超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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某有名エロゲより。


失○れた未来を求めて

次なる国はリーンボックス。ミズキの国巡り、最後の目的地だ。

その国の女神たるベールはそわそわと落ち着きなく教会を彷徨っていた。

 

「………どういうことですの、ブランまで……」

 

ブランが『ミズキに陥落させられた』、と今日の朝告げた。そのことについては別に誰が付き合ってるわけじゃないのだからとやかく言うことではない。2人の女が1人の男に同時に惚れただけのことだ。そんな三角関係、ドラマでだってよく見る。

現にノワールも嫌に思ったわけではない様子だった。むしろ対抗心を燃やしてさらに意気込んだようだ。

そう、三角関係なら良く見るのだ。これで、もし、もしネプテューヌがオチて。あまつさえ私もオチるようなことがあれば。

 

「お、恐ろしいことになりますわ……」

 

想像しただけで恐ろしい。絶対ヤンデレが生まれる。

私だけはオチるわけにはいかないのだ。

そんな決意を固めていると職員が来客を知らせに来た。

時刻からしてミズキが来ると思われる時間よりまだ早い。と、すれば恐らく……。

 

「いらっしゃいませ」

 

扉を開けるとそこにはサングラスをかけてこちらを見る女の子が。

 

「5pb.ちゃん」

「うん、お邪魔するよ」

 

サングラスを外したその素顔は超次元アイドル5pb.。次元も時空も股にかけてバジュラを歌で鎮めたりする……しないですわね、はい。

5pb.を教会に迎え入れて案内する。

 

「よく休みが取れましたわね。忙しいのでしょう?」

「ミズキが来るって言うなら仕事してる場合じゃない。練習の1つや2つ、抜け出しちゃえるよ」

「悪い子ですね、ふふっ」

 

そうして部屋に着く。

今度は自力でしっかりと片付けた部屋に5pb.を座らせるとまた職員が来客を知らせた。

 

「今度こそ、ミズキ様ですわね。私が迎えに行ってきますから、5pb.ちゃんはここで待っててくださいまし」

「うん。ミズキの驚く顔が見たいよ」

 

来た道を折り返してベールがまた教会のドアを開く。

するとそこには日差しを浴びて眼を細めるミズキがいた。

 

「初めてまともな入国をした……」

「……どうしたのですか?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ミズキがカップに3人分の紅茶を注ぐ。琥珀色の液体が静かな音を立てて深さを増していく。

 

「はい、出来たよ」

「ありがとうございます。もう1度ミズキ様の紅茶を飲んでみたかったのですわ」

「ベール様……普通紅茶を入れるのは逆だと思うよ……」

「クスクス、まあまあ。飲んでみたいって言ってもらったんだし」

 

コトリと紅茶がベールと5pb.の前に置かれる。2人はそれにお好みで砂糖を追加して口に含んだ。

 

「………やはり美味しいですわ。私が淹れてもこんな味には……」

「昔シルヴィア達に練習をさせられたことがあってね。だから慣れてるんだ」

「ボクは紅茶のことはよく分からないけど……美味しいと思うよ」

「クスクス、ありがと」

 

ミズキも自分の分の紅茶を飲む。

穏やかで温かい空気が部屋に満ちてーー。

 

「そういえば、なんでベールって妹がいないの?」

 

なかった。凍りついた。

 

「み、ミズキ、それは………」

「ずっと気になってたんだよね。それとも、いるけど教会から出れないとか?」

「………私に妹はいないのですわ」

「でも、そのうち出来るんじゃーー」

「いないのですわっ!」

「は、はい………」

 

キッとこちらを見る剣幕にミズキはつい返事をしてしまう。

 

「ですが、いつか手に入れるのですわ。フフ……ネプギア……待っていてくださいまし……」

「ネプギアはネプテューヌの妹だけど……」

「奪い取るのですわっ!何事も、欲しいものは奪い取るのがリーンボックスですわ!」

「あれ⁉︎私達の国ってそんな物騒な国だっけ⁉︎」

「だ、だいぶ拗らせてるんだね……」

 

ミズキはあははと苦笑いをする。

 

「欲しいって思ったら出来るものじゃないんだね、妹って」

「当たり前ですわ。ミズキ様だって、そんなに手っ取り早く妹が作れるわけないでしょう」

「義兄妹ならたくさんいたけどね」

「義兄妹……って、盃を交わせば〜ってやつ?」

「うん。盃は交わしてないけどね。みんな僕の妹になりたがるから……」

 

戦争の間に助けた女の子達がどこからかそんな話を聞きつけてきて、そこから広まりに広まって結局ほとんどの女の子と義兄妹の契りを交わすことになったのだ。無論、男の子もたくさんいたけれど。

昔は僕の義兄妹や義兄弟の多さにシルヴィアが嫉妬……っていうか意地を張ったことがあった。

その時ばかりは僕が勝者だったわけだけど。

 

「……この際、性転換でも……」

「恐ろしいこと言わないでよ……」

 

去勢とか冗談じゃない。

 

「そうですわ。ミズキ様はフリーなのですし……私と妹になる気はありませんか?」

「ベール?せめて弟って言い直さない?」

「もうベール様も必死だね……」

 

ベールの瞳のハイライトが消えている。もう周りが見えてないというかなりふり構わないというかトランス状態というか。

 

「でも僕は弟って慣れてないんだよね。兄なら慣れてるんだけど」

「でも、ベール様が妹っていうのはなかなか想像出来ないね」

「クスクス、お姉さんキャラだもんね。ベールのお兄さんなら、やってあげてもいいけど?」

「違うのですわ。私が欲しいのは妹なのですわ。断じて兄や姉などいらないのですわ!」

「僕に妹を求めないでよ……」

 

根本……主に性別から間違っていることに気付かないのだろうか。なんだかいつもおっとりした雰囲気のベールの新しい一面を見た気がした。

 

「でも、ミズキって甘えるより甘えてもらうタイプなんだね」

「モテるのは子供限定だけどね」

 

複雑な気持ちなのだろうか、若干苦笑い気味のミズキ。

そんなミズキを見て、ベールはある作戦を思いついた。

 

(そうですわ。ここはベールとブランのためにも、ミズキ様の恋愛事情について聞いてみるのも……)

 

確かフラれたことがあるとは言っていたらしい。だがそれだけでは情報不足、ミズキの趣味や好みを聞いておいて損はないだろう。

 

「そういえば、ミズキ様は彼女いない歴=年齢らしいですわね」

「あはは、お恥ずかしいことにね。モテる人が羨ましいよ」

「え?ミズキって彼女いたことないの?」

「うん。告白したことはあるけど、フラれちゃってね。それ以来……っていうかそれも恋じゃなかったしなぁ」

 

やはりミズキは恋をしたことがないらしい。だが嘘の可能性もある。たとえその話が本当でもこれから恋させられるようにさらに聞き出しておこう。

 

「ミズキ様は、どんな女性が好みなのですか?」

「あ、それボクも興味ある」

「そうだね……、優しい人が好きかな。心の奥が優しい人」

「顔とか体格はどうなの?」

「あんまり気にしないかな。そうやって体で決めつけるのは失礼だ……って教えられたし」

 

ブランにも勝機が出てきたらしい。

 

「今まで恋をしたことは、何回くらいありますの?」

「う〜ん、ないかな。もしくは、気付いてないだけかも」

「へ〜。逆に告白されたことはある?」

「小っちゃい子にね。『お嫁さんになる〜』とか『大好き〜』とか」

 

とことん縁があるというかないというか。ここまでだと不遇ですらある。

 

「今は誰が好き、とかありますの?」

「ううん。この次元で会った女の子なんて、女神や女神候補生の他には5pb.くらいだしね」

「あら、私達は女として見ていないと?」

「そういうわけじゃないよ。ただ、君達って恋するのかなって思うよ」

「あら、私だって恋はしたいですわよ」

「そうなの?」

「ええ。理想の殿方とお付き合いだなんて、女の子なら誰しもが考えることですわ」

「ボクも考えることはあるよ。アイドルやってる間は恋愛はご法度だけどね」

 

2人ともさも当然のことのように言う。

 

「なんか、『私が愛しているのは国民です』みたいなイメージがあったよ。5pb.なら愛しているのはファンかな」

「そんなことはありませんわよ。私だけに限ったことではなく、みんなちゃんとした恋はしたがっていますわ」

「みんな……って、みんな?」

「ええ。ネプテューヌもノワールもブランも、きっと恋をしたいはずですわ」

「そっか……。なんだか見方が変わるな」

 

ベールは心の中でガッツポーズをする。ミズキは今まで女神が恋をしないと思って見ていたのかもしれない。こうして女神でも恋をするという観念を植え付けていれば、自ずと女神にも興味が湧くはず……!

 

「ボクもファンは好きだけど、それとは別に男の人に出会いたいなって思うよ」

「5pb.もそういうこと考えるんだ」

「ラブソングも良く歌うしね。やっぱり出来るだけ感情移入した方が歌は良くなるし」

「それもそっか……」

 

ミズキはう〜んと考えるような表情をする。もしかしなくても女性の見方が変わってきているらしい。ここが畳み掛けるチャンス。

そう、確かに人は恋をする。恋のためなら人はなんだって出来る。だが、『下心』と書いて『恋』とも言う。結局、人……特に男子を動かすのは!

 

「それに、経験とかに興味はありませんの?」

 

性・欲!

これに尽きる。高校生が付き合いたい理由の半分はピーーーーしたいからだ。多分。

もう、本当に男子ったらえっちなんだから。

 

「べ、ベール様⁉︎」

「あらあら、5pb.ちゃん?顔が赤いですわよ?」

「だ、だって……!」

「別に私はえっちな話をしたいわけではありませんわ。コレだって立派な愛の形ですわ」

「ベール様、指、指!」

 

あら、私の手にモザイクが。

 

「ですが、生物として当然ですわ。愛する人とまぐわう悦び……」

「『喜び』だよ、ベール様!漢字!」

「とにかく、レディースコミックなどでもコレは1つの愛として描かれることが多いですわ。冗談抜きで、愛する人とは交わるべきでしょう」

「ぅ、ま、まあ……」

「そう思いますわよね?ミズキ様」

「ん?ん、その、コレ?ってなに?」

「ダメ!ミズキ、その指ダメ!」

 

ミズキがベールの真似をしてイイ感じの指を見せる。ミズキの手にもモザイクがかかった。

 

「コレはコレですわ。単刀直入に言えばーーーー」

「言っちゃダメ!」

「………?なんのこと?」

「子作りですわよ、子作り。子供の作り方はわかるでしょう?」

「あの……卵子と精子がドッキングだよね」

「そうですわよ。そのための行為ですわ」

「うぅ……なんでこんな猥談に……」

 

5pb.が顔を真っ赤にして俯いてしまう。

だがミズキは本当に不思議そうな顔をして首を傾げる。

 

「ん……そういえば、どうやって卵子と精子ってくっつくんだろう」

「………はい?」

「え………?」

「コウノトリが関係してるとか、そんな感じ?」

 

『………………』

 

2人して固まる。

まさか、まさか………。

 

「セーーー」

「言っちゃダメ!ダメだからねベール様!」

「え、いや、まさか……コレを知らない?」

「だから指!」

「いや……ガチなのでしょうか……。私達をからかっているという可能性も……」

「で、でも、あの様子を見る限り……」

 

コウノトリなど言っているミズキだ。もしや、そのまさかだ。

 

「……………」

「ベール?どこ行くの?」

「………ちょっと、ミズキ様にゲームを貸そうと思いまして」

「ゲーム?なんの?」

「パソコンでやるノベルゲームですわ。題名は……『失われ○未来を求めて』といいますわ」

「『失わ○た未来を求めて』?」

「ええ……。少し、勉強した方がいいかもしれませんから」

「ボクもそう思う……」

 

結局ミズキは『失われた未○を求めて』という表紙に女の子が印刷されたゲームを貰ってリーンボックスを後にしたのだった。

 

「恋を知らないというのも……案外これが原因なのかもしれませんわね」




ゲスベールと案外純真なミズキ。エロゲをやればしっかりと汚れてくれることでしょう。

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