超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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やっとオープニング前のライブが終わります。


伝わる想い、確かな力

その歌は、なんのために?

 

その歌は、祈るために。

 

その歌は、なんのために?

 

その歌は、感じるために。

 

その歌はなんのために?

 

その歌は、君のために。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《光れ!夢の星!オーバーリミット!限界なんて、超えてくよきっと!誰にも負けないから!》

 

『……………!』

 

ネプテューヌ達は鳥肌が立つのがわかった。5pb.の歌は直ではないが聞いたことがある。いい歌だとも思った。だが、こんなに聞く者の心を震わせるような歌だったか……⁉︎

 

「すごい……!心がビリビリする……!」

「私も!なんか、凄い!」

 

ロムとラムもそれを感じていた。

聞き惚れるとはこういうことを言うのだろうか。

ネプテューヌ達は画面の向こうの5pb.に釘付けになっていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「5pb.ちゃん……凄い……!」

 

ベールは観客席から見えないステージの裏でその声に震えていた。

ぶるりと体が震えて鳥肌が立つ。

この歌は今までのものと比べ物にならないほどいい歌だ。

 

5pb.の後ろから煙を吹き出しながらベールのペイントが施された戦闘機が5つ、駆け抜ける。

それは5pb.のライブに合わせて煙で模様を作り出す役目の戦闘機だ。

するとその真正面、5pb.の向いた方向から1機の小さな戦闘機が突っ込んできた。

 

「アレは⁉︎」

 

前から赤、青、白の順に色が基調になっていく。その戦闘機の背には銃が取り付けられていた。

その戦闘機の側面からすれ違いざまにビームが2本、発射される。

ベール柄の戦闘機は咄嗟に避ける。

 

「チッ!なんだアイツは!」

「俺達の作戦がバレたって言うのか⁉︎」

「黙ってな、お前ら!作戦変更、降下するよっ!」

『アイアイ、マム!』

 

「あの戦闘機は私が仕留めます!アナタ達は5pb.ちゃんを……!」

 

そう言ってベールは飛び出そうとするが、その瞬間にベール柄の戦闘機からパイロットが飛び出した。そいつらは背中にスラスターを背負っていて、まるでプロセッサユニットのようにして空を飛んだ。

パイロットを失った戦闘機はまとめて海に向かって飛んでいく。

 

「な、なんですの、アレは!私は戦闘機にあんなもの……!」

 

パイロットにあんな装備を許してはいない!

まさか、テロリストが2つ同時に⁉︎

そんな、犯行声明は1つのはずで……!

 

《ベール!何ぼーっとしてんの!》

「え⁉︎」

 

テロリストの1人だと思われていた小さな戦闘機は複雑な変形を始めた。だが、その間僅か0.5秒ほど。

そこには額に『Z』の文字を刻まれたガンダムがいた!

その名は、Z(ゼータ)ガンダム!

下半身は白、上半身は青を基調としたカラーリング。特徴的なのはその細い顔とシールド。右手にライフルを持ってZは空を駆けた!

 

《5pb.を守るよ!ベール、力を貸して!》

「そ、その声って……、まさか、ミズキ様では……」

 

「なんだい、アイツは!総員、あのツノから仕留めるよ!」

『アイアイ、マム!』

 

戦闘機から飛び降りた総員5名のテロリスト。

その全員が全員、手にアサルトライフルを持った。

 

「撃てっ!」

 

リーダー格と思われる女の号令でテロリストはZに向かって発砲する。

Zはスラスターをふかしてその銃撃を難なく避けていく。

 

「クソっ、なんなんだい、あの機動力は!」

 

テロリスト達はZに向かって飛び上がっていく。

 

観客達は銃声を聞いてパニックに陥っていた。歓声が一瞬にして悲鳴に変わり、我先に逃げようとする者が人を踏みつけ、別れさせていく。

そんな中に大きく声が響いた。

 

《み〜んな〜!》

 

5pb.だ。

口元のマイクを握ってライブ会場中に大声が響く。

 

《私の歌を、聞いて〜っ!》

 

会場中が静まり返る。その隙を突いて5pb.は中断された歌を始めた。

 

《光れ!夢の星!オーバーリミット!》

 

「ファ、5pb.ちゃん……?」

「なんだいアイツ!こんな状況で歌うなんて、気でも狂ったか!」

 

全員が5pb.の歌に注目する。

全員がライブが始まった時の興奮を思い出す。

 

「煩いんだよ!このっ!」

「っ、いけない!」

《5pb.!》

 

リーダー格の女が5pb.に銃口を向ける。ベールは5pb.の前に飛び出して槍を回転させ、銃弾を弾いた。

Zも5pb.の前に立ち、ライフルを撃って牽制する。

 

《それでいい!5pb.!伝えるんだ、想いを!》

(ボクは、みんなを……!みんな、大丈夫!ボクが、歌ってる!)

「ミズキ様……5pb.ちゃん……」

 

不思議と観客達は心が温まるのを感じた。そして慌てることなく、焦ることなく、譲り合って逃げていく。

 

「そんな……5pb.ちゃんが、やりましたの……?」

 

ベールはそれを空中から見て驚愕している。今もまだ響いている歌声が観客を安心させているというのか。

 

「チッ、女神まで現れたか!分が悪い、撤退するよ!」

 

テロリスト達はライブ会場の上から逃げ出した。

だがすぐにそのテロリストの悲鳴。そして水しぶきの音が聞こえた。

 

「お待ちなさい!」

 

ベールはテロリスト達を追いかけようとするがテロリスト達の様子がおかしい。まるで、逃げようとしているのに引き寄せられているような……?

 

「うわぁぁっ!」

「なんだよ、あのバケモノ!」

 

「一体、何が……⁉︎」

 

その時、会場のモニターが外の様子を映し出した。

そこには、海から上半分を出した巨大な赤黒いアンコウがいた!

 

「EXモンスター⁉︎このタイミングで⁉︎」

 

「ひいいっ!」

 

そのアンコウは大きく口を開けている。まさか、テロリスト達は吸い込まれている⁉︎

 

「ぎゃああっ…………」

 

テロリスト達は抵抗虚しく全員アンコウの中に飲み込まれる。

アンコウの大きな口の中には尖った牙が。そして体中には鋭いトゲが生えている。頭の上には提灯が揺れていた。

 

「止めなければ……!」

《ベール、待って!》

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「うええっ⁉︎ば、バケモノ⁉︎これ特撮映画とかじゃないよね⁉︎」

「赤黒い……まさか、EXモンスター!そんな、大きすぎるわよ!」

「ミズキもいるけど……あんなヤツ、倒せるの……?」

 

女神達はテレビに映る巨大なアンコウに戦慄する。

 

「急いで向かうわよ、アクセス!」

「ネプギア達はついてきちゃダメだからね!変身!」

「ここは私達だけでやる……!変身……!」

 

女神達は変身する。

 

「そんな、私達も……!」

「ダメよ、危なすぎるわ!」

「でも……!」

「あいちゃん、コンパ、ネプギア達を見てて!行くわよ!」

「ちょ、ネプ子!」

「ねぷねぷぅ!」

 

女神達はライブ会場にまで飛んで行った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《ベール!迂闊に突っ込まないで!》

「ですが、アレを早く倒さなければ!」

 

「ウォオオオオ!」

 

アンコウは大きな唸りを上げる。

地面にまで這い上がってくるかはわからないがこれ以上は街に被害が出る。

 

「援護お願いしますわ!」

《ベール!》

 

ベールは飛び上がってアンコウまで向かっていく。左右に折れ曲がりながら素早く接近して狙いを定めた!

 

「食らいなさい!レイニー・ラトナ……!」

 

その瞬間、アンコウの提灯が激しく光った!

 

「うっ……!目が……!」

《ベール!》

 

もろに閃光を食らってベールは目が眩んでしまう。

そしてベールには見えていなかった。

大口を開けたアンコウが、いままさにベールを飲み込もうとしているのを………。

 

《ベールゥゥッ!》

 

バクン。

ベールがアンコウの口の中に消えた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ベールさんっ!」

 

ネプギアがテレビの画面を見て悲鳴をあげる。

 

「そんな、ベール様が……」

「食べられちゃったですぅ!」

 

ネプギアはがくりと膝をつく。

 

「食べられちゃったの……⁉︎」

「ベールお姉ちゃん、死んじゃう……?」

「だ、大丈夫よ!きっとミズキさんが助けてくれるわ!」

 

妹達はその可能性にかけるしかなかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《あ………あ……!》

 

空中でZは呆然と漂っていた。

 

《ベー………ル………》

 

「ウォオオオオ!」

 

目の前ではアンコウが大口を開けて笑っている。

そのアンコウがZを見た。だがZは動こうとしない。

いざアンコウがZを吸い込もうとした瞬間、Zの耳に5pb.の声が届いた。

 

《ミズキ!ミズキなんでしょ、キミ!》

《……5pb.………》

《ミズキが言ったんじゃないか!大切なのは、諦めないことだって!諦めないで、ミズキ!ベール様を、助けて!》

《………そうだ……!諦めて、たまるか……!》

 

Zが大きく空中に舞い上がる。

 

《もう……間に合わないのかもしれない。けど、諦めない。負けない。最後まで、抗うんだ!》

《ミズキ、教えて!ボクは、ボク達は、何をすればいい⁉︎》

 

観客もベールが飲み込まれるのを見ていたのだ。その心は1つ、あのアンコウを倒して、ベールを救いだせ!

 

《想いを貸して!みんなの、想いを!君達の想いが力になる!》

 

 

ーーーー『閃光の中のMS』

 

 

《君達が想いを!僕は力を!》

 

「ウォオオオオッ!」

 

《みんな!想いを、彼に!》

『うおおおおおっ!』

 

5pb.の掛け声で観客達の心は1つになる。Zが、Zに内蔵されたバイオセンサーとミズキのニュータイプ能力がそれを力にする!

Zはビームサーベルを引き抜いた。

 

《わかる、わかるよ……!Zがみんなの心を感じて、繋げる!》

 

Zの体が紫に光り輝く。機械の身体がオーラをまとっているのだ!

 

《うおおおおっ!はあああああっ!》

 

ビームサーベルを両手で握ったZ。その刀身が信じられないほど長く、太くなる!

 

「ウォッ⁉︎」

 

《ベールを……ベールを……!》

 

Zがその巨大なビームサーベルを、振り上げて………!

 

《返せぇぇぇぇぇぇぇッ‼︎‼︎》

 

「⁉︎⁉︎⁉︎」

 

振り下ろす!

アンコウは真っ二つに切り裂かれた!

 

《やった!》

『おおおおおっ!』

 

5pb.と観客から歓声が沸き起こる。

 

《っ、ベールッ!》

 

Zは変形して海の中へと突っ込んでいく。

 

(そうだ、ベール様……!)

 

5pb.はステージを駆け下りて港へと向かった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

港に駆け下りた5pb.。

周りを見渡すがまだ人影はない。

そこに、水音が聞こえた。

 

「5pb.……!」

「ミズキ!」

 

ベールの肩を抱えたミズキが海の中からずぶ濡れで戻ってきた。

 

「ベール様は⁉︎」

「ベールが……ベールが、息をしてないんだ……っ!」

「………っ‼︎」

 

地面に変身の解けたベールが横たわる。

ミズキは急いで心臓マッサージを始めた。

 

「諦めて、たまるか……!」

「ミズキ……」

「起きて、ベール……!ベール……!」

 

ベールの口を開いて人工呼吸をする。

 

「ベール様……!」

「ベールっ!」

 

「………っ、ごほっ!ごほっ、ごほっ!」

 

「………!ベール!」

「ベール様!」

 

ベールが咳き込んで口から海水を吐き出す。

よかった、息を……!

 

「あ……5pb.ちゃん、ミズキ様……私……」

「もう、大丈夫だ。良かった……」

「良かった、ベール様……」

 

ほっと胸を撫で下ろす。

だがミズキはすぐに立ち上がった。

 

「……ごめん、僕はもう行くよ」

「え⁉︎そ、そんな……!」

「ミズキ……さま……」

「5pb.、君のライブ、最高だったよ」

 

次にミズキの体が光った時、ミズキはもうそこにはいなかった。遥か空を飛んでいたのだ。

 

「…………」

 

5pb.とベールはその行き先をずっと見つめていた。




テロリスト主犯のモデルはシーマ様。
ミズキがSEEDに続いてニュータイプ能力まで覚醒させました。違うんですよ、もともと全部使えたわけじゃないんです。それは後々明らかにしますけど。
アンコウのモデルは10倍くらいでかくしたチャナガブル。覚えてるかな〜、チャナガブル。
あ、こんな浅瀬にアンコウがいるわけねえだろ!とかいうツッコミはなしです。ここはゲイムギョウ界だから!(必死

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