超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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またデート回。これから多くなるとは思うんですけどね。


デート・改

 

ネプテューヌが机の上で書類に向かっている。

その顔はむすっとしていてあまり機嫌が良くは見えない。

その部屋のドアを開けてミズキが入ってきた。その手にはジュースが入ったコップが握られている。

 

「はい、ネプテューヌ。お仕事お疲れ様」

「……ありがと」

「もう、機嫌直してよ、ネプテューヌ。せめて理由だけでも教えてよ」

「だから、言えないの〜!」

「はいはい。クスクス……」

 

結局ネプテューヌは女神達に押されてミズキの国巡りを許可することになってしまった。そのせいで不機嫌なのである。

 

「ネプテューヌ、午後空いてるかな?」

「え?空いてるよ〜」

「じゃあ、ちょっと出掛けようか」

「何処に?誰と?」

「ネプテューヌと。場所はまだ決めてない」

 

書類から目を離してミズキの方を見るといつものようにニコリと笑っているミズキが。

 

「約束、守ろうと思って。ネプテューヌの行きたい場所に行こう。ゲーセンでも、何処でも」

「ん、ん………」

 

生返事をして書類に目を戻す。

なんだか恥ずかしくて顔を見てられないからだ。

するとミズキがネプテューヌの横の書類の束を持って行った。

 

「そうと決まれば手伝うよ。ネプテューヌも行きたい場所、考えといて」

「わ、わかった……」

「クスクス、それじゃあね」

 

ネプテューヌの頭を優しく撫でてミズキは部屋を出て行く。

ネプテューヌはミズキの手の温度が残る頭にそっと手を置いた。

 

「断れるわけないじゃんか……ふんっ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「それで、やっぱりゲーセンなんだね」

「ええ。もちろん、他の場所にも行くつもりよ?」

「クスクス、任せるよ」

 

やってきたのは再び爆音鳴り響くゲーセン。

ネプテューヌは変身していてやっぱりミズキと腕を組んでいる。

 

「それじゃ、またクレーンゲームする?」

「い、いいわよそれは。格ゲーするわよ」

「クスクス……」

 

ネプテューヌが前のことを思い出して赤面する。さっさとネプテューヌは格ゲーの台に陣取った。

 

「さあ、始めるわよ。今日もボコボコにしてあげるわ」

「どうかな?僕も帰ってきてからプラネテューヌで格ゲーはやってたけど」

「ふふん、せいぜい数日でしょ?このゲームの熟練者である私に敵うはずがーー」

 

《1P、WIN!》

 

「私としたことが……死亡フラグを立てすぎたわ……」

「クスクス、忘れてた?僕はなんでも出来るんだよ」

「ひ、卑怯よそんなの!」

「さて、負けた方は勝った方の言うことを1つ聞いてもらうよ」

「あれ⁉︎そんな話あったかしら⁉︎」

「行間に目を凝らしてごらん。うっすらと見えてくるはずだよ」

「行間に、行間……見えるはずないでしょ⁉︎」

「クスクス、命令するよ」

「話聞いてるかしら⁉︎」

「クレーンゲームをやろう。またネプテューヌにプレゼントしたいからさ」

「む……す、好きにしなさい!」

「クスクス、そうする」

 

ミズキは少し前に行ってそれからネプテューヌの方を振り返った。

 

「どうかしたの?一緒に行こうよ」

 

そう言って手を差し出してくる。ネプテューヌは意固地になりながらその手を乱暴に掴んだ。

 

「それで、今日は何をとるのよ?」

「ん〜……どうしようかな」

 

ミズキはキョロキョロと周りを見ながらネプテューヌの手を引いて歩く。

 

「それじゃ、この『にゃんにゃん先生』にしようかな」

 

にゃんにゃん先生とはとある漫画に出てくる招き猫のキャラクター……らしい。

 

「犬の次は猫?」

「うん。それじゃ、任せて」

「また『なんでもできる』ってやつかしら?」

「この前とは景品の形が違うからね。そんなにうまくはいかないと思うな」

 

苦笑いしながらミズキはコインを入れるべくネプテューヌの手を離す。

ネプテューヌはほんの少しだけ寂しそうな顔をした。

 

「ん〜………ここかな……?」

 

ミズキがクレーンを操作している。

なんだか寂しくて下を向いたネプテューヌの目にミズキのズボンからぶら下がる物が見えた。

 

「ん、失敗か……」

「ねえ、ミズキ」

「うん?」

「そのキーホルダーって……」

「ああ、これね」

 

ミズキがちゃらりと音を立てるキーホルダーを見る。

それはいつかの時にネプテューヌがミズキにプレゼントしたものだ。

 

「もしかして、ずっと持ってたの……?」

「まあね。汚れちゃったりしたんだけど……これだけは、失くさないようにしてた」

 

優しげにキーホルダーを撫でるミズキ。ところどころ色が剥げたりしてしまっているものの、きっとこのキーホルダーはミズキの旅を全て見てきたのだろう。

 

「途中、何回も挫けそうになったんだよ。ネプテューヌ達が心配になった時もあった。けど、このキーホルダーを見ていると頑張れる気がしてね」

 

ミズキはネプテューヌに歩み寄った。そしてその頭を優しく撫でた。

 

「だから、ありがとう。それとごめんね。たくさん、悲しませちゃったし泣かせちゃった」

「………っ、バカ……!」

「んっ……ネプテューヌ………」

 

ネプテューヌがミズキの胸に飛び込む。胸がじんわりと温かくなる。ミズキはそれを優しく見つめて抱き締めた。

 

「……ネプテューヌ、恥ずかしいよ」

「ダメよ、これは罰なんだから……!また私を泣かせた罰よ……!」

「ネプテューヌ……。クス、僕はやっぱり甲斐性なしかもね」

 

通路の中とはいえこんな場所で抱きかれて目立たないはずもなく。

ミズキはネプテューヌの言う『通行人から凄い好奇の目で見られる上に写真をめちゃくちゃ取られる』という罰を甘んじて受けていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「もう大丈夫?ネプテューヌ」

「い、いいわよ。もう、大丈夫だから」

「なら、次に行きたいところはある?」

 

ネプテューヌは泣いてしまったことに赤面しているものの、ミズキが繋いだ手を離してくれないのでなんだか微妙な距離で歩いていた。

ミズキはなんだかんだ数回目のチャレンジでしっかりとぬいぐるみを取ってしまってそれを担いでいる。

 

「でも……他に行きたいところないのよね」

「ゲーセン以外に選択肢ないって……」

「そ、そんな顔しないでよ……」

 

なんだかしおらしくなってしまったネプテューヌ。

ネプテューヌは恥ずかしがるとしおらしくなるということをミズキは学習した。

 

「それじゃ、僕の行きたいところに行かせてもらおうかな」

「ミズキが?別にいいけど……何処に行くの?」

「ん〜……何処か、綺麗なところ」

「綺麗?」

「そ。森でも海でも公園でも……景色が綺麗なところに行きたい。心当たりはある?」

「そうね、それなら森の方へ行きましょう。私がお気に入りの場所があるの」

「それじゃ、そこへ行こう」

 

ネプテューヌと一緒に森まで歩く。そこまで距離はないし、ミズキもクエストに行っているので森の場所はわかる。

 

「ミズキ、私もごめんなさいね。アンチクリスタルを集めるためって知らずに、迷惑かけて……」

「迷惑なんかじゃないよ。たくさん後悔したし失敗もしたけど、それはネプテューヌのせいじゃない」

「いいえ、私のせいよ。ミズキがここを出ようとした時も、私……」

「ネプテューヌは間違ってないよ。僕だって立場が逆なら同じようなことをしてたよ。ちゃんと話さなかった僕も悪いしね」

「でも、それでもごめんなさい。私、ミズキと離れたくなくって……」

「わかってる、わかってるよ。だから何も言わなくっていい」

「うん……。でも、これだけは言いたいの。ミズキ、ありがとう。私達を助けてくれて、本当にありがとう」

「……どういたしまして」

 

ネプテューヌがミズキと距離を詰めて腕を組む。

もう日は沈もうとしていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ネプテューヌが言うお気に入りの場所はプラネテューヌが一望できる崖の上だった。

日はもう沈みかけていて夕日が綺麗だ。夜になればきっと満点の星空が見えるだろうし。

 

「私ね、ここが好きよ。プラネテューヌが一望できて、国民の皆も見れて。私の家だって気がするの」

「うん。僕もこの国が好きだよ。みんなが楽しそうに笑ってるこの国が好きだ」

 

2人は崖の上からプラネテューヌを見下ろす。

いつの間にか日が沈んで夜になった。少しずつプラネテューヌの街に電灯が点いて煌びやかになっていく。

 

「ねえ、ここはミズキの家よ。いつだって帰ってきていい、家なの」

「うん。わかってる。ここは僕がいていい街だ」

「だから、ね?ミズキ……」

 

ネプテューヌが縋るようにミズキに近付く。

ミズキがネプテューヌと向かい合う。

 

「帰ってきてね?またいなくなっちゃ、イヤよ……?」

「うん。また帰ってくる」

 

ミズキがネプテューヌの頬を撫でる。ネプテューヌはその手に手を重ねた。

 

「だから、はい。これ、預けるよ」

 

ミズキがズボンからキーホルダーを取ってネプテューヌの手に握らせた。

 

「僕が帰ってくる時まで預かっておいてね、ネプテューヌ」

「……ええ。きっと、預かってるわ」

 

しばらく2人はそこでプラネテューヌの街並みを眺めていた。




さあ、国巡りの始まり始まり。

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