何か、嫌なことが起こる。それはこの程度のことじゃない。もっと胸の奥から潰されてしまいそうな……沈み込んでしまうような……」

 

ミズキが悲痛な顔で胸をぎゅっと握り締める。

 

「なんだか、寒いよ。寒くて、重くて、痛くて……!ダメなんだ、このままじゃ……!」

 

焦るような顔をしているミズキ。みんながその顔を見て否応無しに不安を煽られる。

 

「……ピーシェを探す。もしかしたらミズキの寒気はピーシェに関連しているかもしれないし、していないかもしれん。もしくは全てがミズキの勘違いなのかもしれん。だが、ミズキが……ニュータイプがこのような寒気を感じた時はな。大抵何かが起こる」

 

『……………』

 

「動かなければならない。後悔する前に」

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ……っ!」

 

街を走っていたネプテューヌは握ったピーシェの人形をぎゅっと握った。

 

「なんで、また、いなくなるの……?私の前から、みんな、みんな……!」

 

帰ってきてくれるかもしれない。ミズキだって帰ってきてくれた。

けど、それは約束があったからだ。

約束をする暇もなく、喧嘩したままで、何も残さないで……!

 

「ぴー子のバカ……っ!」

 

そんな小さい声が夜のプラテューヌに響く。

 

「バカって言った方が、バカだ……」

 

また、行かせてしまった。

ずっと、一緒にいたかったのに。




ネプテューヌ、2度目の別れ。ミズキの時よりもずっと唐突で、チャンスすらないままに。じゃあ一体どこから間違っていたのか。それをこれから考えようと。

イストワールの水着ですよ〜。脳内補完しました?訓練された皆さんならできるはず。信じてますからね、ええ。

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