ノワールは目の前で高みから見下ろすようにしているガンダムを睨む。
そのガンダムは右手にGNバスターライフル、左手にはGNシールドを持っていた。背中にはGNビームサーベルがある。リボーンズはそれを左手で引き抜いた。
「さて、何をしに来たなどと聞く気はないよ」
「……っ」
「帰ってもらう。君はミズキにとって不必要な存在なのだから」
「あら、帰れと言われて帰ると思うのかしら?」
「帰らせるために僕がいる」
無造作にリボーンズが右手のGNバスターライフルをノワールに向けた。
「消し飛んでもらう」
「っ!」
GNバスターライフルから照射ビームが撃ち出された。
ノワールは飛び上がってそれを避ける。
「さあ、罪深き女神よ。堕天の時だ」
リボーンズが背中から赤い粒子を撒き散らしながらノワールに接近する。
ノワールは円陣を蹴って真っ向からぶつかり合う。
「なかなかの力だ。だが、僕には遠く及ばない」
「アンタ、さっきからムカつくのよ!」
GNビームサーベルとノワールの大剣が散らす火花が激しくなる。
「ファング」
リボーンズの腰の後ろアーマーから小型のGNファングが4基射出される。GNファングはビーム砲を内蔵しビームサーベルも展開可能な遠隔操作兵器だ。
それは瞬時にノワールの周りに展開した。
「なに⁉︎」
「君も大したことはないね」
ファングがそれぞれビームサーベルを展開してノワールに切りつけていく。
「ああっ、うっ、あっ!」
「下がれ」
怯んだノワールの腹に冷たい銃口が押し付けられる。そのまま引き金が引かれ、強力なビームがノワールの腹に浴びせられた。
ノワールはそのビームに押されて吹っ飛び、デブリにぶつかってやっと止まった。
カシャカシャとファングがリボーンズの元へと戻っていく。
「拍子抜けだね。もう終わりかい?」
「そんな、わけ……!ないでしょ……!」
ノワールがデブリから体を起こす。ペッと口から血を吐き出した。
「アナタも……案外大したことないわよ。全然効いてない」
「言うね。偽りの神が……!」
ノワールに向けてリボーンズがGNバスターライフルを撃つ。ノワールは飛翔してそれを避けてもう1度接近する。
「君の間合いには入らせないよ。ファング!」
腰の後ろアーマー4基、そして盾から4基の小型GNファングが飛び出す。
ノワールに向けてビームサーベルを展開して迫るそれをノワールはひらりひらりと避ける。
「やあっ!」
「フン、やるじゃないか」
ノワールが接近する勢いを緩めることなくすれ違い様に1基のファングを切り落とした。
ノワールはそのままリボーンズに大剣を振り下ろす。
「……っ、あら?その程度かしら?」
「……僕を怒らせたいようだね」
ノワールの後ろからファングが迫ってきた。ノワールは後退してファングを避ける。
「あまり僕を怒らせない方がいい。苦しんで死ぬことになる」
変形してリボーンズキャノンになり腹のGNキャノンからビームを連射する。
ノワールはそのビームとファングを避けながら接近しようとするが左手のGNバスターライフルのビームが足に引っかかる。
「うあっ!」
「今だ、ファング!」
その隙をついてファングがノワールに迫る。ノワールは懸命にそれを避けるが脇腹にファングが刺さる。
「きゃああっ!」
「その隙は逃さない!」
怯んだノワールに向けて極太のビームが発射される。
ノワールはすんでのところで避けるがファングが休む暇を与えない。
「くっ、ううっ!」
「さっきまでの威勢はどうしたんだい?」
リボーンズに変形し直してGNバスターライフルを照射し、小型GNファングはリボーンズへと戻っていく。
ノワールはそれも避けて再びリボーンズに接近する。
「やああっ!」
「ぬんっ!」
再びスパークが剣の間で飛び散る。
「この空間では心の強さが力になる……。君は余程ミズキに依存しているようだね」
「依存なんて、してないわよっ!」
ノワールが大剣を振り切ってリボーンズを退ける。間合いを詰めて1度、2度剣がぶつかり合う。
「ほう。ではミズキは君にとってのなんだ?」
「っ、好きなのよ!ミズキがっ!」
リボーンズを蹴飛ばして大剣を振り回すがリボーンズは後退して避ける。そして盾から4基のファングが再び射出された。
「好き、か。到底僕には理解し難い感情だね」
「つまんない男ねッ!」
ビームを撃って牽制してくるファングを避けながらまたファングの1基が切り落とされた。
「意味としては知っているさ。全てを美化して全てを歪める哀れな気持ちだ。そんなもの、僕には不必要な感情なんだよ」
「好きは、好きはそんなんじゃないわよ!」
ノワールはファングに牽制されてリボーンズにうまく近寄れない。
リボーンズキャノンに変形してビームを連射してノワールをさらに遠ざける。
「ミズキにもそんな感情は存在していないよ」
「そんなわけ、ないでしょ!」
ノワールはビームの嵐を高速で回り込みながら避けていく。
「だが彼の中には愛がある。全人類を包み込もうとする愛が」
「神じゃ、あるまいし!」
「そうだ。ミズキは人の身でありながらそんな感情を抱いている。無論、神でもないミズキにそんなことが出来るわけがない」
新たにファングが腰裏から3基射出された。
ノワールを襲うビームの数が多くなっていく。
「知っているかい?ミズキは神を恨んでいる。それは女神である君達も例外ではない」
「なにを!」
「ミズキの生い立ちは知っているだろう?手を伸ばしても届かない光。叫んでも届かない声。ミズキは神ではなかった。だから祈ったのだよ。神様、どうか僕に力をくださいとね」
リボーンズキャノンは変形してリボーンズガンダムになる。
そして背中の大型フィンが射出された。
その正体は大型のGNフィンファング。4本のフィンファングが折れ曲りながらノワールへと向かっていく。
「ミズキの世界には神はいなかった。だからミズキの祈りも叶えられることもなかった。だが、考えてもみたらどうだい?やってきた世界には女神などという存在がいる……」
「っ、くっ!」
フィンファングがビームを照射して網のようにノワールの動きを阻害する。その背中に小型GNファングから放たれたビームが当たった。
「しかも女神などという名を冠しておきながら女神は非力だった。あまりにも。人であるミズキに敗北するほどね」
体勢を崩したノワールにファングが集中砲火をかける。ノワールの体から煙が吹き上がった。
「うあっ、あっ、きゃあああっ!」
「ミズキは君達に言いたかったはずだ。何故そんなにも無力なのかと。神だというのなら僕の願いを叶えて欲しいと。もう1度やり直したい、とね」
リボーンズがGNバスターライフルをノワールに向かって照射する。
ノワールは防御魔法を展開するが吹き飛ばされた。
「くっ、ぐっ!」
「わかるかい?本当はミズキは君達にうんざりしていたんだよ。だから君もそんな感情は捨てたまえ。どうせ叶うことのない想いだ」
「そんな簡単に捨てられたら!苦労してないのよ!」
「君も頑固だね。無駄だと言っているのに」
ファングがリボーンズの体へと戻っていく。リボーンズはファングを収納しながらリボーンズキャノンへと変形した。
「私は、ミズキのことが……!」
「ミズキのためを思うのならここから立ち去れ。君はミズキを再び戦いに引き戻す気かい?」
「そんなことは!」
「まだわからないのか!」
GNキャノンのビームが放たれた。ノワールはそれを螺旋を描くように避けながらリボーンズキャノンに迫る。
「君がそんな感情でミズキを引き戻すからミズキはまた苦しむんだよ!君のエゴでミズキはまた傷つく!」
「なにを!」
「無力で下等な偽りの神が!」
リボーンズキャノンの指からワイヤーが放たれた。ノワールは防御魔法を展開するがワイヤーはそれをすり抜けてノワールの腕に巻きついた。
「っ⁉︎」
「君が弱いから!ミズキがまた戦わなくてはならない!」
「ああああああああっ⁉︎」
ワイヤーから高圧電流が流れてノワールの体を焼いていく。
「そうすればまた繰り返しだ!愚かな女神はなにも学ばない!そうしてミズキが擦り切れて死んでしまうまでこんなことを続ける!」
「ああああああっ!っ、くっ!」
ノワールがワイヤーを切断して高圧電流から逃れる。
だがリボーンズキャノンの連射されるビームが避けられない。被弾してしまう。
「あっ、くっ!」
「神を恨んだミズキは神に殺される……!君達女神に殺される!そんなこと、僕は許せないんだよ!」
「私は、殺しなんか……っ!」
「現に君はミズキを戦場に連れ戻そうとしている!」
リボーンズガンダムに変形してGNバスターライフルを撃つ。ノワールの体にビームが掠った。
「どうせ君にミズキを守れるはずがない。また守られてしまうんだよ。そしてそれを繰り返してミズキは死ぬ」
「させないわよっ!」
「君がすると言っているんだよ」
「だとしたって!」
「トランザム」
リボーンズガンダムの体が赤く発光する。
あれは、ネプテューヌから聞いている……⁉︎
「何故わかろうとしない……!君は認めたくないだけだ。この先の未来に起こる惨劇を!」
「私はミズキを守って……!」
「それが不可能だと言っている!ファング!」
小型GNファングが6基、大型GNフィンファングが4基射出される。それは今までと全く違うスピードで残像を残しながらノワールに近付いていく。
「君がミズキを超えられるかい?ぬるま湯の中で暮らしてきた、偽りの女神が!」
「超えてみせるわよ……!今は無理でも、いつか、必ず!」
「そうすれば今度は君が壊れる。君が壊れるのを見たミズキが壊れる!結局同じなんだよ!」
「っ、私は壊れなんか!」
「壊れるよ!」
ノワールはファングの動きを目でも追えない。
全方位から浴びせられるビームも避けることができない。しかも威力もトランザムによって跳ね上がっている。
「うあああっ!」
「だから退がれと言っているんだ。今ならまだミズキは壊れていない。ただ眠っているだけだ。誰も壊れていないんだ、幸せじゃないか」
「そんな、幸せ……!」
リボーンズも残像を残しながら移動する。
ノワールの体をGNバスターライフルとファングが交互に焼く。
「あっ、ううっ、ああっ!」
「君の好きという気持ちが結果的にミズキを壊す」
リボーンズがGNビームサーベルで2度切りつけた。さらに切り抜ける。
「それを分かれよ」
「うああああっ!」
そこにファングが一斉にビームを撃つ。その全てがノワールに命中する。
リボーンズはトランザムを解除してファングを収納する。そしてキャノン形態に変形した。
「君のその気持ちは罪だ。ミズキを殺す罪だ」
「か……ぐ………」
「焼け爛れろ」
最大出力のGNキャノンがノワールに直撃した。ノワールは声も上げずにそれを食らってしまう。照射が終わった時、ノワールは遥か彼方の宇宙を煙を上げながら漂っていた。
(私が……この気持ちを抱いたことが……間違いだっていうの……?)
この気持ちを抱いてミズキを起こせばどうしてもミズキは壊れてしまう。私が守ってもミズキが守っても必ず両方壊れてしまう。どちらが先かということだけだ。
そうだ。必ずそれでは壊れてしまう。
(でも……諦められない……!)
なら、ミズキが壊れることを是とするのか?
(そんなわけ、ない……っ!)
ならばどうするつもりだ。
「はーっ、はーっ、簡単な話よ……!」
焼けた体を起こす。もう全身に力が入らないが、それでも。
「一緒に、戦うのよ……!一緒に、守るのよ……!1人じゃ壊れるなら、2人で……!」
ノワールのプロセッサユニットが残った力を総動員してリボーンズへと向かっていく。
「やめろ」
だがGNバスターライフルが撃たれてノワールはまた吹き飛ばされる。
「2人じゃダメなら、みんなで一緒に戦えばいいのよ……!」
お前はそれが正しいと思うのか?
「思うわよ!ミズキに聞いたら、クスクス笑ってそう言ってくれるだろうから……!それに私はミズキに頼まれたのよ、借りも返してないのよ!」
ボロボロの体で剣を構える。
「どいてもらうわよ……!アナタが何を言おうが私は、迷わない!」
………いいだろう。ならばミズキを壊すなよ。
「誓うわ」
……行け。力は宿った。
ノワールは右の脇腹に熱さを感じた。そこには炎のマークが浮き上がって見えた。
「戦うわよ、私は、一緒に!そのための力……!
ーーーー『儚くも永久のカナシ』
ノワールの体が光り輝く。
ノワールの両肩にコーン型のプロセッサユニットが2つ装着され、そこから緑色の粒子が噴き出す。そしてノワールの大剣の刃の部分がクリアグリーンになる。
「ツインドライブか……。それが君だけのものだと思うな」
「邪魔なのよ、アナタ!その鼻っ柱、へし折ってやるわ!」
ノワールの両肩のGNドライブが背中を向いて唸りを上げる。その粒子が描く形は00。
「トランザム」
「トランザム!」
2人が赤く染まっていく。
残像を残すほどの速さで2人は剣を打ち合っていく。
「ファング!」
「遅いのよ!」
ノワールはファングの嵐もトランザムの機動力で避けていく。
だがリボーンズがGNビームサーベルを振り下ろすとそれを受け止めるために止まらざるを得ない。
その隙にファングが1基ノワールの背に刺さった。
「やれ、ファング!」
「くうっ!」
ノワールを蹴飛ばすリボーンズ。蹴飛ばされたノワールの周りにファングが迫る。
だがノワールはそのファングの1基を手のひらで握って受け止めた。
「ぐぐっ、ぐっ……!」
ビームサーベルがノワールの手を焼く。さらにノワールはその手のファングを他のファングの防御に使う。2基のファングが砕けた。
「何を!」
「覚悟が、あるんだから!」
その機動力で大型のファングを切り落とした。これで小型ファングが残り4基、大型フィンファングが残り3基だ。
「無理だよ、君には!」
「その無理を覆したのが、ミズキでしょ⁉︎」
後退するリボーンズをノワールが追う。数回剣戟を重ねてまたリボーンズが後退する。ファングやGNバスターライフルの射撃など物ともせずにノワールはリボーンズを追い詰めていく。
「そこよっ!」
さらに小型ファングを切った。
するとリボーンズのトランザムが解除された。
「くっ、さっきのトランザムが……!」
「はあああッ!」
動きが鈍くなった大型フィンファングをさらに切り落とす。
そしてノワールはリボーンズの眼前にまで迫った。
「これでぇぇぇッ!」
「くそおおっ!」
ノワールの大剣がビームサーベルを持った左腕を肩から切り落とす。
だがリボーンズは残った右手のGNバスターライフルを捨ててノワールの体を掴んだ。
「くっ!」
「僕にも覚悟はある!やれ、ファング!」
「はあああああああッ!」
大型フィンファングがビームサーベルを展開してノワールに刺さる、その直前にノワールの目が黄金に輝いた!
「なっ⁉︎」
ファングが刺さる瞬間、ノワールはまるで砂細工を崩すように緑色の粒子になって消えた。
「まさか、量子化⁉︎」
「やあああああッ!」
振り返ったリボーンズの先に砂時計を逆再生するようにノワールの体が出来上がっていた。
ノワールの大剣がリボーンズの腹に減り込んだ。そしてその周りの装甲を熱で溶かしながら断ち切り、リボーンズの体が真っ二つに分かれた。
「そんな、この僕が!」
「女神、ナメんじゃないわよ!」
告白剣。余は奏者が大好きだー!
力を貸したのはジョー。ツインドライブシステムとトランザムシステム、それにイノベイターが覚醒しました。
この上から目線はなかなか難しい。アニメでもリボーンズガンダムとダブルオーライザーの戦闘って案外短いんですよね。だからセリフが掴みにくかったです。