超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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次回から話をパパっと進めたいですね。早くイチャイチャさせたい。


心の強さ

「ねえ、あいちゃん」

「なによコンパ」

「なんで2人は模擬戦してるですか?」

「ネプ子からはネプギアが欲しいものを掴ませるためって聞いたわよ」

 

上空ではネプテューヌとネプギアの拮抗した戦いが行われていた。

ネプテューヌはなかなか攻撃出来ず、ネプギアは決め手がない、といった感じか。

 

「ぎあちゃんは何が欲しいんですか?」

「それはネプギアにしかわからないわよ。でも……」

「でも?」

「多分、単純な強さではないと思うわ」

 

 

 

「くっ、なんで……!」

「そこっ!」

「ああっ!」

 

ネプギアがネプテューヌの太刀を受けて吹き飛ばされる。

ネプギアは後退しながらM.P.D.B.Lを発射するが擦りもしない。

 

「っ、なんで!」

「どうしたの⁉︎もう限界かしら⁉︎」

「くっ、あっ!」

 

苛立つネプギア。自分が主導権を握っているはずなのに仕留められない。

ネプギアはノーマルの状態のM.P.D.B.Lでネプテューヌの太刀を受け止めた。

 

「まだわからないかしら?ネプギアの欲しいものは掴めそう?」

「っ、まだまだ!」

 

ネプギアはプロセッサユニットのパワーを最大にしてネプテューヌを押し切ろうとする。

ネプテューヌはそれを横にいなす。ネプギアは咄嗟に後退できず、ネプテューヌに背中を晒した。

 

「そこねっ!」

「きゃあっ!」

 

ネプテューヌの真っ直ぐ振り下ろした太刀がネプギアの背中にもろに入った。

ネプギアは落下して地面に叩きつけられた。

 

「ぎあちゃん!」

「行きましょうか」

 

コンパとアイエフもネプギアに駆け寄った。

ネプギアは地面に叩きつけられたものの、ダメージは少ないらしく立ち上がった。

無論、武器の出力を模擬戦用に絞っていたというのもあるが。

 

「勝負ありね、ネプギア」

 

ネプテューヌは空から降りてくる。

 

「ぎあちゃん、怪我はないですか?」

「は、はい……。大丈夫、です……」

 

ネプギアの顔は暗い。それは負けたから、ではあるが悔しいからではない。負けて悔しいから暗い顔をしているのではない。負けた自分が情けなくて嫌になるから暗い顔をしているのだ。

 

「ネプ子、そろそろ答えを教えてあげたら?」

「……そうね、ネプギア」

「………うん」

「多分ネプギアの力は私と互角かそれ以上はあるわ。それでも負けたのはどうしてだと思う?」

 

思い当たる節はたくさんある。

苛立っていたこと、熱くなりすぎたこと、ミス。でもやはり1番の要因は……。

 

「経験、だと思う」

「そうね。それも確かに一因だわ。だけど、70点」

 

ネプテューヌは指を立ててウィンクしてくる。

 

「ネプ子にしては考えてるじゃない。じゃあネプギアには何が足りなかったっていうのよ」

「そのためにはまずネプギアが欲しいものについて考える必要があると思うの。あと、一言余計よ」

「ぎあちゃんが欲しいものですか?ぎあちゃんは、何が欲しいですか?」

「私は……もっと強さが欲しいです。ミズキさんを守れるくらいの強さが。だから、ミズキさんよりも強くなりたいんです」

 

あの笑顔を2度と失いたくない。ずっと側にいて欲しい。だから、私が守り抜きたい。

 

「つまり、ネプギアは『ミズキより強くなりたい』ってことだけど、それって『ミズキを守りたい』ってことよね」

「それは……うん」

 

ミズキさんがいなかったらこんなに強さが欲しいとは思わない。ミズキさんが守りたいっていう気持ちがあって、それから私はミズキさんよりも強くなりたいって思ってるんだ。

 

「で、今ネプギアは何をしてる?」

「そうね……。ミズキを守るために強くなろうとしてる、ってことでいいのよね?」

「は、はい。そうです」

 

そのためにモンスターも倒してるし、トレーニングも始めた。

 

「すると、ネプギアに今足りないものは『強さ』それと私が勝った要因の1つの『経験』が足りないわね」

 

ネプテューヌは指を2本折る。

 

「ねぷねぷはそれを補うために模擬戦をしたんじゃないんですか?」

「それもあるけど、あくまでそれはついでよ」

 

チッチッチと得意げに指を振るネプテューヌ。

 

「……なんか、今日はネプ子がウザいわね」

「ヒドいわね⁉︎せっかく人が順を追って説明してるって時に!」

 

ネプテューヌがアイエフにムキーッ!と怒る。

 

「……まあいいわ。でもね、ネプギア。アナタに足りないものはまだあるのよ」

「……まだ?」

「そう。それはネプギアが私に負けた1番の要因でもあるわ。それって何だと思う?」

 

その言葉でネプテューヌ以外の3人がう〜んと考え込む。

 

「頭の良さ、とかですか?」

「だったらネプギアの方が上よ」

「そ、そうですね……。私、馬鹿なこと言ったです」

「………泣いていいかしら」

 

ネプテューヌが少し涙目だ。

 

「そうね、ネプギアがまだ女神化を使いこなせていない……ってのは経験に入るわよね」

「体格……とかじゃないですよね」

 

ばるん、とコンパの胸が揺れた。

……………。

 

「それで優劣が決まるわけないでしょまったくよく考えて発言してくれないコンパそもそもアナタはねいつもいつも……」

「ふええっ⁉︎あいちゃんが怒るですぅ!」

「……私も、抑えきれない憎悪が……」

「ふええっ⁉︎ぎあちゃんまで⁉︎」

 

ちなみにこの瞬間ルウィーの女神が“ボールペンを”ボキリと割って、変身すると体の一部が軽量化するラステイションの女神候補生が無意識に舌打ちをした。

 

「じゃあ、答え合わせ。ネプギア、アナタに足りないのはココよ」

 

ネプテューヌはトントンと自分の胸を指で叩いた。

……………。

 

「ネプギア、今なら勝てるわね?」

「はい。他にも2人ほど味方してくれる人がいると思います」

「きゃあああ違う違うそういう意味じゃなくって!」

 

鬼の形相で武器を振り上げた2人を必死に抑えるネプテューヌ。

 

「ミズキが持ってて、ネプギアが持ってないもの。それは心の強さよ」

「心の……強さ……?」

「そうよ。私だって、全然ミズキには及ばないものよ。私だってミズキに託されなかったら今頃ネプギアみたいになってたかもしれない」

 

ミズキが頼んでくれたから、信じてると言ってくれたのがネプテューヌの心を支えて強くしていた。

 

「例えば……強くなったネプギアとミズキが戦ったとして。ミズキは何度ネプギアに倒されても立ち上がるはずよ。それは、心が強いから」

「心……が……」

「だから、ね?ただ強くなろうとしても意味ないの。それをネプギアは、本当はわかってたはず」

 

思い当たる節はある。ネプギアの心に強く根付いていた虚しさ。それはきっと、こんなことが意味のないことだってわかってたから……。

 

「でも、じゃあ、『心の強さ』がミズキさんに追いつくにはどうしたらいいのかな……」

「それは私にもわからないわよ。『心の強さ』って言っても1つじゃないわ。ミズキは挫けない心を持ってる。けど、その反面とても脆いって、私は思うわ」

 

他人のためなら何度でも立ち上がるミズキ。だけど、その分他人がいなくなった時は普通の人以上に傷つく。それがミズキだ。

 

「私は私の強さを見つけるわ。ネプギアも、ネプギアの強さを見つけなさい」

「私の、強さを……」

「ネプ子、大事なところで適当ね」

「……あいちゃん、私に何か恨みでもある?」

「別に」

「ちょ、私が何したっていうのよ〜!」

「はいはい、コンパ、帰りましょう」

「はいですぅ」

 

コンパとアイエフがさっさと帰るのをネプテューヌが追いかける。それを見ながらネプギアは自分の胸にあるものを確かめた。

 

(私の、強さは……)

 

ネプギアはそれを握りしめる。まだ、確信なんかないし、正解があるわけではないけれど。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「……イストワール、大丈夫か」

「………え?あ、はい、大丈夫ですよ」

「ダメだな。休むぞ」

 

しゅんとイストワールは落ち込んでしまう。

休みを取るペースが3日目に入って段々と多くなり始めた。

自分が足手まといになっている、という事実にイストワールは珍しく打ちのめされていた。

 

「すいません、私のせいで……」

「謝るくらいなら休め。それに、イストワールだけが悪いわけではない。俺がペースを考えないのも悪い。だから気にするな」

「……でも、全然そんなことは……」

「そんなことは、なんだ」

「全然、休みたがっているようには見えません。いざとなれば、私のことなんて……」

 

ふぅ、と息を吐いてジャックは次元倉庫から小さなペットボトルのようなものを取り出す。それをイストワールに向かって投げた。

 

「あっ、とっ、とと……!」

 

イストワールは取りこぼしそうになったものの、なんとかキャッチする。

キンキンに冷えていてとても美味しそうな水だ。

 

「男という生き物は、強がる生き物だ」

「………え?」

「俺も強がっている。そして、ミズキも強がっていた」

「それは、つまり……」

「本音を言えば俺もキツい。顔に出ないだけだ」

 

ジャックは自分の分のペットボトルの栓を開けてグビグビと飲む。ジャックの口の端から水が滴った。

 

「だが、女というものは強がらない生き物だ。その代わりに強がる男を癒す。俺はそのように考えている」

 

ジャックは次元倉庫に空になったペットボトルを放り込む。

 

「だから、この状況は俺の望むような状況でないことはわかるな?」

「は、はい……」

「……話が逸れたな。これでは何が言いたいかわからんか」

 

ジャックは首の動きで「飲め」と伝えてくる。イストワールはその通りに栓を開けて水を飲み始めた。

やはり、キンキンに冷えていて美味い。

キンッキンに冷えてやがる……!美味すぎる、反則的だ……っ!

 

「せめて労らせろ、と言いたいのだ。女に無理はさせるものではない。だが無理をさせている今、せめて俺はイストワールを労らないと気が済まない」

 

厳しい表情のままジャックは部屋の扉から外へ出て行く。

 

「もう1つ。……男は面倒くさい生き物だ」

 

そう言ってジャックは部屋から出て行った。

イストワールはポカンとそれをしばらく見ていたが、しばらくしてやっとジャックの言葉を理解できた。

 

「照れ屋さん……ということでしょうか」

 

無理をしないで休めと言いたくて、それで自分も休みたいと言いたくて、終いには私を休ませたい、と言ったということか。

それを正直に言えず御託を並べてしまうのも、男の面倒くさいところだと。

 

「だとしたら……カワイイですね」

 

イストワールは残った水を飲み干す。

喉を冷たい水が潤していく。

 

「では、お言葉に甘えて」

 

少し、眠りましょうか。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その日、夕日が沈むころ。

ジャックはイストワールの額から額を外した。

 

「ジャックさん……?休憩ですか?」

「いや、その必要はない。各国の女神を集めるぞ」

「そ、それでは……」

「……ギリギリ3日には間に合ったというところか。明日から始めるぞ」

 

 

「ミズキ救出作戦の開始だ」




ツンデレジャック。
この言い方だと世界中のツンデレが操られそうです。

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