人は何かと引き換えに何かを貰う。
お金と引き換えに何かを貰う。
引き換えに出来ない物もあるって?
結局同じだよ。
愛も恋も友情も何かを差し出さなきゃ得られないものさ。
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ウィーン、とドアが開く。
そこからいくつか袋を抱えたミズキが出て、それから荷物を持たないネプギアが出てきた。
出てきたのは服屋、プラネテューヌではそこそこ有名なチェーン店だ。
「ありがとうね、付き合ってもらって」
「いえ、いいんです。ここのこと、まだわからないでしょうから」
柔らかい笑みを浮かべるネプギア。ネプテューヌと同じく、ネプギアはミズキを悪い人とは思ってはいなかった。
根拠はあまりない。
ただ、自分を命懸けで助けてくれたというだけだ。
「ネプギア、だっけ。女神ってさ、何が出来るの?」
先程店の中で服を物色しながらネプギアはこの次元の仕組みをミズキに説明した。
「何が、ですか?」
「うん。何でも願いを叶えたり、何でも出来るのかなって」
「そんなことはないです。お姉ちゃんの他にも3人女神はいるんですけどみんなそんなことは出来ません」
「ふぅ〜ん、そっか……」
「やっぱりこの世界にも、神はいないね」
「何か言いましたか?」
「ううん、何も」
ボソリと呟いた声はネプギアには届かなかったようだ。
「ネプテューヌ?だっけ。あの紫の女の子は変身が出来るんだっけ」
「はい。1度見たらびっくりすると思いますよ」
「ネプギアも出来るの?」
「私は……出来ません」
「………………」
2人と逆行して子供達が笑いながら通り抜けて行った。
それをミズキは振り返って背中が消えるまで見続けた。
「ミズキさん?」
「………ううん。そうだ、ネプギア」
「なんですか?」
「人が出来るはずの何かが出来ない時、その理由は大抵2つある」
「2つ、ですか?」
「そう。1つは全力を出していない時。もう1個は」
ミズキは自分の胸を親指でトントンと叩いた。
「何かを怖がっている時だ」
「何かを……?」
「うん。さ、帰ろうか」
ミズキはニコリと笑って1度歩いただけの道を戻り始めた。
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「ふふふ、そうなんですか」
「うむ。これがまた傑作でな……」
帰ってくると空中に漂うイストワールとジャックが笑いながら話していた。
「もう仲良くなってるの?」
「うむ。小さいもの同士、気が合うらしいな」
「羨ましいよ。僕も友達が欲しいな」
くすくすと笑ってミズキは自分にあてがわれた部屋へ向かう。
「もう仲良くなったんですか?」
「そうですね。最初は話しにくい方かと思ったんですけど、案外話せる人で」
「へぇ〜………」
ネプギアは感心する。
私はミズキさんとまだ少しぎこちないのに。
だけどこればっかりは解決するのは時間だろう。ネプギアは部屋に向かった。
(アレも作りたいしね……♪)
上機嫌に鼻歌を歌いながら部屋に向かったネプギア。
ネプギアとすれ違いでミズキが戻って来た。
キョロキョロと周りを見渡してからイストワール達の方へ向かう。
「どうかしましたか?ミズキさん」
「ううん。大した用はないよ。教えて欲しいことがあって」
「教えて欲しいこと?」
「うん。あのねーー」
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「出来ました〜!」
ネプギアの部屋……というか改造された
地面に座り込んだネプギアの前に1つの辺の長さが50cmくらいの立方体があった。真っ白で周りにはコードや端子が散乱している。
「ふふ、よ〜し……起動!」
ポチッとな、と起動スイッチを押す。
のだが何か起こる気配もない。し〜ん、と静まり返るだけだ。
「あ、あれ?おかしいな、どこか配線間違えたかな〜?いいんですよ?動いていいんですよ〜?」
立方体を開いてガチャガチャと弄ってみる。
中には赤とか青とか黄とか間違えて切ったら爆発しそうなコードで溢れているがネプギアはそのコードのジャングルを手でかき分けて何かを確認していく。
「あれ?あれあれ?」
「ネプギア?」
「ひゃあああいっ!」
びくーんっ!
バッと後ろを振り向くとそこには何かの箱を持っているミズキが立っていた。
「なななななななんでここここここここに!」
「いや、ノックしたんだけど……『いいんですよ』って言われたし」
『いいんですよ?動いていいんですよ〜?』
「あ、あれは違っ、っていうか、その!」
「あ〜、隠さなくてもいいよ。機械弄りが好きなんでしょ?」
背中に先程の立方体を隠すネプギア。
それをくすくすと笑いながらミズキも腰を下ろして目線を合わせる。
「だ、誰からそれを?」
「ナイショ。くすくす」
「いいことした気がします」
「ネプギアにとってはこの上なく悪いことかもしれんがな」
「そ、それで……私を脅しに来たんですかっ!」
「いやいやいやいや。別にそんなこと……」
「それであんなことしちゃうんですよね⁉︎こんなこともしちゃうんですよね⁉︎エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
「うん、とりあえず落ち着こうか。どうどう」
目をグルグルさせて捲したてるネプギアをあやす。
「僕はネプギアと仲良くなりたいだけだよ。一緒に機械弄り、させてもらえると嬉しいな」
「や、やっぱりそんなこと………え?」
てっきり脅されるとばかり思っていたネプギアはミズキの提案に今度は目をまん丸にする。
「お、脅さないんですか?」
「なんで脅すのさ。もしかして、脅されたいとか?」
「そ、そんなことはありません!私はいたって
「君もなかなかの変人だよね」
「が〜ん!変人認定されてしまいましたっ!」
「くすくすくす……」
ミズキは回り込んでネプギアが隠していた立方体を手にとって中を見る。
「ふむふむ……ロボット作ってるの?」
「あ、はい、そうです。わかりますか?」
「うん。………でもこれ、動いた?」
「いえ。ボタン押したんですけど起動しなくって……」
「だよね」
ミズキは覗き込むのをやめて持ってきた箱を開く。そこにはコードや端子、中には何に使うのかもわからない工具が詰め込まれていた。
「こ、これは⁉︎見たことない端子ばかりです!」
「くすくす、任せて」
ミズキはその中から赤い導線を取り出す。
そしてカチャカチャと立方体の中に取り付けた。
「うん。これで動くと思うよ」
「ほ、ホントですか!」
「うん。ボタン押してみて」
ネプギアは高鳴る胸の鼓動を抑えて赤いスイッチをカチリと押す。
「起動!」
すると立方体の1つの面がテレビのように光って少ないドットでシルエットを作る。
それはまるで顔のようだった。
《コンニチハ、マスター》
「やった〜!動いた!」
ネプギアは飛び上がって喜ぶ。
そして目をキラキラさせながらミズキの手を握ってブンブン上下に振った。
「ありがとうございます!ミズキさんのおかげでネプギアスクエアが起動しました!」
「そ、それはわかったからもうちょっと勢い抑えてアババババ」
ものすごい勢いで両手が振られている。
「ホントに………!あれ?」
ネプギアは急に手を振る感覚が軽くなったことに気付く。
自分のミズキの手を握っている両手を見てみると………。
「あ」
「ぴゃあああああああああ!」
「な、なになに⁉︎ネプギアの悲鳴⁉︎」
ガラッとドアを開けてネプテューヌが入ってくる。
「あ、ネプテューヌ。違うんだ、これは……」
「さては!ネプギアに酷いことしたね⁉︎エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
「なんで姉妹揃って考えることが同じなのかなあ⁉︎ってそうじゃなくって!」
「ミズキさんの手が〜!」
「あ〜、落ち着いてネプギア。大丈夫だよ〜」
「どうしたのネプギア⁉︎ミズキの手があんなところやこんなところをまさぐってきたの⁉︎ミズキ最低!」
「なんでガンガン僕のヘイトが溜まっていくの⁉︎理不尽だよ!」
「ミズキさんの手が、手が、取れちゃいました〜!」
「ほらやっぱり!ミズキの手が………へ?」
「あ」
ミズキがヤバいと思うも時すでに遅し。
ネプテューヌはネプギアの手に握られたミズキの手を見てしまった。
「ぴゃあああああああ!」
「ぴゃあああああああ!」
「ああっ!この始末!」
「ね、ネプギアが人殺しになっちゃったよ!」
「落ち着いて!僕まだ死んでないよ!」
「ま、マスターハンド……クレイジーハンド……ふふふふふふふふ」
「ネプギア、気を確かに!」
「かくなる上は〜!ネプギアを殺して私も死ぬ!ミズキはとりあえず埋める!」
「それ完全に巻き添えだよねえ⁉︎」
「何やってるんですか。さっきからうるさいですよ?」
「あ」
イストワールまで部屋に……。
「ぴゃあああああああ!」
「ぴゃあああああああ!」
「ぴゃあああああああ!」
「ああもう滅茶苦茶だよ……」
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「な、な〜んだ、取り外し可能なのか〜!初めからそう言ってよもう〜!」
「聞かなかったのは君達じゃないか……」
切断面同士をくっつけると手が動く。手首をぶらぶらさせて感触を確かめる。
「ごめんね、修復が甘かったみたい。驚かせちゃったね」
「修復って………」
ふと、ネプギアが思い出す。
ミズキの発言、『僕は人間じゃないから』。そしてネプギアの手元にはさっき完成したロボットがあった。
「もしかして……ミズキさんってロボットなんですか?」
あんなに早く傷が治ったり、手が取れたりくっついたり。人間じゃなかったら、ロボットなんじゃないか。
だがその予想は外れた。
「そんな大層なものじゃないよ。僕は………兵器さ」
3話目にして書くことがない。
しばらくアニメの前日談が続きます。戦闘もないから退屈かもです。
……お願い、続けて読んで……。