そしてたった4人のチームは子供を助けるために戦争を止めるべく戦った。
A国とB国が戦っている。なら、両方倒してしまえばいいじゃない、と。
4人はB国の戦艦を奪い取って宇宙へ飛び立って戦った。
その過程でミズキは何度も悩み苦しんだ。
何故殺さなければならないのだろう。
何故人は死ぬのだろう。
何故こんなに苦しいのだろう。
その度にミズキはみんなに励まされた。みんなに気付かせてもらった。
なんでも出来たミズキが唯一できなかったことが助けること。
どんなに手を伸ばしても命はまるで綺羅星のように消えていく。
ミズキは、それにも負けない強さを手に入れた。今はダメでも、次は。次がダメならその次こそはと。
『あら?ミズキ、戦争は終わったらしいわよ?』
『ホントに⁉︎』
『拍子抜けよね。3年も戦ってないのに』
『なら、次の楽しいことを探せばいいさ』
『そうね。さ、次の案はある⁉︎』
『少し休むにゃよ。私はC国に帰ってみんなの顔が見たいにゃ』
『カレンは相変わらずだな』
『うるさいにゃ、ジャック』
その中でジャックという新たな友達も生まれた。
だが、戦争は終わっていなかった。
突如、彼らの耳にA国の本拠地である月が占拠されたという情報がある。
黒幕はビフロンスという女。彼女は天才だった。
天才だからこそ、全てに絶望して、それでもまだ希望を抱こうとしてコールドスリープに入った。
だが彼女が目覚めた時、戦争は終わっていた。それが彼女を一層に絶望させる。
戦争が終わるということはまた戦争が起こるということじゃないか。何故人類は滅んでいないのか。私は私が絶望しないために、この世界を壊そう。
彼女は圧倒的だった。彼女の体にもミズキ達と同じ変身システムが埋め込まれていた上に、彼女の英知を結集したものが彼女自身に埋め込まれていた。
『次元破壊爆弾ですって⁉︎それも、あと1ヶ月で爆発⁉︎』
『シルヴィア、行こう!』
『当たり前よ!こんなに面白い世界を壊されてたまるもんですか!』
『さっさと帰って寝るにゃ』
『今までにない大仕事だな』
だが彼女は不老不死の体だった。細胞の1つすら残せば復活する化け物。
彼女の圧倒的な力の前に4人は押されていた。
『あははは!この爆弾を止める術はないの!諦めて寝てたら⁉︎』
『ふざけないでよね!無理なんて言葉は聞き飽きてるの!』
『じゃあ無駄!無茶!アナタ達のやってることはね、意味のないこと!』
『それでも私達がやりたいことなのよ!アンタに言われてやめられるほど、私はお嬢様じゃないの!』
4人は必死に戦った。
だがジョーの体の半分は消し飛んだ。カレンの両手はなくなった。シルヴィアの胸には剣が貫通していた。
だがミズキはボロボロの体でビフロンスを機能停止にまで追い込んだ。
それと同時に次元破壊爆弾はカウントダウンを始めてしまう。どのみち、ビフロンスを倒しても次元破壊爆弾は爆発する運命だったのだ。
『みんな、頑張って!大丈夫、きっと助かる!』
『……っ、はあ……ミズキ……。次元ゲートよ……』
『次元ゲート……⁉︎』
『傷の浅いアナタなら使える……。どこに繋がるかは、わからないけど……。そこを、開けば……』
『シルヴィア、お前らしくないな……』
『……わかってる、わよ……』
『さあ、ミズキ、開くにゃ。……時間がないにゃ……』
ミズキは次元ゲートを開いた。
その瞬間、ミズキは背中を押されて次元ゲートの中に押し込まれた。
『お前らしくないよ、シルヴィア……。ミズキだけ、助けるなんてな』
『うっさいわよ……。最期なんだから、カレンと抱き合ったりとかしてたらどうよ』
『それは後でもできるにゃ。今は……』
3人はそれぞれ体に刻んだ炎のマークを次元ゲートの向こうのミズキに見せる。
そして最高の笑顔でミズキを送った。
ミズキは涙でぐしゃぐしゃになった顔で右手の炎のマークを3人に見せた。
3人と同じ、笑顔で。
そしてミズキは次元ゲートをくぐり、どこの次元かもわからない次元に飛ばされた。
ーーーーーーーー
「それが、あの時の……」
その直後にエンシェントドラゴンとの戦闘をしてネプテューヌを助けたのだ。
「人が潜れる次元ゲートはまだ未完成だった。どこに飛ぶかもわからない上に一方通行。さらに入り口の次元ゲートを制御するのに最低でも3人必要だった」
全員が俯く。
そんな過去、知らなかった。あるとも思わなかった。
「そしてあのアンチクリスタルはビフロンスの絶望が形になったものだった」
「え⁉︎」
「ミズキは最初にエンシェントドラゴンと戦った時からそれを感じていたのだ。奴の絶望などロクなものじゃない。現に奴の絶望は女神を殺す力を持っていた」
ミズキが1人で国を出た理由はミズキ自信がケリをつけたいという気持ちもあったのだが。
「……これで話は終いだ。後は、ミズキの中に入る者を決めるが……」
女神達が一歩前に出た。
下に向けていた目を前に向け、まっすぐに見据える。
「……決まりだな。これより、作戦を開始する」
ーーーーーーーー
部屋にはミズキが変わらない笑顔で横たわっていた。
何も憂いていないような笑顔。
「……恐らく、お前達が入ればミズキの心の防衛システムが働く。それを打ち倒せ」
「打ち倒すのですか?」
「そうだ。人工的な手段で入ろうとした時に起こるノイズのようなものだ。打ち消して構わん」
4人の女神は変身した。
そして全員がミズキの手を握る。
「……頼んだぞ」
「任せて」
「任せなさい」
「任せろ」
「任せてくださいまし」
「……人工フル・サイコダイブ、開始」
4人の女神は糸が切れたようにバタンと倒れた。その手だけは離すことなく。
ーーーーーーーー
「………ここは……」
ベールは変身後の姿で目覚める。
そこは真っ暗な世界だった。遠くにいくつもの煌めきが見える。
「宇宙、なのでしょうか」
ふと後ろを振り向くと戦火が見える。巨大な戦艦や人型のロボットが戦っている。
「ククク……永遠の戦いから解放され眠りについた戦士を呼び覚まそうと言うのか……」
「誰ですの⁉︎」
後ろを振り向くとそこには灰色のどっしりとしたガンダムがいた。顔には仮面のようなフェイスガード、背中には太陽のような円板型の大型バックパックがある。
「この機体の名はプロヴィデンス……。無垢な戦士の無垢な眠りを脅かす女を退ける者さ」
「プロヴィデンス……」
左手の大型のビームライフルーーユーディキウムをプロヴィデンスはベールに向けた。
「帰れ、女!貴様の中に少しでもミズキへの情があるのなら!」
「悪いけど、そういうわけにもいきませんの」
ベールは槍を召喚して構えた。
「通させてもらいますわ」
ブランも似たような宇宙にいた。だが周りはとても静かでデブリが大量に浮かんでいる。
「なんだ、ここは……」
「貴様……何をしに来た」
上を見上げるとそこには赤茶けた悪魔のような形のガンダムがいた。
胸のクリアグリーンのコアが光り輝いている。
「テメエがノイズか。悪いが通させてもらうぞ」
「フン……この機体の名はエピオン。貴様は」
「私はブランだ」
「……もう言葉はいらん。貴様も戦士と言うならば、かかってこい!」
エピオンの右手のビームソードから緑色の刃が発振した。
ブランも斧を構える。
「どきやがれ!」
「宇宙……なの……?」
ノワールは真っ暗な中に星の煌めきが輝く世界にいた。
瞬間、ノワールは急上昇する。
その直後にノワールがいた場所を極太のビームが掠めて行った。
「っ、誰⁉︎」
「フン、避けたか。でも、そうでなくては拍子抜けだ」
視線の先には真っ赤な機体。胴体には特徴的なキャノン砲のようなものが4本ある。目はモノアイだ。
だが、その機体は変形を開始する。
振り向いて関節をひっくり返し、顔を展開したその姿はガンダムだった。
「ガンダム……⁉︎」
「リボーンズガンダム、行く」
「ここが……ミズキの心の中なの……?」
ネプテューヌはキョロキョロと周りを見渡す。
周りにはロボットの残骸が大量に転がっている。それは無残でネプテューヌは胸が締め付けられる。ミズキはこんな世界で生きてきたのだろうか。
するとネプテューヌはデブリ帯の方向で煌めく物を見た。それはバレルロールをしながらこちらに近付いてくる。
「っ、敵……⁉︎」
敵は手に持った銃をこちらに向けた。ネプテューヌはそれに見覚えがあった。
ミズキがあの時持っていた……!
「ビームマグナム……⁉︎ヤバい!」
ネプテューヌは急上昇してそのビームを避ける。飛んでいったビームが機体の残骸を蹴散らしていく。
「帰れ……!何をしに来た!」
「っ、あいつがノイズ……⁉︎」
「ここから、いなくなれぇぇぇっ!」
黒と黄色の機体がビームマグナムを持っている右腕からビームサーベルを引き抜いた。
「バンシィ!奴を引き裂けぇッ!」
プロヴィデンス、エピオン、リボーンズ、バンシィ・ノルンの登場。
原作のような言葉遣いを目指しますが、あくまでミズキの心の中の彼らなのでミズキには甘いです。やたらと。
こん中ではプロヴィデンスが1番ヤバいと思いましたね。なんですかあの弾幕。その中を掻い潜るキラもキラですけど。
ノワールやネプギアがアンチクリスタルに触れた時に聞いた声はビフロンスの声だったわけです。