まだ追いかけようとする愛玩鳥をノワールとブランが足止めする。
「ミズキ様、今引き上げますわ!」
「安全なところまで、運びます!」
ネプギアとベールはクロスボーンを持ち上げて遠くの砂浜へと向かっていく。
《あ、ありがと。助かるよ、2人とも》
「ん〜」
「ん〜」
《2人はもうちょっと自重してくんない⁉︎》
本当にベタ惚れでクロスボーンとキスしようとする2人。クロスボーンには口はないのだが。
「きゃあっ!」
「チッ!」
《ノワール、ブラン⁉︎》
「クエエッーーーー!」
愛玩鳥の羽ばたきで起こる突風で2人が吹き飛ばされる。その隙をついて愛玩鳥はノロノロと飛ぶクロスボーン達に接近してきた。
《っ、離れて!》
「あっ!」
「ミズキ様!」
加速してネプギアとベールの手から離れる。愛玩鳥の狙いは毒液を吐きかけたネプテューヌとプルルートだ。愛玩鳥は獲物を捕らえるべく足を前にして突進してきた。
《2人とも、しっかり捕まっててよ!》
「わかったわ。永遠に離さないんだから……!」
「大好きだよ〜」
2人がクロスボーンの体に強くしがみつく。クロスボーンは接近する愛玩鳥の足を手から発振させたビームシールド、『ブランド・マーカー』で受け止めた。
「クエッ⁉︎」
《くおおおっ!》
ビームシールドを攻撃したために愛玩鳥の足が焼ける。
その隙をついてクロスボーンはブランド・マーカーからビームシールドではなく四角錐状のビーム刃を発振させ、愛玩鳥に殴るように突き刺した!
「クエエッ⁉︎」
《まぁだッ!ここっ!》
それを引っ掛けながら胸のビーム・ガンからビームを、頭のバルカン砲からバルカンを打って近付く。
《ヒート・ダガーッ!》
そのまま飛び蹴りを食らわす。足から飛び出たヒートダガーの熱がさらに愛玩鳥にダメージを与える。
「クエエエエッ⁉︎」
《くっ!》
だがこれだけでは大したダメージになっていない。もっと、威力の大きい武器を当てなければならない。
「クエッ、ウェア……ッ!」
《っ、来るっ⁉︎》
落下しているクロスボーンとネプテューヌ、プルルートめがけて愛玩鳥が鎌首をもたげた。あれは毒液を吐き出す構えだ。
「ミズキ、避けてっ!」
「襲われるぞっ!」
「ウエエッ!」
《くうっ!間に合ってよっ⁉︎》
愛玩鳥から吐き出した毒液がクロスボーンに命中した!
だが、無駄だった。
クロスボーンの体は大きなマントで覆われていた。
ーーーー『クロスボーンガンダム』
「ん、ん〜……?」
「なにこれ〜……マント〜?」
クロスボーンの全身をを覆っていたのはボロ切れのようなマント。その名はABCマントといい、アンチ・ビーム・カーテン・マントの略だ。本来はビームを防ぐためのマントだが今は愛玩鳥の毒液を防ぐために役に立った。
《お願い、2人とも。少しだけでいい、離れてて。すぐに戻るから……!》
「え、え〜……?やだぁ〜」
「……どれくらい、待てばいいの?」
《1分!それだけで終わらせてくる!》
「……わかった、待ってる」
「え〜、私やだ〜!」
「ワガママ言わないの。1分だけだから」
《ありがと、ネプテューヌ。行ってくる!》
ネプテューヌが嫌がるプルルートを抱きしめて少しだけクロスボーンから離れる。クロスボーンは愛玩鳥へ向かって飛んでいく。
「ネプテューヌ、理性なんてないはずですのに……」
「お姉ちゃんは、心の底でわかってた……?」
クロスボーンのマスクのスリット部分が口のように開いてエアダクトが露出した。上がりすぎた機体温度を下げるための冷却機能の1つだ。
《うおおおあっ!》
ひらりひらりと飛んでABCマントをはためかせる。
そしてザンバスターを2つに分解してその片方を手に持つ。そこから大きなビーム刃が出てくる。大型ビームサーベル、『ビーム・ザンバー』だ。
《これで、両断する!》
大きく飛翔するクロスボーンだが、愛玩鳥が突風で邪魔をしてくる。
《っ、んっ……!》
「やられちゃいなさいよ!」
「ミズキの邪魔を、すんじゃねえッ!」
「クエッ⁉︎」
だが両横からノワールとブランが挟み込み、剣と斧を振るう。それに怯んで突風が止んだ。
《今だ、シザーアンカーで!》
両アーマーのシザーアンカーを射出する。それを片方ずつノワールとブランが掴んだ。
「行くぜ、ミズキ……!」
「飛ばしたげるから、覚悟してよっ!」
そのままシザーアンカーがクロスボーンを引き寄せる。クロスボーンが2人とすれ違う、そのタイミングで2人がクロスボーンをシザーアンカーを引っ張ることで投げ飛ばした!
「ミズキ、やっちゃって!」
「頼んだぜ!」
「クエエッ⁉︎」
《恋は、恋はそんなんじゃないんだ!それがわからないのなら!》
その勢いでビーム・ザンバーを愛玩鳥の腹に突き刺した!
「グエ⁉︎」
《強いられている恋の、一体どこに真実があるッ⁉︎寝言を言うなァーッ!》
そのままさらに胸からビームサーベルも引き抜いて突き刺す。そしてビーム・ザンバーを腹を裂くようにして引き抜いた!
「グエエエエーーーーッ⁉︎」
パアッと愛玩鳥は光になって消えた。
クロスボーンはゆっくりと地面に向かって下降していく。ABCマントは外れて光の粒子になって次元倉庫へと戻った。
「あ、ミズキ……」
「しょうがねえ、抱えてやるか」
ノワールとブランがクロスボーンを抱えようとゆっくりと近付く……が。
「ああん、遅いのよ〜、もうっ!もう1分何年にも感じられて……ああん」
「えへへ〜、あったか〜い。もう2度と離れないでね〜」
《うぐふっ、2人ともタックルしないでよ……》
『…………カチン』
「モテる男は辛い、それを体現してなさりますわね。男冥利に尽きるってとこですわね」
「ど、どうしましょうベールさん。一旦、なんとかお姉ちゃん達を引き剥がして……」
「いや、いいでしょう。このまま解毒薬を持ってきた方が……いや、この様子を見ていた方がいいですわね」
「助けないんですか⁉︎」
「だって……修羅場って愉快じゃありません?」
「愉快じゃないです!もう、私だけでも解毒薬を持ってきますから!」
ネプギアが島の入り口へと飛んでいく。
ベールは空を飛びながら喧嘩している4人の女神を見た。
「しかし……何故アンチクリスタルがなくなったのにEXモンスターが?」
気性がもともと大人しい生物だから今の今まで隠れていたのか?そしてビーチが騒がしくなったから出てきた……とは考えにくい。
ビーチが騒がしいのは年がら年中同じだし、何よりあれだけの巨体なら見かけた人間も被害にあった人間もいるはずだ。
「………一体、どういうことなんでしょう……」
ベールは言いようのない不安に包まれた。
その、森の中。女神からは見えない茂みの中に、怪しい影がいた。
その人は手に瓶とスプーンを持ち、愛玩鳥が吐き出して砂浜にへばりついた毒液を慎重にスプーンですくっていく。決して自らの手には触れないように。
そして拾った毒液は瓶の満たしていった。7割くらいがピンク色の毒液で満たされてから瓶の蓋を閉じる。
「………ふふ……これだけの量の毒液があれば……」
ニヤリと笑って……いや、その顔は分からない。パワードスーツで覆われたその体はみんな見覚えのあるオカマだ。
「計画発動のための条件は……残り1つ。ふふ……ふふふふ……」
改にはなってないX1でした。アニメ化はよ。