超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ミズキが生まれてからゲイムギョウ界にやってくるまで。長っ苦しい説明文です。読むのが嫌になると思います……。

それと、また挿絵を書き足しました。『ノワール』にも貼りますがここにも貼っておきます。


【挿絵表示】



全ての始まり

プラネテューヌの教会、そのリビングのようなところに各国の女神と女神候補生が集まっていた。それにアイエフとコンパを加えたのがここのメンバーだ。イストワールは疲れが出たらしくぐっすりスリープモードだ。

そこにジャックが入ってくる。

 

「話には聞いてると思うが、これよりミズキ救出作戦を開始する。まずは作戦の説明からだ」

 

『…………!』

 

全員が決意を秘めた目でジャックを見る。

ジャックはその視線を受け止めて説明を開始した。

 

「今回の作戦はミズキの心を呼び覚ますために、お前達がミズキの心の中に入り、直接呼び覚ますというものだ」

「ミズキの心の中?」

「そうだ。お前達もあの結界で体験しただろう。フル・サイコダイブだ」

「フル・サイコダイブ……」

 

ノワールはその言葉に聞き覚えがあった。確か、ミズキが結界の中に入った時の……。

 

「あの時、お前達は心の中でミズキと出会ったはずだ。そして、託された」

「あれって……私達の心の中だったんだ……」

 

ネプテューヌはあの時のことを思い出す。なんの建前も上辺もなく感じ合えたようなあの世界。あれは心の中の世界?

 

「ミズキは強力なニュータイプであったからお前達の心に踏み込むことができたが……お前達にはそれは出来ない」

「じ、じゃあどうすればいいのよ!」

「執事さん、起きない……?」

「それを可能にする」

 

ロムとラムの疑問にジャックは空中にモニターを浮かべた。

 

「ミズキを……例えば、萎んだ風船だとしよう。中の空気が心だ。お前達という膨らんだ風船がミズキという風船の中に入り込み、少しずつ空気を入れるようなものだと思ってもらっていい。そうすれば後はミズキの中で勝手に風船は膨らむ」

 

モニターには風船の画像が映し出された。

 

「だがお前達にはこの風船の口を通り抜けることが出来ない。俺がその中継役を務めるが、因子がいる」

「因子……?なによ、それ」

 

ユニが聞き慣れない単語に首を傾げる。

 

「ミズキを構成する要素のようなものだ。幸い、お前達はそれに事欠かない」

 

モニターには全員の顔が映し出された。

 

「ミズキの光を間近で浴びたアイエフとコンパ」

 

「ミズキの力をその身に宿す女神候補生」

 

「そしてミズキが心の中に踏み込んだ女神」

 

「全員がミズキの中に入れる可能性がある」

 

その事実に全員が嬉しそうな顔をする。助けられるかもしれない。自分達の手で。

 

「だが全員が入れるわけではない。あまり入る風船が多過ぎれば器であるミズキの風船は破裂してしまう」

 

モニターには風船がたくさん中に入った結果、破れてしまった風船が映し出された。

 

「そして何より、お前達はミズキのことを知らなさ過ぎる」

 

『……………』

 

全員が俯く。確かに、ミズキのことを何も知らない。1番過ごした時間が長いネプテューヌでさえも知らないことだらけだ。

 

「……少し、昔話をしようか」

 

宙のモニターが大きくなった。

 

「仮にもお前達はミズキの心の中に入る。ならば、その心を受け止めて抱きしめる必要がある。ミズキは未だにお前達との間に壁を作っている。その壁を打ち壊すにはまず、ミズキの過去を知ってもらう」

 

モニターが真っ黒く染まった。

 

「……覚悟を持って見届けろ。これがミズキのありのままだ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ミズキは試験管の中で生まれた。

地球から遠く離れたコロニー、その研究所だ。そこでは非道な実験が日夜行われていた。

世界を……いや、宇宙を真っ二つに割った戦争は終わりを知らなかった。既に戦争は5年も続いていた。

モビルスーツと呼ばれる巨大な兵器がひたすらに弾を撃ちあい、壊れていく。

 

その戦争をしていた片方の国……A国はとある人体兵器を作ろうとしていた。

何億年と前から戦争が起こる度に現れてその戦局を大きく左右した機体、『ガンダム』。それを再び復活させようとしたA国はそれを人の体に埋めこもうとした。

人間サイズにまでガンダムを小型化して戦わせる。

では、パイロットは?

 

そこで生み出されたのが変身システムだ。最近見つけ出された次元科学を使い、倉庫次元なるものを作り、その中に小型化したガンダムを収納。そして人間が変身することでガンダムを動かすのだ。

人間の意志だけをガンダムに瞬時に移動させ、肉体は倉庫次元に置く。

それは並の肉体では不可能だった。だから、人体実験を行ったのだ。

 

戦争の孤児を安値で買い取り、連れて来る。

まず第1に体に埋め込む次元装置からだ。

それを体に埋め込んで使えるようになれば、成功。失敗すれば子供は死んだ。死体から次元装置を引きずり出して、また埋め込む。

成功確率が10%を超えることはなかった。

 

そして成功したならば倉庫次元に置かれても無事な肉体を作る必要があった。

徐々に体の筋肉や骨を人工物に置き換えていく。

さらに、兵士としても死なない体を作ろうとして様々な機械がさらに埋め込まれた。

成功した者は永遠とも言える寿命と強固な肉体、傷ついても瞬時に回復する体を手に入れた。

その成功確率、1%。

 

死んだ子供達は資金の足しとして臓器を売られ、残りは宇宙に捨てられた。人を人とも思わぬ狂った実験。

それが成功した子供は最終的にたった3人だった。

 

だが資金も時間も無限ではない。

研究者は考えた。始めから壊れない肉体を作ればいいのだと。

様々なDNAを採取し、盗み、混ぜていく。母親だとか父親だとか、そんなものはない。

そして何度か失敗を重ねた後に彼は生まれた。

産声をあげて泣く子供は4番目の子供としてDという名前をつけられた。

満を持して研究者は彼に手術を行う。そしてそれは成功した。今までにないスムーズさで。

Dは特別な存在として3人の子供のいる部屋へ入れられた。

そこにはAとBとCという子供がいた。

それがミズキの出会い。ミズキの始まりだ。

 

『アナタはなんて名前?私はね、シルヴィアっていうのよ。いい名前でしょ?』

『君は、Bじゃないの?』

『嫌よ、そんなダッサい名前。アナタも嫌じゃない?Bとか』

『クスクス、そうかもしれないね。でも、僕の名前もDっていうつまらない名前だよ』

『ここはひとつ、シルヴィアが命名したらどうにゃ?』

『そうだな。俺達の新しい仲間なのだから』

『それもそうね……。クスクスって笑うから……クスキ……クスキ・ミズキ!』

『なんで僕はミズキなの?』

『語呂がいいじゃない。なんとなくよ、なんとなく』

 

彼らは本来洗脳紛いの教育を受けて完全な戦闘マシーンとなるはずだった。

だがシルヴィアは違った。いつかこの狭い世界から出て旅をするのだと強く願った。

そしてそれはジョー、カレンという仲間を作り、さらにミズキも加えた。

 

『4人になったからチームっぽいわよね。私が隊長。ジョーが副隊長。カレンが戦闘員で……ミズキは下っ端?』

『納得いかないにゃ!私は副隊長やるにゃ!』

『悪いがここは譲れんな』

『僕の下っ端よりマシだと思うけどな……』

 

そして彼ら彼女らは教育を受けながらも洗脳されることはなかった。シルヴィアが教えたのだ。

世界には本当のことと嘘のことがある。それを見極めなければならない。大人が言ってることにも間違いはあるのだから、と。

ある日、ミズキは研究所内の道を歩いている時に台車で運ばれる山積みになった子供の死体を見た。

 

『重いんだよなあ、ったく』

『役に立たないくせに扱いにくいときた』

『本当に、生きてる意味なんかねえのにな』

 

そんな会話を聞いた。

それはミズキの経験する初めての感情だった。

内側から爆発するような、涙が出るような、何かにぶつけなきゃ気が済まないような。

 

『ここを出よう!みんなを助けよう!僕達にならそれができる!』

『だが、ここがどこかもわからんのだぞ』

『ここを占領すればいくらでもわかるよ!僕は、僕と同じくらいの子供達が捨てられるのが許せない!お願い、シルヴィア!』

『……ミズキ、アナタ……』

『…………!』

『……最高に面白そうなこと思いつくじゃない!』

『シルヴィア!』

『隊長がそう言うなら従うしかないにゃ。作戦を考えるしかにゃいね』

『………ふふっ、仕方ないな』

『うんっ!仕方ない!』

 

ミズキ達はガンダムの力を駆使して研究所を占拠した。

決して子供は逆らわないと思っていた大人のうろたえよう。そして子供達の救出。その過程でいくつもの死体を見た。手遅れの子も見た。目の前で死んだ子も見た。

大人は脱出ボートを使わせて宇宙に置き去りにした。

その研究所にあった戦艦をミズキ達は占領。そして宇宙を2分する戦いの中でも中立を保っていたC国に亡命した。

その最中に何度も攻撃されたがその度に追い返した。ミズキ達の力は圧倒的だった。

 

『ねえ、ミズキ。アナタって何でもできるわよね。つまんなさそうよ』

『うん。僕はたくさんの遺伝子を混ぜられたらしいから、いろんな才能があるんだよ』

 

ミズキは何でもできた。料理も洗濯も運動も勉強も戦いも。

シルヴィアはそれをつまらなさそうと言ったが、ミズキはそれでよかった。それがみんなの役に立っているのがつまらなくても嬉しかった。

そして戦艦は遂に中立のC国に辿り着くことが出来た。C国は手厚い支援をしてくれ、子供達も預かって必ず親を探すと言ってくれた。それに嘘偽りはなく、親に再会できた子供も数人いた。

その国でミズキの気持ちは膨らんでいく。

 

『……この戦争が終わらない限り、みんなみたいな子供はたくさん生まれる……』

『だったら、ミズキはどうしたいの?』

『にゃ、また面倒ごとかにゃ?ミズキはお人好しだにゃ』

『頬が緩んでいるぞ、カレン』

『当たり前にゃ。面倒だけど……嫌じゃないにゃ!』

『言わなくてもわかるさ、ミズキ。さあ、シルヴィア』

『よし、仕方ないわね!私……私、たち……』

『どうかしたか?シルヴィア』

『お腹でも痛いのにゃ?』

『な、なんてこと!私としたことがチーム名を考えるのをすっかり忘れていたわ!今から決めるわよ、すぐ決めるわよ!』

『チーム名、ね……。ヤンキースみたいなものか?』

『子供達で良くない?』

『子供たちぃ〜?にゃんでそんな名前なのにゃ?』

『子供を助ける、子供だけのチーム。だから、子供たち、とか』

『ふむ、子供たち、子供たち……ね……。採用よ!』

『ええ、いいのかにゃ?』

『ちょっと物足りないけど、私達のことをビシッと指してるわ!じゃあ、『子供たち』!作戦開始よ!』

 

 

 




シルヴィア、カレン、ジョーの登場。
ミズキが生まれて、戦争を止めて、そして次元が崩壊してしまうまでの話。
ミズキの希望に満ちていたころのお話です。長く説明口調が続くので、飛ばした方がいいかもです。次の話で多分、終わります、

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